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11. 石の国 採掘技術を学ぼう


 翌朝、朝食を食べ終わり約束の場所に行くとすでに宿のご主人が待っていた。


「お待たせしてすいません」


「いや、わしも今来たところだ。実物を見ながら覚えた方が良いから採石場に行こうかと思っとる。それで良いか?」


「「はい!」」


 徒歩で採石場に向かう間にお互いに自己紹介を済ませた。宿のご主人はゾイサイトさんで奥様はアンバーさんと言うらしい。お二人であの宿を経営しているそうだ。因みに気になっていた宿の外観について聞いてみると…。


「あれは目立つ為だ。この国では鉱物は沢山取れから値段的にはたいしたことないし、あれは全て俺が採掘した物だしな。まあ、簡単に言えば大会優勝経験者のやっている宿の目印だな!ガハハ!」


 …と豪快に笑いながら背中を叩かれた。目立ちすぎる目印ですね。


 その他にも石の国について教えてもらったけど一番気になったのはこの国にいる人達はほとんど宝石の国からの移住者ということでした。


「宝石の国で何かあったんですか?」


「まあ、いろいろとあったんだよ…」


 さっきまで豪快に笑っていたゾイサイトさんの顔から笑顔が消えて遠くを見つめる様な感じになってしまいました。これ以上は何があったのかを聞かない方が良さそうだ。


 それから何を聞くのも地雷かも知れないと考えてしまい聞きにくくなって黙って歩いていたら目的地に到着していました。


「ここだよ。ほれ、これを貸してやるから俺と同じようにやってみな」


 再び話し始めたゾイサイトさんは何も無かったかのように普通に話し始めました。ポイッと放り投げるように渡されたのは先のとがったピックみたいな道具です。


「「はい!」」


 ゾイサイトさんが岩山の洞窟の中に入って行くので後を歩いていきます。中にはライトがついてあり真っ暗ではありません。


 少し歩き進んだ先にあったのは岩が仄かに発光している場所でした。


「これは発光石と呼ばれる石が光ってんだ。この国で一番取れる石だな。練習にはこれくらいで良いだろ」


 そう言うと先程の道具で光る石を取り出す作業を始めました。洞窟にカンカンと音が響いています。そんなに固くない石のようです。


「対象物の近くを掘りすぎると割れてしまうかも知れねえから最初は大きく掘り出すんだ」


 そう言いながらゾイサイトさんは自分の顔くらいの大きさの石を掘り出しました。掘り出された石の中心が仄かに光っています。


「ここからは細かい作業になるぞ。神経を集中させて周りを細かく削いでいくんだ」


 鞄から取り出したのは釘みたいな物と金槌です。釘みたいなのを先程の石に当ててから金槌で叩いています。石にヒビが入り細かく割れています。それを何回か繰り返すと中から白い光を放つ半透明な石が出てきました。


「綺麗ですね」


 先ほどまでの光とは全然比べ物にもならない光に驚く。


「実はこの削った石も特殊な石でな、発光石の周りにしかない石で光を抑える効果があるんだ。売りに出しても金にならないから採掘はしないがな」


「そうなんですね」


 光を抑える効果ぎあるなら使い道がありそうな石だと思うけどな。でもそれは今考えることではないかな。後でゆっくり考えよう。今はそれより採掘技術の習得だよね!


「見本は見せたから今度は二人でやってみな」


「「はい!」」


 先程見た通りに見様見真似でやってみる。…が、上手くいかない。見ていた時は固くなさそうな石だと思ったんだけどやってみて分かったがゾイサイトさんの技術があるから簡単に見えていただけだったのだ。


「思ったよりも固い石ですね」


 レグルスも私と同じように思っていたことがわかる。


「そうか?この国の石の中では一番固くない石だぞ」


「「……」」


 そうなの!?他の石どんだけ固いのよ!トレジャーハンターになるためには腕力の強化が必要なんじゃないの。これは大会当日までにいろいろと必要みたいね。


 隣にいるレグルスが身体強化をして力強く石を叩き始めた。


「はい、アイオラ様はこれから取り出す作業をして下さい」


 顔よりも大きい石を満足そうに私の前に置いた。共同作業にするつもりなのかな。考えてみればこの方が効率が良いかもしれないね。


 私は頷いて渡された石を砕き始めた。力加減が難しい。弱すぎるとヒビも入らないし、釘もどきも岩に差し込めない。逆に力を入れすぎると…。


「…ごめん。発光石まで割れちゃった」


 どうやら発光石は周りの石よりも強度がないみたいなんだよね。難しいすぎるよ~!


 それから4時間ほど採掘を続けた。


「よし!初日はこんなもんだろ。やりすぎると筋肉痛が酷くなるから帰ろうか」


 ゾイサイトさんが私達の肩を叩いて帰宅を促した。


 だけど私もレグルスも負けず嫌いなんですよね。


「もう少しだけやらせてもらえませんか?」と私がお願いすると「私からもお願いします」とレグルスから援護された。


「そんなにやりたいのか?仕方ねえな~、後1時間だけだぞ。それ以上は譲れねえからな」


「「ありがとうございます!!」」


 それから集中して練習しました。約束の1時間は少し過ぎましたが…何とか終了して宿に戻りました。


 宿に戻るとアンバーさんがお風呂とご飯を用意してくれていたので、すぐにお風呂に入ってからご飯をいただくことになりました。


 目の前に並ぶご馳走に口の中が潤っています。(ヨダレが出そうとも言います)


「これはこの国の名物でロックフロッグの唐揚げと岩茸のスープだよ」


 ロックフロッグは前回食べて美味しかったのでもう抵抗はありません。だけど岩茸って何だろう?見た感じはキノコだよ。


「岩茸って何ですか?」


「高山の岩に生えているキノコだよ。石の国の山には沢山生えているんだよ」


「そうなんですね」


 キノコって前世の知識だと木の根っことかの湿気のある場所に生えていると思っていたけど、そうじゃないキノコもあるんだね。


 岩茸を食べてみると、食間はキクラゲみたいで歯応えがあって美味しいです。ロックフロッグの唐揚げは鶏の唐揚げみたいです。お塩とハーブの味がしていて後味がさっぱりしていますよ。


「あ~、美味しかった!」


 お腹も満たされたので後は大会に向けて準備をするだけです!部屋に帰ってレグルスが寝たのを見計らい魔道具作成にかかりました。


「フッフッフッ…。目指せ優勝なのです!」


 宿で不気味な笑い声が聞こえていたと幽霊騒ぎがおきたのはその後の話です。



 




 






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