17話 狼は訳ありなようです
人面モンスターの首を落として一時間弱、辺りを薄っすら照らしていた日も落ちてしまった。
現在は洞穴で休憩中。
そして一つの小さな変化に気付いた。
何かハンマーが若干変形してるんですよ。
しかも光ってる。
デカイ...確かヘッドって言うんだったか?その片方がガラスみたいに透明に、もう片方が枝分かれした線が浮き上がってる。
そしてその付け根には透明なクリスタルが浮いてる。
...これはハンマーではなく杖だった?
いやぁ、フッと見たら見た目が全然変わっててビックリ。
しかも経験値もスキルももらってないとか言う、絶対生きてる。首落とされたらおとなしく成仏してくれよぉ!
狼も...起きそう、だけどめっちゃうなされてるし。
「《■■...■■■■■■■......》」
お、重い。
胡座かいてる上でそんな重い事を言わないでくれよ。
苦笑いしか出てこない。
はぁ...クラスメイトの皆は今何してるんだろ?
早く元の世界に帰りたい。
カカカカカカ
キキッキッ...キィ"ィィィ"ィ"!!!
変な音が外からするし早く帰りたいっ...!
狼ぃ、起きてくれよぉ!
アンタムカつくけどギャーギャー騒いでもらった方が落ち着くんだよぉ!
「《■■■!》」
「うわぁっ!」
ゴンッ!
「だぁっ、ったま打ったっ...!」
起きて欲しいとは言ったけど、そんな...ビックリ箱みたいな...。
...状況が呑み込めてないのか固まってる。
「《■■......■■■■■...》」
狼がゆっくりアタシの顔を見る。
表情は変わらず驚いている。
フフフッ、感謝しやがれ!
アンタをしっかり助けてやったんだからな!
「《■■......■■■!》」
思ってたんと違う反応が...。
何か段々不機嫌になってね?
「《■■■■■!》」
「はぁ!?」
急に怒鳴ったと思ったらアタシとの距離を素早く離した。
「あぁ、おい。大丈夫か?」
「《■■!■■■■■■■■!■■■■■■■■■■■■■■■■!》」
「は、はぁ?」
何でこんなコイツ怒ってるんだよ?
"人間に救われる位なら死んだ方がましだ!"ってか?
にしてもそんな言い方無いだろ、確かに雑に扱ったけど。
コイツ森の外に出たいんだよな?その為に一応組んでるわけだし。
何がしたいんだコイツ?
狼がグルルと威嚇してくる。
こっちも威嚇し返してやろうか?
キイィッ!
「ほぁっ!」
洞穴の外から何かに威嚇された!
ヤベェ喧嘩してる場合じゃねぇ。
逃げる準備しないと!
「《...■■...『■■■■■■■』》」
ガガガガッ
おぉ、出入り口が岩で塞がった。
塞いだ出入口を見ていた狼がアタシに向き直る。
...な、何をそんなに怒ってるんだよ?
「《■■■■■■■■■■■■......■■■■■》」
えぇ、そうですか...。
何されたか知らねぇけど深くは関わらないでおくよ。
「《■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。■■■■■■■......》」
狼が光源...つまりハンマーに目を向けた瞬間、そのままへたり込むように座ってしまった。
狼の情緒忙しそうだな。
「《...■■■■。》」
早すぎる?何言ってんだ?
何かコイツ可笑しいぞ?
ハンマーを手に取る。
相変わらず不思議な造形のハンマーが光ってる。
このハンマーが何かあるのか?
とりあえず狼に近づけて様子を見る。
「《...■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。■■■■■......》」
...口を次ぐんで考え込んでしまった。
段々と表情が険しくなってきている。
そんなにこの魂神ノ武具とやらに何かあるのか?
もう一度『鑑定』してみるか?
道中できる限り『鑑定』できるものはしようって考えておいて、全く『鑑定』してないからレベル低いけど。
『鑑定 Lv2 を発動』
...魂神ノ武具、やっぱりそれぐらいしか書いてないよな。
『鑑定』は何故か経験値でレベルが上がるスピードが遅いし、怠けず使うしかないか。
キュイッ
キキキキキキキッ
まだ変な鳴き声がするし、こんなヤバい森でそんな悠長なこと出来るか知らんけど。
「《......■■■■■■■■■■■。■■■■。》」
はぁ?早くね!?
アタシまだ一睡もしてないんだけど!?
嫌がらせ!?嫌がらせなのか!?
「《■■■■■■■■■■■■■■■■■。■■■■■■■■■■■■■■■■》」
狼が独り言を呟くようにそう言った。
外に出るのも危険だと思うんですがねぇ?
せめて一晩でも此処にいた方が...。
「《■■■■■■■■■》」
作りられたばかりの岩の壁が引っ込んでいく。
アタシの意思は無視ですかそうですか。
意思なんて伝えてねぇけどな。
チクショウメェ...。
はぁ、仕方ねぇな。
ハンマーの光の消し方何て知らないし、今着てる上着でもかけとくか。
洞穴の外に足を踏み出す。
アタシが避難した場所は大きく大地が起伏しているその下の洞穴。
目の前には高層ビル位あるんじゃないかと思うほどの絶壁や滝が遥か先まで続いている。
スゲェ絶景だよなぁ、写真撮りたい。
「《■■■■■■■■■■■...》」
...愚痴を溢されてしまった。
そこら辺に咲いてある花も鈴蘭やガーベラ見たいで綺麗だし、危険な生物がいなければピクニックしたかったよ。
勿論『鑑定』もした。
特に何も書いてなかったけどな。
「《■■■■■■■■■■■■■■》」
あの魔獣?人面モンスターの事か?
だとしたらヤバくね?
首落とされても多分死んでないんだぜあの人面モンスター。
「《■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■》」
吐き捨てるようにそう言った。
やっぱり仲間が居たのか。
アタシの推測じゃこの狼は戦闘のプロだと思っている。
魔法の詠唱無しで魔法を使えてたし。
通信系統のスキルが何だか知らないが、そんなのを知ってる位だから少なくとも訓練位はしてるだろうし。
何しろその人面モンスターに会うまでは、この森の中心部の境である"深淵の渓谷"付近まで来てる訳だし。
...それを意図も容易く蹴散らす人面モンスター。
対峙してよく生きてるなアタシ。
...何故に今狼に起こった出来事を話したし?
しかもアタシは狼が嫌う人間、"此処は絶対に物音を立てるな"で十分伝わるし。
嫌いな奴に自分の話しなんてしないと思うし...。
...待てよ?コイツまともに生きて帰れると思ってない?
人面モンスターや、洞窟の中に居たモンスターみたいなのがうじゃうじゃいるこの森を、二人でどうにか脱出する。
......確かにちょっと厳しい気がしてきた。
"外...出来るだけ"って言ってたのが気になるけど...。
召喚してきた王国で言ってた魔族の仲間...なんて。
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