32. 夜の国 反省は大事!
「今度は甘~い!鬼甘い!」
私は朝食に出されたパンを食べて驚いていた。本当にこの国の食べ物は辛いか甘いかの極端な味付けしかない。見た目は普通のパンなのになぜこんなに甘いのよ!
そういえば前世で微笑みの国と言われる所でデザートを食べた時もこんな事を思っていたなと思い出す。最近、前世の事を思い出すことが増えたな。
"うめぇー!これなら何個でも食べるぞ"
"これも美味しいですね"
モコは甘党みたいだね。キュートは甘いのも辛いのもいける口みたい。なんなら屋台でお酒まで飲みそうな勢いでした。
激辛ソーセージを食べた後、レグルスが飲み物を買って来てくれたのですがそれが夜の国の名物のお酒ダークでした。見た目は黒ビールみたいな感じの色をしていて少し気泡がでているんです。飲んでみると味はウォッカの炭酸…。むせましたし、飲めませんでした。
夜の国の人はこのダークを眠り薬の代わりに飲んでいるらしいです。確かにこれを飲めばすぐに酔って寝るよ。
むせた時に持っていたコップから少しダークがこぼれてしまったのですがそれがキュートにかかってしまい、慌てて拭こうとしたらキュートが舐めてしまって…。
"あら、これも美味しいです"
…と、酒豪まで発覚したんですよ。もっと欲しいと言われましたが拒否しました。
モコと同じでキュートも癖がありそうです。因みに妖精さんはまだ寝ています。二日酔いかもしれないので起こさないことにしました。
「朝食を食べたらすぐに出かけますか?」
「うん。昨日言っていた所に行ってみたい」
昨日、レグルスと宿の部屋で今後の話をしたのですが夜の国には1週間いることになりました。体を慣らすのと星の国の情報収集とガイドブック作成のためです。
その時に決めたのが夕方まではガイドブック作成、それ以後は情報収集することになりました。情報収集はレグルスだけが出かけてやってくれるみたいです。私は宿で留守番していて欲しいとレグルスにお願いされました。
私だって情報収集できるのにな…。
久しぶりに、レグルスママの過保護が顔を出しているみたいなので、おとなしく聞くことにしたんです。部屋にいる間にガイドブックのためのアイデアも纏められそうだしね。
なので予定通りに朝食後は観光に出かけるつもりなんです。
「どこから行きますか?」
「光の滝から行きたい」
昨日聞いた観光スポットの中で一番気になった場所です。だって、こんな闇の中なのに光る滝って気になりませんか?
「わかりました。ではそこから行きましょう。先に部屋に戻って調べておきます」
私達より早く朝食を食べ終わっていたレグルスは先に部屋に戻って行った。
"ふう~、お腹いっぱいだな"
パンパンに膨らんだお腹を叩くモコ。おじさん感がハンパない。あっ、口につまようじはやめようね。
"まだ辛いものなら食べられるのですが…"
キュートちゃん…フードファイター並みに食べてるよ。モコのようにお腹が膨らんでいないのはなぜなのかな。
"フワァ~、よく寝た"
妖精さんが起きたようです。
「妖精さん、ごはん食べる?」
"…ごはんはいらないわ。フルーツのジュースとかなら飲めるかも"
やっぱり世界樹で二日酔い?頭を抑えながら話をしています。宿の人に頼んでフルーツジュースを作ってもらいました。
"はぁ~、生き返るわ"
うんうん、私も前世で二日酔いした時は冷たい野菜ジュースとかを飲んでましたよ。今の気持ちわかります。
"世界樹様からパワーをもらって妖精ネットワークでいろいろと調べてみたんだけどさ…"
妖精さんはただの酔っ払いではなく、どうやらお仕事をしてくれていたみたいです。
酔っているようにしか見えなかったんだけど…。
"ちょっと聞いてるの!?"
「聞いてます!」
妖精さんが話してくれたのは星の国についての事でした。
"妖精ネットワークを使うのに苦労したのよ!"
フルーツジュースを飲みながら安定のツンツンぷりです。
妖精さんの話を纏めると、呪いが特殊だったのが気になって調べてくれたそうなんです。ツンツンだけどやっぱり優しいよね。あっ、話がそれた。
えっ…と、それでわかったのは星の国自体が何かの呪いの力で覆われているかもしれないということと、レグルスの呪いを解くには星の国の魔女の中でも一番力があるとされている人が必要だということでした。
呪いで覆われた国…。そんな国に行っても呪われないよね?…大丈夫だよね?
"世界樹様の枝があるんだから何も怖がる事はないわよ!"
妖精さんにまた頬をペチペチと叩かれています。痛くはないんだけどね。
そうか、そうだよね…世界樹の枝を持っていればきっと大丈夫だよね。
"だけど星の国にいた精霊達はほとんど夜の国に移動したみたいだから魔女があの国に残っているのかは謎だけどね"
妖精さんがジュースを飲み終えて呟いた。ん?それって結構重要なんじゃないですか。
魔女と呼ばれる人達は精霊達の力を借りたりすることもあるくらい精霊達にとっては身近な人だ。魔女にとっても精霊達は大事なはず…。その精霊達がいなくなってしまった国に残っているのだろうか?
疑問に思いながらも準備ができたレグルスが部屋から下りてきたのでこのまま観光に行くことになった。
光る滝までは乗り物に乗って行くらしい。馬車かな?と思いつつ乗り場まで歩く。
「ん?何あれ…」
目の前に見えてきたのは鼻が光っているゾウ。
「あれはこの国にしかいない動物でピカパオと言うそうです。闇の中でも鼻が光るので移動に使われているそうですよ」
前世の記憶にあるゾウの長い鼻がピカピカと光っていて違和感しかないんですけど!
そう思いながらもピカパオの引く馬車に乗り込み光の滝に向かって出発した。前世のゾウのスピードを想像していたら痛い目にあいました。
あの巨体で速度は競走馬並みだったんです!
ドッドッドッ!!!
物凄い足音と振動です!
モコとキュート、妖精さんはプカプカと空中に浮かんでいるので平気みたいですが、座っている私とレグルスはたまったものじゃありません。
「モコさん、私達も浮かせてくれませんか?」
耐えきれずモコとにお願いしてみます。
"腹がいっぱい過ぎて無理だな"
なっ?
"お兄様!ご主人様のお願いですよ!"
"…無理なものは無理!"
フッフッフ…モコよ宿に帰ったらたっぷりと辛いごはんをあげるからね。甘いごはんは禁止だよ。と心で呟いた。
後日、キュートから聞いたのだがレグルスからも甘いごはんがもらえずモコは苦しんでいたらしい…。
モコよ、反省は大事だよ。
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