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9話 ダンジョン警備員、クソ熊擬き戦

 今現在、■■■■(なんちゃら)とか言うよくわからん森に瞬間移動させられた。


 その挙げ句、腕なが短足のゴブリンに追い回され、右腕を損傷し、逃げ込んだ先がモンスターが出て来そうな遺跡だか、ダンジョンだった。

 ナイフすら無いアタシは絶賛詰み状態である。

 でも進むしかねぇんだよなぁ。


 視界は、ファイアボールの魔法で何とかなってはいる。

 指先から出ている火はライター同然で、ボールとは言えないけど。


 ...で、進むのか。この先が見えない真っ暗な一本道を。


 進むたび腕に痛みが走るし、足音が良く響く。

 ホラゲーよりホラゲーしてる。

 だってリアルだし。二次元じゃなくて三次元。


 暗いし、マジもんのモンスターがいるこの世界じゃ、幾ら鍛えられて身体能力に自信があるアタシでも、スキルも少ないし生き残れる確率が極端に少ないのは分かってる。

 しかもさっきのゴブリンの攻撃当たったし。


 はぁ、泣きたくなってきた。


 せめて、武器が欲しい。

 ハサミとかでも良いから、攻撃手段が欲しい。

 と言うか明かりが欲しい。

 めっちゃ暗いんだよ此処。


 ん?何か目の前に居る。

 薄暗くて見えずらいけど、何となくシルエットが見える。


 なんだろう。

 何か四足歩行の、モフモフしてて、耳が丸っぽくて、デカくて...あれ?あっ、ヤバい熊だ!

 く、熊だよな!?何か立ったし、深緑色して...。


 グチヨァ

 ニチニチニチ


 熊じゃねぇ!?

 立ったと思ったら、腹が割れて中からどす黒い針金みたいなのが出て来やがった!

 嫌だ死にたくない!


 何か三四本くらいの長い針金が、床や壁に沿って近づいてきてるんだけど。

 マジで何なんだのコイツっ!

 そ、そうだ!こんな時こそ『鑑定』...!


『抵抗力を上回る妨害を確認』


 何故ぇ!?

 相手の情報が無い中で行動を起こすって、かなりリスクがあるんだぞ!


『抵抗力の一定の成長を確認しました』


 成長? あれか、レベルアップみたいな?

 なんにしてもラッキー! でもこれでもう一回『鑑定』をすれば...!


『抵抗力を上回る妨害を確認』


 成長したんじゃねぇのかよ!?

 抵抗力はスキルをはね除けるほどの力を持ってるんじゃ無いのかよ...!


 ...針金がアタシの立っている場所に、めっちゃ照準会わせてきてるんだけど。

 有無を言わさず攻撃対象なんですね。

 ふざけんなカス!


 ドンッ

 パラッ...


 避け、られる...!ギリギリだけどな!


 一斉に針金がアタシを突き刺そうと、一斉に攻撃をし始めた。


 何か、上からパラパラ小石が落ちてきてる。

 地盤緩いのかも知れない。


 しかも...、刺さった針金の抜ける気配が無い。

 針金から新たに針金が生えて延びてきてるし。

 針金から針金が生えるって何?


 ドンッ

 パラパラッ...


 しゃがんで避けても、急に方向転換こそしないが、向きを変えてこっちに来る!

 追尾能力高過ぎだろ!


 とりあえず、長期戦はめちゃくちゃ不利って事は分かった。

 避ければ避ける程、逃げ場が無くなってくる。

 と言うか...もう無い。

 逃げ道が無い。


 前が熊擬き、後ろが針金で塞がれ、壁も床も一部針金。

 触ったら死ぬのは確定と見てもいい。


 例え明かりを消したとしても、こんな暗い場所で生活してんだ。

 夜目も利くに決まってる。


 魔法? アタシの魔法はカスだよクソ!


 どうにかしてこの熊擬きを巻かないと、避け続けるのは無理だ。


 ドンッ

 パラパラッ...


 ...今気づいたけど、コイツ攻撃にクールタイムがある。


 針金を生やすのに少しだけ時間が掛かるみたいだ。


 その間に熊擬きの横をすり抜けたいけど...。

 殴られない保証は無い。


 どうにかしてコイツの動きを少しでもいいから止めないと...!


 何か良い方法は...。


 ドンッ

 パラッ...


 だぁもう! 嫌だ!

 限られた足場で避けるのキツいにも程があるんだぞ、クソ熊擬き!


 ピシッ


 ん?熊擬きの少し前らへんの、右側の壁に亀裂が...。


 そうだ! どうにかして針金をあの亀裂に突き刺すことが出来れば、崩れて目眩まし位には成るかも知れない!


 地盤が緩いのは、初手のコイツの攻撃で分かってる。

 後は上手く天井ごと崩さないように、亀裂の下側に誘導できれば...これで天井が崩れないとも限らないけど。


 ただ、考える時間がもう無い。

 次の攻撃が来る!


 ヒュッ


 一発で決めるんだ! じゃないともう逃げ場が...!


「...やってやらぁぁぁ!」


 ドッ

 ゴゴゴゴゴ


 うわっ危ねぇ!天井も少し落ちた。

 ただ上手く通路の右側三分の二を崩せた!


 これで狭い空間で避け続けることは無くなる!

 お先に!クソ熊...


 ズッ

 キィィッパキ


 は...?

 アタシの左...腕...。

 肘まで...貫通して...。


 ...ッ!

「ッダァァァアアァァァアァ!!!」


 駄目だっ!早く、早く引き抜かないと!退かないと!

 死ぬっ!


「クソッ!...クソッ!うあぁぁぁぁ!」


 何とか針金から引き抜けたが、痛い何てもんじゃない!左腕が骨もろとも潰された!

 クールタイム中じゃ無かったのかよ!?

 いや、まさか、嵌めるための罠...クールタイム何て無かった?


 キキッ...ジャキッ


 アタシを刺した針金から無数の針金が...毛虫のように生えてきた。


 もしあのまま狼狽えていたら...。


 ガオォォオオォォオ!!

 キィィ...


 今度は何だ!?

 コイツの鳴き声で分かりにくいが、針金が軋む音とは別に、何かべつの...。


 ドッゴゴゴゴゴッ


 はぁ!?何だそれ!?

 目眩ましに使った岩を翔ばしてきた...!

 どうやって!?


 ま、まさか。

 あの黄緑色の、多数の波線が刻まれているあの魔法陣は...。

 風の魔法を使えるのかコイツ!


 ガスッ


「うあっ!」


 痛てぇ!右脇腹に当たった...!

 でも頭に被弾しなかっただけマシだ。


 風の魔法は突風を吹かせられるって事は知ってる。

 だとしても、風だけで岩を動かすなんて!


 ヒュッ


 針金...!


 ドスッ

 パラパラッ


 クソッ、もう逃げ場がほとんど無い!

 こっちだけ体力を消耗し続けて...。


 ヒュッ


 は!?


 ドスッ

 パラパラ


 針金は瞬時に生やせるのを見せたからか、更に攻撃の頻度が上げやがった!


 キィィ


 風の魔法陣!

 これも見たから使って良いよね?

 ってか!?このクソ熊擬き!


 さっき明かりを着けてた左腕を潰されたせいで視界がほぼ無い。


 このままじゃじり貧、て言うか死ぬ!


 何か出来そうな事は


 ドンッ

 ゴゴゴゴゴ


 また壁が崩れてきた!


 ...あんまりやりたくないけど、どうにかしてコイツの上の天井を崩した方が良いかも。


 下手をすればアタシも生き埋めだし、すぐ対応されるかもしれないけど。

 でもやるしかねぇ!


 問題は、どう怯ませるか、どう天井を落とすか。


 アタシの使える数少ない魔法を、天井に向けて放ったとしても、左腕は殆ど動かないし、右腕も負傷してる。


 初動が遅くて見切られるし、カス魔法一発で地盤が緩かったとしても、天井が一発で落ちるとはあまり思えない。


 カスッ


 「っうぅ」


 大きな被弾が目立ってきた。

 マジで死ぬ、本当死ぬ!

 コイツ、よく後ろからアタシの頭を狙って、

 後ろ...頭?


 ...クッソ! ここまで来れば賭けだ!

 もう勝ち目無い賭けだけどなぁ!

 でも死にたくはねぇんだよぉ!


 ヒュッ


 良し、今だ!熊擬きに向かって全速力で走る!


『力の底上げ Lv2 を発動』


 数本の針金がアタシの後を追っている。


 もちろんアタシが進んでいる道のりは、スパイ映画の如く針金が突き刺さりまくってる

 スピードは少しアタシが遅い。


 だがそれで良い!


 アタシが熊擬きを殴れる一歩手前位で、しゃがむ!


 グァ!?

 ヒュッ


 怯んだ!仕留められると思って良い速度出してたからな。

 針金も熊擬きのやや後ろの天井ではあるが向かっている。

 その隙にすり抜ける!


 さっきしゃがんで避けた時、急には方向転換は出来なかった。

 これもコイツの策略の内だったかもしれない。

 そうも思ったが、どうやらこれは素で出来ないみたいだな!


 ドンッ!

 ゴゴゴ...


 えっ?何かヤバくない?


 アタシを仕留めようと速さを上げ続けた針金が、勢い良く天井に深く刺さってる。


 そこから続いているヒビが、アタシの進行方向に続いている。

 不味い。


 スキルは発動中、間に合うか...!?


 ガオォォオオォォオ!!

 ヒュッ


 まだ攻撃が来るか!

 しかも何か後ろからドスドス音がしてる。

 熊擬きも走ってるんだろう、生き埋めにはなりたくは無いもんな!


 ビュッ


 うわっ、馬鹿みたいな速さの攻撃が...!


 ピシピシッ

 ドォォン!!


 ...風圧を感じた。

 土埃が舞っている。

 針金が背中に食い込んでいる。


 でも生きてる。


「はっ、はぁぁ」


 い、生きてる...。

 足に力入んね。

 クッソ腕痛ぇ。

 まさか、賭けに勝つとは思ってなかった。


 あれはもうヤケクソに近い作戦だった。


 だって、前から攻撃が来たら反応は出来なかっただろうし。

 あの針金は熊擬き自身が出してた物だし。

 意図が読まれて横に攻撃が避けたら更に通路のが塞がれて詰んでたし。

 しゃがんで避けることを想定して、足元付近に針金を忍ばせていたら絶対死んでたし...。


 ...あの熊擬き、頭良いのか悪いのか分からなくなってきた。


 薬草...は三つしか無い。

 いや、あれで残ってるのが奇跡なんだ。


 とりあえず、此処から離れるか。

 また天井が崩れるかも知れないし...。


 ピシッ


 あ?

 何処から鳴ってる!?


 上から...はしてない。

 まさか、まだ生きてる!?

 そう言えば、生物を倒した時に入るはずの経験値が入って無い...。


 ドォォン


 ...!

 床が、崩れた...!?

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