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8話 共に脱出···しないんですか?

 アタシは何をしたんだろう。いや、何をしてしまったんだろう。

 フグイから難を逃れ、ある程度移動し夜が明けた。

 いやまぁ、杖とか返してくれなかったし、何だかんだ嫌われた可能性があるとは思ってたけどさ···この危険地帯の中、置いてく?普通。


 煩くし過ぎたのかな。

 でもさ、置いていくはまぁ、アレだけど、幾ら嫌いになったからって杖を持って行くのは違くない?何なら仮面まで持って行こうとしたよね。ノワールさんって追い剥ぎだったの?

 でもそれをされる程の事をアタシはやらかしたかも知れないし。助かったと思って調子に乗り過ぎたのかも知れない。

 倒れた巨木の陰に身を潜め、片膝を付いて外の様子を伺う。さっきから大きな唸り声がする。


 考えが前に進まない。この森は身構え気を配っていても、簡単に死ぬかも知れないのは文字通り身をもって経験してる。


 行くか、いっそここらを探索して拠点にするとか···で?それで?()()()()()生き残るだけじゃん。

 でも進むのも同じで。


 ふと景色の遠くを見てみた。端から端まで見たことのない憎たらしく思う位に幻想的な風景。

 進むのだってワンチャン生き残るんだ。なら、この景色を目に焼き付けないのも何だか損じゃん。

 妹にこんなところ行ったって話して、お父さんとお母さんに自慢するんだ。クソみたいな場所でアタシ生き残ったって。

 そうだ、クラスメイトとの誤解も解かないと。

 ノワールさんに謝って何がいけなかったのかも聞かないと、まだ近くに居るかも。


 言い訳じみた進む理由だけど、もうそれで十分だと思う。

 アタシは森の中へ歩き出した。

 木々に隠れながら進むと、後ろから鼓膜が破れそうなとてつもない破裂音が聞こえた。

 さっきまで待機していた巨木が粉々になり地面が抉れ、巨大同士が怪物が戦っている。

「···実写トンデモ怪獣ファイト···」

 もう戻れない。そう考えた途端に脚が動いた。落ち着いて行こう、先は長いんだから。


 常時、知識の能力を発動させてヤバそうなものが見えたら迂回する。お陰でじわじわと頭痛がするけど、有害なガスが立ち込める場所とかに踏み込まずに済んでる。

 問題は食料もそうだけど現在地が分からない事だ。出口がわからないまま彷徨うのはなぁ。

 さっきから上空を鳥型の怪物が飛んでるのもあって、見晴らしも良い所に行ったら即死しそうだし。


 さっき見つけた放棄されてる開けた場所にある大きな神殿に、何か情報があるかもと思ってもいるが、一回同じ様な場所に入って死にかけてる以上気乗りしないんだよな。

 でもこのままでも当ては無いし、仕方が無いか。


 素早く静かに建物に駆け込み、窓があったであろう枠を飛び越え室内に入った。

 さて、知識の能力が此処は神殿と告げていた訳だけど、本当に神殿?ずっと長い廊下があるだけだけど。

 雑草が生え、脆く、所々崩れていはいるが確かに厳かな雰囲気はある。それでも何でこんな森に神殿跡があるんだ?あの時の扉だってそうだし。昔は国でもあったのか?

 廊下の奥の壁に何かが壁画らしき何かが掘られている。


 剥がれた塗装に登っていくツタ。近くで見ると凄い迫力。

 ハッとして外を覗いて見た。開けた場所だからか、さっきまで気づかなかった桜ような色を付けた天まで届く巨大な木が見える。

 もう一度壁画を見るとそれらしき絵が描かれている。


「これって地図か!」

 結構記号で簡略化されてるけど分かるもんだな。

 あの時の扉も記号で描かれてる。

 円を描くように崖、取り囲むように三つの扉、更に取り囲むようにつ六の建物?神殿?それと丸で囲まれた木。

 あの大木に向かって歩けばこの森から出られそうだ。

 

 そうと分かれば即行動だ!

 アタシは外に出ようと窓枠を乗り越えようとした。

 ···遠くで何かが大樹に向かって凄いスピードで走ってる。見知った杖を咥えてる···って

「ノワールさあぁぁ···」

 声を抑えその場にしゃがみ、身を隠す。

 何だあの透明なデカいダンゴムシに棘が生えたみたいなヤツ。

 目は合って無い。声さえ聞こえていなければ助かる筈。

 何故か近づくワチャワチャとした足音。

 腰に下げているナイフに手をかけ、音に集中しフッと息を止めた。

 行ったり来たりを繰り返し、暫くして音が遠ざかっていく。

 こっそり外を見ると、ノワールさんを追って森の中に消えていくのが見える。

 一気に溜め息を付きたいのを堪えゆっくり立ち上がった。


 行動しようと思った矢先にこれだ。進行方向、同じなんだけどなぁ。

 迂回するのは他の怪物に遭遇する回数が多くなるかも。一旦ここであのダンゴムシが遠くに行くのを待ちたいが、留まり過ぎるのも良くない。ノワールさんもなぁ。

 体重が前へ行ったり後ろへ行ったり。

 結局、うーん、腹ぁ、括って行くか。そう結論を出した。


 目的地へと足を進める度何だか少しずつ木の密度が薄くなっていって、薄ピンクの花びらがひらひら舞っている。

 その中で、大樹の根本に立掛けてあるアタシの杖があった。

 良かった、案外あっさり杖は見つかった。アタシが触れるとクリスタルが光り壊れてる様子もない。

 ノワールさんも何処かに居るはず。

 大樹の根の周りであのダンゴムシと戦っているんだ。


 そのうち花びらを乗せ、じっと様子を伺う傷付いた狼を見つけた。

「!ノワールさん!」

 ドンと板を叩く様な音が聞こえる。

「ダ、ダンゴムシ···」

 何かに阻まれここまで近づけず突進を繰り返している。これって結界か。

 魔法の力か、傷が癒えて外に飛び出したノワールさん。

 アタシも何かしよう。何か出来ることがあるかも。と、思っていた。

 睨まれた。ノワールさんに。

 そう、アタシはノワールさんととんでもない縺れがある。それでも···!

「じゃま」

 わざわざアタシに目を合わせてそう言った。


「邪魔、だろうけど、でも」

 ノワールさんの目が座り、戦いを止め結界の中に入ってきた。

「いらない」

「···いらないって」

「おまえ、せいしんりょく、はんだんもまあまあ。でもそれだけ」

「えっ」


「しのきょうふ、ない。それか、ごまかしてる。かんかくがおちる。おまえ、なんかいしにかけた?」

 ···そうか。縺れとかそんなんじゃなかったんだ。切り捨てたんだ。


「うけいれて、たちむかう。それができないなら、すぐにしぬ」

「···」

「それに、ふつごうのはんだんはいい。でもそれをかいひする。おまえはできない。それで、ひだりうでがない」

「」

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