キャッシュカードを拾って警察に届けたよ。それで分かった怖い事。
いつも有り難うございます
よろしくお願いします
☆誤字のご指摘ありがとうございます!
修正致しました。
大切な物を落としたと気づいた時の、あのゾワっとする感じ、経験ありませんか?
嫌ですよね。
見つかった時のホッとした気持ち、届けてくれた方への感謝の気持ち。
今回は落とし物についてのお話です。
これを読むと、落とし物をしなくなるかもしれませんよ。
正確には「落とさないよう、最大の努力をするようになる」かもしれません。
その日、私は昼から入った予定の前に、ATMでお金を下ろしたかった。
寄り道(ちょっとコンビニで〜とか)をしなければ間に合うと、急ぎATMに行く。
無人の銀行支店には二台のATM。
その一つのATMの前に立つと、置きっぱなしにされたキャッシュカードを見つけた。
びっくりすると挙動不審になる私。
「警察に届ける」
という基本的な事を忘れて、後ろにいた若い男の子に「コレ忘れ物…どうしよう」と聞く。
「別に…そのままにしとけば?」と言われ、そのままで?と思いながら、自分のお金を下ろす。
日本凄いな。他人のカードに無関心なんだ。みんな置いとけば取りに戻ると思ってるんだ。関わりたくないんだな…などと色々考える。
そして私はそのカードを手に取り「お巡りさんに届けます」と、男の子に告げ、そのまま交番に向かった。
「すみません、コレATMに忘れ物です」
「え?どこのATMですか?」
「そこの」
「いつ?」
「今」
「あ、名前とかどうしますか?」
「必要ですか?」
「いえ、住所とか…お礼はどうしますか?」
「私、怪しくないですよ?お礼もいらないです。いいですか?」
「はいどうぞ」
怪しくないと自己申告をした、めちゃくちゃ怪しい私は交番を後にした。
「……。」
しばらくして、お巡りさんの「お礼」と言う言葉がじわじわと効いてきた。
「…お礼…お金貰えたのかな…やばい…損したかな…キャッシュカードに入っている一割とか貰えたのかな…今から貰いに行こうかな…」などと悶々と考え始めた。
予定の時間にも間に合い、その間にも色々考える。
チラリとしか見ていないけど、カードは男性の名前だった気がする。
たくさん入っていたら…例えば退職金が振り込まれていて…とか。そこからちょっと貰えるなら…いやいや、残高千円とか…そもそも私が貰える権利は…
さて。
ここで拾ったものに関するお勉強をしましょう。
拾って警察に届けた人には「拾い主としての権利」が与えられます。
まず「報労金を請求する権利」です。
落とし物の持ち主に、法律で規定された範囲内(落とし物の価格の5%以上20%以下に相当する額)の報労金を請求することができる権利です。
次に「落とし物の提出などに要した費用を請求する権利」です。
落とし物を届け出たときなどに要した費用がある場合等に、その費用を落とし主などに請求することができます。
それと「所有権を取得する権利」です。
落とし主がわからなかった場合に、拾った物の所有権を取得することができる権利です。
ただし、所持禁止物件や個人情報関連物件等法令に定めのある物は、所有権を取得できません。
(覚醒剤とか違法薬物、刀、拳銃、キャッシュカード、保険証、運転免許証…など)
(※期限など、もう少し細かく決められていますが、長くなりますので書きません。もっと詳しく知りたい場合はネットなどでお調べ下さい。)
さて、これは基本的な「権利」です。
ここに関わる細かい決まりもあります。
まず、拾い主への報労金は拒否することができません。
お金などを拾った場合、拾い主は5%から20%の範囲で報労金を請求できます。
報労金を支払わなくてよいケースというのは、私のように、拾い主が権利を放棄した場合だけです。
報労金を請求する権利があるため、拾い主には落とし主の個人情報を知る権利があります。
拾い主が開示を望めば、落とし主の個人情報を知ることができます。逆に、落とし主も拾い主の個人情報を得られます。
私のようにキャッシュカードや、もしくは通帳を拾った場合、その金額を教えろと言えば言うしかないのかもしれません。そしてお互いがどこに住んでいるのか、住所や、連絡をするために電話番号も知らせないといけません。
そして相手がどんな人でも、落とし主と、拾い主でのやり取りになり、そこに警察は関与しません。
ざっくりですが基本的な事はわかりました。
私が拾ったのは「キャッシュカード」です。
キャッシュカードを拾った場合を調べてみましたが、「カード自体には価値がないので5000円くらいのお返しで充分」と考えている人が多そうです。
それでですね…
ここまでは、私のような怪しくも善良な人が拾った前提で話を進めてきましたが、これからは違います。
貴方が落とし主です。
そして拾い主はとても欲が強い人だった場合。
これは怖いです。
通帳の開示、そもそも拾った時に見られているはずです。そして貯金額の20%を請求する正当な権利を主張してくる事でしょう。
貴方は住所も電話番号も知られています。
話し合いとして家に訪ねて来るかもしれません。
どんな相手だとしても、拾得物の報労金の話し合いに警察は介入しないのです。
怖いですよね。
通帳なんて無価値でそんなのほっとけば良い。
…そうするとですね、拾い主は正当な理由で裁判を起こせるのです。
お金じゃなくて、キャッシュカードでも?通帳でも?
そこは拾い主の考えになりそうです。
実際にあった、小切手入りの鞄を拾って届け、報労金の請求で裁判になった件と、株価証券の入った鞄を拾って裁判になった件を載せます。
Aさん(拾い主)は、兜町で総額約78億円にも上る額面の日銀小切手などが入った銀行職員の鞄を拾い、すぐに警察に届けました。
そして無事に日銀小切手入りの鞄は、銀行へ戻りました。
問題は「報労金」の額です。78億の5%は3億9000万円ですから、最低でもその額を拾得者は請求できます。
しかし銀行は、日銀小切手が現金でなく、容易に換金できないものであること等を理由として、日銀小切手は無価値であり、報労金を支払う必要はない、と主張して、報労金の支払いを拒絶しました。
拾い主は納得できずに報労金を支払うように求める訴訟を起こし、決着をつけました。
この裁判で、東京高等裁判所は、①小切手が通常使用されない日銀小切手であること、②現金化が容易でないこと(不正に換金することがまず無理であること)等から、日銀小切手は額面どおりの価値を有していないと判断し、日銀小切手の価値を額面額の2%程度として算定して、900万円弱のみの報労金を支払うように命じました。
小切手でも報労金が払われた事案です。
78億の900万円。
鞄を拾っただけで貰える額として安いか高いか…その人次第ですね。
(https://www.nagareyama-lawoffice.jp/blog/2015/03/post-88-39480.htmlより)
他にもう一つ。
Aさん(拾い主)が釣りに出かけたところ、どんぶらこと鞄が流されてきました。
釣りの邪魔になるその鞄をすくい、ゴミという認識で気にかけることなくそのまま釣りをしていました。ところが、鞄の中に「株券在中」というような記載のある紙袋を見つけたのです。
もし株券が入っていたなら警察に届けなければなりません。中身を確認すると本当に株券が入っていたので、交番に届けました。
この株券の入った鞄は、落とし主が数日前に窃盗被害にあったもののようでした。
拾い主は警察官から、いくらかの報労金がもらえることを教えてもらったので、落とし主に連絡し、落とし主宅まで行きます。落とし主は、自分は犯罪の被害者だ、金がないから支払えない。等の理由を並べて、報労金の支払いを一切拒絶し、拾い主に対して、まるで窃盗犯人であるかのような言い方をし、拾い主と落とし主は口論になりました。
この落とし主は、拾い主に対し暴言を吐いたり、報労金の支払いを拒絶しました。
そうして弁護士が介入し、裁判になりました。
地裁での判決は、株券の価値は、株式の時価の80%とし、報労金の割合を12%としていましたが、大阪高裁では、幾分落とし主の言い分をのみ、株券の価値は時価の70%とし、報労金の割合は10%と判断されました。
(https://www.kyotolaw.jp/jiken/news-sin7.htmlより)
どうですか?
落とし物をすると、拾うと、こんなにめんどくさい事になる可能性があります。
私が調べた内容は、悪気のある人でも同じように調べる事が出来ます。
怖いですね。
私はキャッシュカードを届け、名前も言わずに去ってしまい、お礼欲しさに色々調べてみましたが、結果的に自分には一番良い選択をしたな。と思いました。
もし、名前や連絡先を告げた場合、相手からお礼の電話が来たり、何か届けに来る為に予定を空けたり、その為に相手とのやり取りをしたり……
うわぁ!もう考えただけでめんどくさい!
ATMで誰も触らないキャッシュカードを見た時、日本人の良心は何処に行ったんだと、ちょっと寂しく思ったのですが、拾った先にこんなめんどくさい事が待っている可能性があるなら…
拾わないかもしれませんね…
みなさん、くれぐれも!落とし物にはお気をつけ下さい。
最後までお読み下さりありがとうございました。