15話 煽り耐性が低いっ!悪かったなぁっ!
オラ狼治してやったぞ。
まったく、動物と話せるってそんなにメルヘンなもんじゃないのな。
動物嫌いになりそう。
真っ黒な狼から手を話すと目の前に飛び出した。
何か不機嫌だなコイツ。
「おい・・・!協力の申し出や回復の件は感謝するが、魔境の森で大声をあげるな・・・!魔獣は音に敏感なんだぞ、知っててやったのか・・・!?」
知るかブァーカァ!
カッコつけてモンスターを魔獣とか言っちゃってさ?変わんねぇだろそんな。
「特に貴様の声は耳障りなんだ、少しは自重しろ」
あぁ、はいはい。
さぁーせんしたぁ。
立ち上がるアタシをよそに先を歩く狼。
あれ?コイツも東に行くのか。
スライムが言っていた街ってコイツの拠点とか言わないよな。
まぁ、とりあえず付いていこう。
「おい、早く歩け。中心部の外は直ぐそこなんだ。......外...出来るだけ...」
あ?何だって?
最後がよく聞き取れなかった。
何処か諦めたような目をしている狼。
気になってはいたが何者なんだコイツ?
そう言えば、皆の為にも何ちゃらってさっきも言ってたな?
以前ヲタク軍団の櫻木から、狼は群れで行動するとかって教えてもらった。
異世界の狼の習性がどうとか知らないけど。
......仲間が居た、とか?
皆とか言ってるくせに不審な人間と共に行動する位だし。
外に出たがってる素振りからしてこの森の住民では無さそうだし。
今更ながら『鑑定』を......
『鑑定 Lv2 を発動』
......殆ど見えない。
レベルどころかスキルやアビリティの名前すら見えない。
妨害系のスキルか何かか?
「...おい貴様、"ここ"の人間じゃないな?」
ギクッ
え、は?
な、何だコイツいきなり。
"ここ"ってどう言う意味で言ってるんだ?
確かにアタシは明らかに不審だろうが...いやでもこの世界の住民じゃないって言われた訳じゃ無いし。
「その通信系統のスキルが妨害された時と同様のノイズ音、会話を不自由にさせる呪いだろう」
ノイズ音?アタシの声そんな風に聞こえるのか!?
「只、その呪いは漂う魔力の流れから見て強力ではあるが不完全。俺が知っている言語であれば、通常通り声が聞こえるはず。そしてその俺は、魔族語やその他の言語を多く知っている...にも関わらず、ノイズ音は取れない...」
魔力の流れとか分かるのか。
って言うか、呪いが不完全...アタシにとってはそれでも厄介だけどな。
で、めっちゃこっちを見てくる。
何か怖ぇ。
「......そう言えば、最近、人間のとあるイカれた王国でまた召喚の儀式があったらしいな?」
あ、ヤバい。
コイツ確信犯だ。
「まぁ、だからと言ってどうこう出来る現状じゃ無いがな」
前に向き直る狼。
そして澄ました顔。
う、うわぁ。
絶対コイツ確信犯だ。
なんちゅう洞察力してんだコイツ。
ん?"また"召喚の儀式?
...やっぱり一年前、アタシ達の前に召喚された人達が...。
それにイカれた王国って。
「なぁ、おおk」
「五月蝿い」
...つい話しかけてしまった。
でも即答で五月蝿いは無いだろ。
...何か言い返さないと気がすまないな。
『言語理解』のスキルを切ったらどう言葉が聞こえるんだ?
一旦切って話しかけてみよう。
「なぁ」
《■■■■■》
...なに言ってるか分からん。
めっちゃ不機嫌に成ってるのは分かった。
『言語理解』を中途半端に付けるのはどうだろう?出来るか知らんけど。
『言語理解 Lv2 を発動』
これを、こう...力を抜く感じで...。
これでどうだ?
「なぁ」
「《■■■■■■■...!》」
スゲェ、できてしまった。
めっちゃ聞き取りづらいけど。
「《■■■■■■■■■■■■■■■■■》」
...この狼めが。
見下した口調しやがって!
腹立つ程馬鹿みたいにちょっかい掛けてやる。
細々した嫌がらせが一番ムカつくのをアタシは知っているからなぁ!
「なぁおい」
「《■■■■■■■■■■■■■》」
「なぁなぁ」
「《■■■■■■■■■■■■...!》」
「よぉワンコ」
「《■■■■■■■》」
「まっくろくろなんちゃらぁ~」
「《■■■■■■■■■■■■》」
「ポチぃ~」
「《■■■■■■■■■■■■?》」
うはっ、ムカついてらっしゃる...!
小学生かって?良いんだ別に。
そしてアタシは新たに言葉を覚えた。
"五月蝿い"
どうやって発音してんのか分かっちまったぜ...!
さっそく言い返してやる!
くらえ!アタシの初反撃!
《ウルッセァッヘェイ》
「《......■■■■■■■■■■■■■■■■■?》」
大人な反応を返された...。
「《■■■...!》」
吹きやがったコイツ!
「《■■■■■■...!■■■■...!■■■...!》」
コイツ!ふっざけっ!マジふっざけっ!
「《■■■■■■■■■...!■■■■■■■■...!》」
そんな風に聞こえてたのか...!?
つかそこまで笑わなくて良いだろ!
「《■■■■■■■■■■■■...!■■、■■■■■■■■■■■■■■■...!》」
コイツ全力で煽りやがって!
幼稚なのは自覚するけどそこまで笑わなくて良いだろって!
「《■■......■■■■■■■■》」
「...っ!」
『抵抗力 の成長を確認しました』
何か今スキルか何か知らんけど威圧された。
見てて分かるけど、コイツアタシと協力する気が無い。
むしろ服従させる気だ。
仲良しする気は無いってか。
「《■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。■■■■■■■■■■■。》」
殺意が...。
......本当に可愛くねぇなこの狼。
"前もそうだった"
コイツはアタシを"勇者"と認識してる。
そして多分違う...恐らく"前"の勇者と会ってる。
何があったかは知らんが、あまり良いことは無かったと。
有無を言わさず会話を"五月蝿い"か"黙れ"で遮って来る位だし...。
何かあった時に"仕方がない犠牲だ。死ね"って言ってくるタイプだコイツ。
アタシはこれからどうなるんだか。
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