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”湿度高め”な姉妹との高校生活  作者: minint
第一章 
23/46

23 理想の関係



 さて、人生初の畑仕事だ。

 

 畑になる箇所の草を軽く抜く。

 そこに、用務員さんに小さな耕運機あずきちゃんをしてもらい、柔らかくなった土を畝の形に盛っていくという流れになる。



「畝を作る前に、堆肥を土に混ぜ込んでおきます。堆肥はそこの小屋に置いてあるはずなので、撒きましょうか」


「あ、僕やりますよ」


「ありがと、奥野くん。リアカーがあるから、それ使ってね」



 小屋に来てみると、袋に入った堆肥が積まれていた。沢山の農具もそこに置かれている。


 さて。ここぞ、と思って名乗りをあげ小屋に来てみたが、袋がめちゃくちゃ重い。一袋20ℓ入り……ということは20kgか。

 リアカーに積み、畑の場所まで運んでは袋を開け、そこに撒く。それを先輩や麻実が、クワを使って混ぜるようにしていく。それを何度か繰り返す。


 ……うーん、重労働………。



「よいしょ、っと……ふぅ、いい感じね」


「あ、なんか私、クワ使うの去年より上手くなってる気がします!」



 正直しんどい作業だと思うのに、疲れを見せずにいるのは凄いなぁ。やはり去年もやってるし、慣れているのだろうか。



「うう、しんどい……明日、筋肉痛で学校休んでいい………?」



 若干一名を除いて。



「ほら、あとは畝を作るだけなんだから」


「それが一番しんどいんだよー…」



 そんな竹内先輩だが、作業はしっかりとしていた。小声で「夏野菜カレー……夏野菜カレー……」と呟きながらクワを振る姿は、少し滑稽だったけれど。




「じゃあ、始めましょうか!」


「どれくらい作ればいいー?」


「えっと……そうだね、予備も含めて12個くらいあればいいかな?一人当たり、3個くらい作ってくれると嬉しいです」



 先輩方や麻実が畝を作り始める。その様子を見ながら、見様見真似で自分も作ってみる。


 ………なんだか、自分の作ったやつ下手だな……

 形が歪というか、斜面が急な気がする。



「えっとね、こうするんだよ」



 すると、先に作り終えていた麻実が隣に来て、作り方を教えてくれた。

 


「えっと……こんな感じ?」


「そうそう!あとね、クワはこうやって持つと使いやすいんだよ」



 そして、麻実は自分のすぐそばに来て、自分の持っているクワを持つ。


 その時。

 軍手越しだが、手が重なった。

 


「ほら、こんな感じ!」


「あ、うん、ありがと……」



 ……心臓が高鳴って、それどころじゃない!

 


 さっきまで土の匂いばかり嗅いでいたからか、突然鼻をくすぐった良い香りに意識が支配される。


 どう、わかった?と言いながら、少し離れて笑顔を見せる麻実。

 直視できないのは、西陽が眩しいからだろうか。


 

 その後、半分ほど意識を持っていかれながらも、なんとか畝作りを終えた。





「よし、とりあえず形はできましたね」


「お疲れ様でした!」


「半年分のカロリー使ったよー………」


 

 今回ばかりは、竹内先輩に同意。

 正直、今から帰るのが億劫にさえ思える。



「もー動けない。理紗ちゃんがおぶってくれないと帰れない。助けて」


「………そっか。あーあ、部室に戻る時に、自動販売機でプリンでも買って、裕佳梨と一緒に食べたかったんだけどなー。裕佳梨おぶってたら買えないなー」


「………プリン、たべる……」


「じゃ、歩かないとね?」


「うん……」



 そんな二人の様子を微笑ましく思い見ていると、肩のあたりをトントンとされた。

 横を見ると、くすくすと笑う麻実がいる。

 


 すると、そのまま麻実がそっと身を寄せてきた。

 



「……仲良いよね、先輩たち」

 

「うん。本当にね」



 2人並んで、先輩たちを見る。

 吉岡先輩と竹内先輩。

 二人で話している時は着飾ることなく、自然に笑い合っている。




 

「………いいなぁ」




 麻実が、ぽつりと呟いた。



 どんな表情でそれを言ったのかはわからない。


 でも、その声色は。


 ひどく、落ち着いたものに聞こえた。





「……ね、侑都くん」

 

「ん?」


「ちょっと来年の話、するね」


「……うん」

 


 麻実は、息を整えるように深呼吸をした。

 そして、少し間をとり、口を開く。



「私たちが、2年になって。先輩になって。それで、後輩たちが入ってきてさ」


「うん」


「茶化しあったり、笑いあったりして」


「…うん」


「それくらい、お互いに……()()()()()


「…………」


「私は、ね。……侑都くんと」




 肩が、コツンと触れた。




「そんな関係に、なっていたいな」




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― 新着の感想 ―
[良い点] 堆肥一袋20キロか、どれくらいの高さに積まれてたのか分からないけどリアカーに乗せるだけで重労働だ。堆肥運んで畝を作って、これは腰にきそう。 来年には信頼しあう関係になっていたいってことは…
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