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3. 花の国 気になる噂話


「隻眼聖…アイオラ様どうかお気をつけ下さい。何かあれば遠慮せずにレグルスに言って下さい」


 花の国に来てから数日経つがまだ私の呼び方に慣れないレグルスのお母様がレグルスの肩をバシバシと叩きながら話している。


 本当に…どの世界のおば様もこの動作は同じなのね。と感心して見ているアイオラをまた冷めた目で見ているレグルス。


「また違うことを考えてます?顔が崩れてますよ。それに母さん、いい加減にアイオラ様呼びに慣れてください。隻眼聖女様とわかると困るんです」


「わかってはいるんだけど、難しいのよね」


 この家にお世話になる時にレグルスがお母様にお願いしたことの一つが私の呼び名だった。私の名前は隻眼聖女様という呼び方がメジャーすぎて意外と知られていない。


 国外追放されたことは他国にも知られているだろうから隻眼聖女がここにいると知られないように名前呼びをしてほしいとお願いしたのだ。


 他国からの我が国に来ないかという勧誘から逃れる為なんだけどね。


 だって…面倒臭いでしょ。


 よく考えてみれば異世界転生したにも関わらず狭い教会に閉じ込められて、外に出ることができるのは聖女のお勤めの時だけなんて…。ブラックすぎたよね。


 これでは前世の看護師の時と変わりがない。あまりにも勿体ない!と私は気がついてしまったのです。


 なので、どこの国等にも縛られること無くこの異世界全てを楽しみたい!


 異世界グルメ堪能したい!


 綺麗な景色を見てみたい!


 前世では見たことないような物を買いたい!


 そして眼帯愛好家とも出会いたい!(重要!)


 それがダメなら異世界転生者を探して日本の話(オタク話)をしたい!


 …欲望の尽きないアイオラだった。


「アイオラ様…また顔が崩れてますよ。今からお買い物に行くんですよね。妄想してボーとしていたら置いていきますからね」


 お母様とのやり取りをいつの間にか終えていたレグルスが鞄の中に何かを入れながら私に冷たい目線を向ける。


 うん、慣れてる。


「まあ、この息子たら何て意地悪なのかしら!隻眼…アイオラ様はお疲れでボーとしているんだから、それくらい待ちなさい。騎士でしょ!」


 フッフッフ…ここには私の味方がいるからね。流石のレグルスもお母様には悪態がつけない様子で大きくため息をつきながら無言で鞄を背負っています。


 ここにいる間はレグルスの小言が減りそうだとニヤニヤしてしまう私。


「…行きますよ」


 ふてくされた顔で出発したレグルスの後を笑顔で追いかけた。


「行ってらっしゃい。くれぐれも気を付けて下さいね!」


 お母様も元気な声が後ろから聞こえたので振り返り手を振った。


 今から向かうのは花の国の中心の街。花の都と言われている大きな街だ。


 昨夜、レグルスのお母様から聞いた話だと建物がカラフルで綺麗らしい。前世でもヨーロッパのどこかに旅行している友人からカラフルな赤色、黄色、青色などの建物の写真付き絵手紙をもらって羨ましく思った事を思い出す。


 あの写真のように建物自体を色付けしてるのかな?


 結局、前世ではその国に行くことができなかったので今から楽しみで仕方ない。


 この村からは馬車で移動して1時間ぐらいかかるらしい。今も乗り合い馬車で移動中だ。


 初めての花の国は移動中も楽しい。


 緑の国は花が少なく緑豊かな国だったが、花の国は反対で緑が少ないが花が多い気がする。大きな木が少ないのかもしれない。


 馬車から見える景色がずっとカラフルで飽きないんだよね。


「ねぇ、聞いた?緑の国の話」


 だけど、前に座っている女性2人組が緑の国の話を始めたのが気になって景色に集中できなくなった。


「聞いた聞いた。あの王子ついにやらかしたらしわね。隻眼聖女様を国から追い出したらしいわね」


「そうらしいわよ。しかも王様には言って無かったらしくてさ、王様が激怒しているらしいわよ」


 国王様は知らなかったのか…。てっきり知っているのかと思ってた。


「しかも、連れ戻そうとして探しているらしいわ」


 え!?


 思わずレグルスを見てしまった。レグルスは知っているのかな?


 目が合ったレグルスは落ち着いた感じで私のマントの帽子を深く被り直させてマントを整えた。阻害認識妨害マントを今日も着てきてて良かった~!


 …じゃなくて!この様子だとレグルスは知っていたみたいだね。


「でもさ~、隻眼聖女様がお可哀想だから見つからないと良いね~」


「そうだね。綺麗なお顔に傷まで作って国に尽くしたのにさ、偽物扱いされて婚約者に捨てらたあげく国から出ていけなんてさ…酷すぎだよ!どこかで幸せになってほしいわ」


 ありがとうございます!私はここにいます!と思わず立ち上がろうとしたがレグルスに肩をがっちりと掴まれて動けなかった。


 うん、ここにいると知られたらダメなんだよね。反省します。


 でも、せっかく楽しみにしていた花の都でのお買い物やグルメが堪能できないのかな?


 あ~!もう、あのバカ王子!!ちゃんと王様に言っておきなさいよ!


 報告、連絡、相談は基本中の基本だよ!


 異世界に来ても前世の体質が全然抜けていないアイオラだった。


 


 


 


 





 


 


 



 








 

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