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14. 閑話 緑の国


「その者と結婚したいのなら勝手にするが良い!ただし王族から籍を抜いてからだ!平民となって一緒になるが良い!!!」


 アイオラが去った後の緑の国は今までに無い事態に陥っていた。緑豊かな国だったのが緑が枯れはじめ作物も育ちにくくなっていたのだ。


 王はアイオラをこの国から追放したせいでこのような事態になったと考えていたが…。


「何故ですか父上?私は平民になんてなりたくありません!私は何も悪いことをしていないのに何故そんな事をおっしゃるのですか!?」


 バカ息子には全く話が通じない。王は頭を抱えた。


 緑が枯れたのは手入れしている人間がサボっていたからだと言って罰を与えようとしていたのを止めたくらいに事態を理解していないのだ。


 育て方が悪かったのか…。


「それにペペロミアは聖女ですよ!あんな眼帯をした女より可愛らしく皆に好かれる素晴らしい女性を選んだのにどうして平民になれなんておっしゃるのですか!?」


 まだ理解していないのか?


「皆に好かれる女性な…。ではお前の他にも仲良くしている異性が何人もいるのを知っているのだな。しかも朝まで二人きりで個室で過ごすくらいに仲良しらしぞ。それに聖女検査をさせたが素質はゼロだそうだ。これに関しては虚偽罪だな。お前も知っていたのなら同罪だが…知っていたのか?」


 息子の顔色が面白いくらいに変化している。全て知らなかったのが伺えるな。こんなこと調べればすぐにわかるのに調べなかった自分が悪いのだがな。


「そんな…そんなはずはない」


「そう言うと思って相手を呼んである」


 目線をやると扉が開き女性が物凄い大声をあげながら入ってきた。


「離しなさいよ!私はこの国の王妃になるのよ!!こんなことをしてただですむと思わない事ね!!!離しなさいと言っているでしょう!」


 こんなのがこの国の王妃になる?ふざけた夢を見ているのだな。


「あ!シンゴニウム様、助けてください。皆が私の事をいじめるのです!」


「ペペロミア…」


 以前ならすぐに駆け寄り抱き締めて慰めていたが今はただ呆然と立っているだけだ。


「どうなさいましたの?私を助けてはくれませんの?」


「聞きたいことがあるのだ。異性と二人で朝まで同じ部屋で過ごしたというのは本当なのか?」


 ペペロミアの目が泳いでいるのが王座からも見える。こんなにわかりやすいのに騙されるとはな…。


「そ、それは…そう!そうですわ!あの時は体調を崩されていたので私が介抱してさしあげたのですわ。それだけ…」


「見ず知らずの男の介抱を?君ではなくても良かったよね。医者を呼べばすむ話だと思うのだが違うか」


「そ、それは…」


 その後が続かなかったようだな。


「見えなかった事がようやく見えてきたみたいだな。お前のやったことでこの国は危機にめんしている。お前に任務を言い渡す。聖女アイオラをこの国に連れ戻してこい。連れ戻せたら王族に籍を残してやる」


「そんな!今どこにいるのかもわからないのに連れ戻すなど無理ではないですか!」


「それだけの事をお前はやったのだ。それからそこの詐欺師はこのまま牢屋に連れて行け!」


「え!?詐欺師?私が?え?嘘でしょ!私はこの国の王妃になるのよ!牢屋なんてはいりませんわ!」


 まだ言うのか!?


「王妃になるなど誰が決めたのだ?私は聞いていないし、聞いたとしても許さない。お前がなるのは罪人だ!何をしている早く連れていけ!」


 衛兵達がぞろぞろと入って来てペペロミアを取り押さえる。大声をあげながら暴れて抵抗していたがすぐに縄をかけられ部屋から出ていった。


「お前も聖女アイオラを連れて帰って来なければあの女と同じになる。それを覚えておけ。出発は3日後だ」


 何か言いたげだったが口を閉じて頷いた。


「…わかりました」


 この部屋に入ってきた時とは別人のような生気の無い顔になったな。だが許すことはできない。ここで息子を許してしまうとこの国の王族への信頼は地に落ちるだろうからな。それに聖女がこの国に帰って来ないとこの国の存続事態が危ぶまれる。


 息子は知らないが昔は緑の国とは名ばかりの緑の無い国だったことを…。もうあの頃には戻るつもりはない。


 隻眼聖女よ…そなたを手放すわけにはいかない。








 

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