第148話 ヴィルの貴族邸訪問 アルドリスク家編 二
その後パーティー準備の終了報告を受けた一行はティータイムを終えパーティー会場へ。
今回会場となるのは貴族を招いたパーティーなども実際に行われるダンスホール、開放的な空間が広がる中央には大きなテーブルと椅子が置かれており、どうやら座食形式らしいという事が分かった。
それだけでなく人数分設置されている椅子の側にはメイドと執事が控えており、一人に対して二人以上の給仕が控えている形だ。
バレンシアやクラーラといった上級貴族の令嬢達はともかくとして、位の高くないアンナや平民であるザックとクレア、普段は給仕する側でされ慣れてはいないニアは着席する際に椅子を引かれ、非常にやりにくそうにしていた。
来客側全員が着席した所で最後の椅子、誰一人として給仕が付いていない一席へとマーガレッタが歩いていく。
一体誰がマーガレッタに付くのかと、若干の予想が付きつつ視線が彼女に集まる。
そして、
「あ、もうそっち側で決まりなんだ」
大方の予想を裏切る事なく、執事服のヴィルが椅子を引いてマーガレッタを待ち、定位置に付いたその後は椅子のやや後方に立って控えたままでいる。
完全にもてなす側の人間となってしまったヴィルへのニアのツッコミが虚空へと消え、それを合図に立ったままのマーガレッタが主催者として開催の合図を行う。
「皆様、本日はお集まり頂き感謝いたしますわ。今日集まって下さった皆様は他でもない、わたくしが傷付け迷惑を掛けてしまった方々です。改めてこの場で謝罪を、と言いたい所ですけれど、もう安易に頭を下げる事はしないと誓いましたもの。ですからその代わりにと言ってはなんですけれど感謝を。こんなわたくしの手をもう一度取って下さったこと、深く感謝申し上げますわ」
「マーガレッタ……」
微笑みを湛え感謝の礼をするマーガレッタにフェリシスが続き、それを見たニアが思わず声を上げる。
最初から受け入れる姿勢を見せいていたニアや被害を被っていないクラーラはともかくとして、苦手意識を抱いていたであろうアンナや、露骨に嫌っていたクレアとザックも程度の差こそあれど肯定の反応を見せていた。
ただ一人、幼少期からの確執を持つバレンシアだけは無反応を貫いていたが……
「シア……」
「…………はぁ、仕方ないわね」
ニアからは窺い見る視線を向けられ、マーガレッタの後ろに控える直立不動のヴィルからは心の奥底を見透かすかような目で見られる。
そんな状況に耐えかねたか、バレンシアは溜息を一つ。
「取り敢えず学園内での事は水に流してあげるわ。全く責任が無いとまでは言わないけれど、魔剣のせいだというのもれっきとした事実だもの。その代わり昔からの因縁までは忘れないわよ。ひとまず本来のあなただけを評価する、それで良いでしょう?」
「ええ、十分ですわ。これからも引き続きライバルとしてよろしくお願いしますわね、『真紅の若き天才』さん」
「……やっぱりあなたとは仲良く出来そうにないわ。随分と古臭い呼び名を持ってきて、聞いてるこっちが恥ずかしいわ」
「あら、バレンシアさんに仲良くして下さるつもりがあったなんて驚きですわ。いいオトモダチになれそうですわね、オ~ホッホッホ!」
「シア!どうどう!マーガレッタも煽らない!」
バチバチと火花が弾けそうな睨み合いにニアが介入し、事態の収拾を図る。
そんな自身の役割を忘れている主催者を見かねたヴィルが咳払いを一つ、マーガレッタはやや頬を赤くして気を取り直す。
「んんっ!とにかく、これからは心を入れ替えてわたくしの新たな価値を示していきますわ。それでは皆様お飲み物をお手にどうぞ。これからもよろしくお願いいたしますわ。――乾杯!」
マーガレッタがグラスを掲げ合図、それに合わせるように参加者全員が飲み物を掲げパーティーが始まる。
合図を受けてシルバーの器に盛られた食事が次々と運ばれ、給仕達は手際良く各人の前にそれを配膳していく。
「すごいね……もうどれから手を付けていいか分かんないよ」
「そう緊張せずリラックスなさって。この場では誰もテーブルマナーについて口うるさく言いませんわ。けれど座食形式のマナーは礼儀作法の授業の範囲ではなくて?」
「うぐ」
マーガレッタにそう指摘され、若干のダメージを受けるニアが居たり、
「料理はおいしい、おいしいんだけどやりづらいわ……」
「あ、すんません、頂きます。あ、肉。ありがとうございます、すんません」
すぐ傍に給仕が居るという状況に慣れず困惑するクレアや、老齢の給仕二人に食い盛りだろうとひたすら料理を盛られ恐縮するザックが居たり、
「あ、これおいしいね」
「ん。流石アルドリスク家の料理人は伊達じゃない」
貴族という事もあり堂々と、慣れた様子で食事を楽しむアンナとクラーラが居たり。
各々が料理に舌鼓を打ちつつ談笑するそんな中で……
「ヴィル、あなた本当に給仕に徹するつもりなのね……」
「勿論でございます、バレンシア様。今日の私はお嬢様の執事、食事を共にするなどとんでもない事でございます」
相も変わらずヴィルはマーガレッタの側で世話を焼いていた。
料理を取り分け、飲み物が少なくなればすかさず注ぐ。
その姿は本当に執事として生きてきたかのように、非常に堂に入った所作だった。
呆れた様子のバレンシアに対し恭しく頭を垂れるヴィルを見て気を良くしたのか、ここからマーガレッタはやや調子に乗り始める。
「あら、口元が汚れてしまいましたわ。ヴィル、拭いて下さる?」
「畏まりました」
テーブルマナーには達者な筈にも拘わらずヴィルに汚れた口元を拭くよう命じたり、
「なんだか足が痛いですわ、靴擦れかしら。ヴィル、見て下さる?」
「畏まりました」
社交界等で履き慣れている筈のヒールが痛むと言い出し、ヴィルに跪かせて確認させたり、
「ヴィル、いつものを頂戴」
「畏まりました。茶葉の配分はこちらでよろしかったでしょうか」
「ねぇどうして分かったんですの流石に怖いですわ」
いきなりいつもの等と称して無茶振りをしたり。
興が乗ったマーガレッタの悪ふざけに我慢の限界に達したのか、バレンシアがマーガレッタをじろりと睨め付ける。
「食事中にふざけないで。今日一日だけなんだからいつものも何もないでしょう。それにいくら雇ったからと言って好き放題し過ぎよ」
「あら、ヴィルを取られて嫉妬ですの?」
「そういうのじゃないわ」
「そうですの、でしたら……」
茶化すマーガレッタをバレンシアが更に苛立たせ、それに対して飄々とした態度を崩さないマーガレッタ。
何か良からぬ事を思いついたらしい彼女は口元を笑ませつつヴィルに向き直り、そっと白い手の甲を差し出して言い放つ。
「――ヴィル、わたくしの手に口付けをなさいな」
「なっ」
手の甲への口付けは、相手への敬愛や忠誠を意味する。
そんな行為をあろうことか公衆の面前で行うようにマーガレッタが命じるという暴挙、バレンシアは思わず驚きの声を上げた。
ふふんと自信に満ちたマーガレッタの表情には、勝ち誇ったような色が加わっていた。
「このくらいで狼狽するだなんて随分と初心ですのね。この程度、わたくし達にとっては普通の」
「喜んで」
「ギャー!!本当にする人がいますの!?冗談ですわよ察しなさいな!!」
あまりに躊躇無く手を取って口付けをしようとしたヴィルに驚いたマーガレッタが、叫びながら咄嗟に手を引く。
突然の暴挙にマーガレッタはバシバシとヴィルを叩くが、当の本人に悪びれる雰囲気は一切無い。
尚、実際にはマーガレッタの手にヴィルの唇が触れていなかった事はここに記しておく事とする。
「お嬢様、流石にお戯れが過ぎますよ。からかいたくなる気持ちは分からないでもありませんが、少々やり過ぎかと」
「あ、な、た、が!それを言いますの!?というか今完全に面白がっていましたわよね!?」
「滅相もございません」
「ウワー、性格悪っる。ヴィルもヴィルで結構イイ性格してるわよね」
「クレアってばやっと気づいたの?ヴィルってあんな顔しといてものすっごい性格悪いんだよ?マーガレッタなんて可愛いものだよ?」
「ニア様。ニア様には後日お話がございますのでそのつもりでお帰り下さいませ」
「…………ほらね」
「ああもう!」
手玉に取られてしまったマーガレッタは頭を抱えて叫び声を上げつつ、キッと睨み付ける。
「大体!注意をするのであれば口頭でも十分でしたでしょうに。たとえフリであってもあんな事をするなんて信じられませんわ」
「遺憾だけどそこだけはマーガレッタに同意ね。冗談にしてもやり過ぎよ」
「おや、お嬢様とお客様揃って注意されてしまうとは、私もまだまだですね。それにしても、お二人は存外仲がよろしいのですね」
「「仲良くなんて無いわ/ありませんわ!」」
「おやぴったり」
パーティーは終始賑やかで喋り声が絶えず、もし礼儀を重んじる厳格な貴族が居れば眉を顰めていたかもしれない。
だがこの場には、そんな騒がしい空間を楽しむ者しか居らず、それを咎める者は誰一人として居ない。
彼ら彼女らの間により強固な絆を生んだパーティーは、大成功の後に幕を閉じたのだった。
―――――
「もし。ここにヴィルはいますの?」
パーティーを終えて黄昏時、マーガレッタは屋敷内のどこかに居るヴィルを探して彷徨っていた。
ヴィルが一日執事をするというのはフェリシスを含めた三人で計画した事だったが、律儀なものでパーティーの後片付けまでしてくれているのだ。
一応マーガレッタもそこまではやらなくていいと言ったのだが、これも契約だとヴィルは笑って言った。
そんな彼に用があったマーガレッタは屋敷の各所を訪ね、現在は厨房へとやって来ていた。
どうやらここは当たりだったようだ。
「マーガレッタ。僕に何か用かな?」
「ええ。少し付き合ってもらいたい事があるんですの。今は大丈夫かしら?」
「了解。けどまだ仕事があるから少しだけ待っててもらえるかな?」
「構いませんわ」
ヴィルは感謝の言葉を残して仕事へと戻る。
パーティーでは作法や言葉遣い等非常に様になっていたヴィルだったが、それはこうした家事についても同じだったらしい。
テキパキと食器類を洗い、水分を拭き取り、迷う事無く棚へ仕舞っていく。
相変わらず何でも出来るのだな等とマーガレッタが考えていると、本当に少しだけだったのだろう、仕事を終えたヴィルが何やらメイド達と話をしていた。
「今日は一日お世話になりました。受け入れて頂いた事、感謝致します」
「とんでもありません!むしろ朝早くからお客様に業務を手伝って頂いて、こちらこそ感謝を申し上げたいくらいです」
「そう言って頂けるとありがたいです。これ、片付けの合間に焼いたクッキーです。昼間友人達に出したものの残りで申し訳無いですが、皆さんで分けて下さい」
そう言ってヴィルが棚からクッキーを取り出して机に並べていくと、メイド達の間でわっと黄色い声が上がった。
当然と言うべきかヴィルの容姿はここでも威力を発揮するようで、あっという間にメイド達に取り囲まれ言葉の集中砲火を受けてしまう。
マーガレッタははぁと溜息を一つ、厨房へと足を踏み入れる。
「あなた達。ヴィルが困っているではありませんの。クッキーだけ受け取って業務に戻りなさいな」
上がる抗議の声を受け流しつつ、マーガレッタはヴィルの腕を引っ張って強引に厨房から引き上げる。
別れ際まで未練がましく、厨房の扉から見送るメイド達に対し、ヴィルは最後まで手を振り返していた。
「全く、アルドリスク家のメイドとしての自覚が足りないのではないかしら。ヴィルも無闇に当家の使用人を誘惑してもらっては困りますわ」
「そんなつもりは無いんだけどなぁ」
ヴィルは掴まれているのとは反対の手で頭を掻きながら、マーガレッタのされるがままに歩いていく。
そうして何も言わず辿り着いたのは、良く手入れの行き届いた短い芝の庭園だ。
流石に一体何用かと声を上げようとしたその時、マーガレッタがいきなりヴィルに何か長い棒を放り投げた。
驚きつつも掴み取って見れば、それは鍛錬用の木刀だった。
マーガレッタが俯き気味に口を開く。
「……ヴィル、何も言わず相手してくれませんこと?」
「……分かった。いつでも良いよ」
何も言わずと言われればそれに応える他に選択肢は無い、殺気は無く切実な色が乗る瞳を見せられては、男としてそうせざるを得ない。
何の因果か、この夏季休暇で訪ねた貴族邸全てで木刀を用いた模擬戦を行うという、予想だにしなかった事態。
「行きますわ!」
ウェルドール邸での『剣聖』戦よりは幾分マシかと自分を納得させつつ、ヴィルは踏み込んで来るマーガレッタに合わせて剣を振るう。
木製の物同士が打ち合う快音、マーガレッタもまた鍛錬用の木刀を手に接近戦を演じていた。
振り下ろし、斬り上げ、突き、時折織り交ぜられる打撃に対処しながら、ヴィルは考える。
そもマーガレッタは魔術師である、その彼女が木刀を持って斬り掛かって来るというこの場面、もし事情を知らぬ者が見ていれば驚きと意外感に目を丸くしたかもしれない。
だがヴィルに驚きはあれど、意外と感じる事は無く、寧ろ得心がいったという考えがあった。
「勝負あり、かな」
「……完敗、ですわね。少しはいい勝負ができるかと思いましたのに、そう甘くはありませんわね」
芝生に座り込み汗を流すマーガレッタの首筋に突き付けられた木刀、案の定と言うべきか戦いはヴィルの勝利に終わった。
負けず嫌いのマーガレッタは悔しがるかと思われたが、しかし彼女の表情は晴れやかだった。
ヴィルはマーガレッタに手を差し伸べて引っ張り上げつつ、戦いよりも大切であろうその後について尋ねる。
「それで?どうして戦ったのかは聞かなくても分かるから良いとして、何を悩んで……いや、何を迷ってるのかな?」
「っ……ヴィルは察しがよすぎますわよ。相談相手としては話が早くて助かりますけれど。――確かにわたくしは迷っていますわ。この力を、忌まわしき後遺症をどうすべきかという事を」
マーガレッタが視線を落とした先には、彼女が握り込む木刀がある。
そこから始まったのはマーガレッタの抱く罪悪感、その告白だった。
「わたくしは魔剣を握らされたあの日、この剣の腕を手に入れましたわ。紅茶に混ぜられていた薬物の禁断症状も治まり、魔剣の呪いも消えた。けれどそれでもなお、この力だけは残った……幸運だと、そう考えた時期も正直言えばありましたわ。ですけど考えてしまいますの。この力は魔剣が数多くの所有者の手を渡り、そしてその数だけ無辜の民を殺めた忌むべき剣なのだと」
「それは……そうだね。マーガレッタみたいに魔剣に操られた人も居ただろうけど、騎士に聞いた前の所有者みたいに、自ら望んで悪事を繰り返した人も居たと思う。そこは否定しないよ」
「率直にお聞きしますわ。ヴィル、わたくしはこの力をどうすべきだと考えますの?」
「どうすべき、か」
恐らくあの事件からこれまでずっと考え続けてきたのだろう、切実な色の正体は考えた時間分の懊悩の証だ。
しかしマーガレッタの懊悩に対して回答する為にヴィルが要した時間は、十秒にも満たない短い時間だった。
「積極的に使っていけばいいと、僕は思うよ」
「……本当に、いいと思いますの?だってわたくし自身の努力で勝ち取った力じゃありませんのよ?ズルだと、そう考えたりはしませんの?」
「ズルか。僕はそうは思わないけど、確かにあの時剣の腕を得たのは魔剣の力かもしれないね。でも、今はそれだけじゃないよね」
ヴィルはそう言うと木刀を握り締めるマーガレッタの手首を、魔剣を引き剥がしたあの時のように左手でそっと掴む。
そしてあの時よりも弱い力で握る手から木刀を取り上げ右手を開かせる――手の内には、作って潰し手を繰り返したであろう真新しい剣だこの跡があった。
「あ……」
「これは最近のものだね。定期的に治癒魔術で消してるんだろうけど、昨日は忙しかったのかな?今日の昼に手を取った時からそうじゃないかと思ってた。マーガレッタ、君はあれからずっと剣の鍛錬をしてるんじゃないかな?それもほぼ毎日」
「本当にヴィルには隠し事はできませんわね。ええ、ヴィルの言う通りですわ、何もしないよりはマシだとそう信じて続けてきましたの。けれど、それも結局は力の上に成り立つ努力でしかないのではないか、そう考えてしまうんですのよ」
「そうかな?少なくとも今戦った限りでは、魔剣を持ってたマーガレッタとは全く別物の剣筋だったよ。魔剣に培われた剣とは違う、努力で積み重ねられた剣だ。そんな悲しい理由で諦めなきゃならないものでは無いと、少なくとも僕は思うよ」
マーガレッタの目を見れば、迷いも幾らか晴れたようで、口元には小さくだが笑みも浮かんでいる。
こうなってしまえば何の心配も無い、一度火が着けばマーガレッタは自分の力と向き合い、一人で解決して見せるだろう、今こそ一時的に心が弱くなっているが元の彼女は芯の強い人間だ。
だからこれが最後の助言になるだろう。
「けどもし実戦で使いたいならもっと鍛錬を積まないとね。間合い、駆け引き、身体強化、型崩れ、改善すべき点は幾らでもある。それに何より基礎が致命的に足りてない。半端な剣はかえって弱点になりかねないからね、課題は山積みだよ」
「わ、分かってますわよ!上げてから落とすだなんて、やっぱりニアの言う通りヴィルは性格が悪いですわ!」
「そうかなぁ。僕は普段、寧ろよく良い性格をしてるねって褒められるんだけど……」
「それ性格が悪いって意味ですわよ!あなた分かってて言ってますわね!?」
「ヴィルさん、そこに居たんですね。良ければこのまま夕食を……ってヴィルさん!?どうしてマーガレッタ様の手を握って……は、離れて下さい!マーガレッタ様も、何を満更でもなさそうなお顔をしていらっしゃるのですか!」
「フェリシス!?こ、これは違いますのよ!これはヴィルの方から勝手に……!」
「耳まで真っ赤にされて……いくらヴィルさんとて見逃せません!あなたに決闘を申し込みます!マーガレッタ様の御手に触れるのはこの私の特権です!!」
「フェリシスぅ!?あなたお酒を飲みましたわね!?こうなるから飲むなと言いましたのに!」
アルドリスク邸の庭園に騒がしい声が木霊する。
主従は新たな形へ姿を変え、そしてそれはSクラスにとっても同じ事が言えるだろう。
この先絆を試される機会は必ず来る、そしてその時Sクラスはきっと試練を乗り越えるに違いない。
夏も終わりに近づいたその日、ヴィルはフェリシスに胸倉を掴まれ揺さぶられつつ、確信を胸に暗くなっていく空を見上げるのだった。
短かったイリアナ章を補完する形でくっつけた夏休み編でしたが、結果として五章が最長の章となってしまいました……
ともあれ次回からはいよいよ六章に入っていきます
六章でスポットライトが当たるのはローラ・フレイス、五章でちらっと登場したキャラクターです
舞台は霊峰エルフロスト、一年Sクラスは世界最高峰へ登山に挑みます
お楽しみに!




