ここが乙女ゲームの世界!?〜弍〜
開いて下さりありがとうございます!
立ってる……それよりも私、1人で息できてる……
「ルハ!凄いわ!私、私!」
「……?」
より一層不思議そうにシュネを見つめるルハ。
そうか……シュネは嫌でも風邪をひかない健康体……そうか!そうだよね!
「ルハ!私、やりたい事があるの!」
「……これがやりたい事ですか?」
半ば呆れるルハを他所に、シュネは動きやすい服を着衣し裏庭へ立っていた。
退院したらやりたかった事その1……外で思いっきり走り回り遊ぶ!
「分かってないわね!……そうあれ、あれよ……体力作りよ!」
「は、はぁ。」
ついには頭までも抱え始めたルハを見ないふりをして、学校のグラウンド程の裏庭を走り始めた。
走り始めたのはいいものの、シュネの体力では一周するのもギリギリで、一周し終えるとその場に倒れ込んだ。
息は荒れるけど、肺が痛くない……シュネの健康体最っ高!
「大丈夫ですか?」
「だい……じょぶ……」
シュネは全身に汗を流しながら中庭に寝転んでいた。
ぐったりとするシュネにルハは白いタオルを渡すと、レジャーシートの上にティーセットの準備をしているようだ。
「私はとても嬉しいです。こうして再びシュネお嬢様が外に出てくれることに。」
いつも通り、ルハの声や表情は淡白だったが、いつもよりもほんの少し浮き足立っているようだった。
原作のシュネは父親や他のメイド達の対応、母親の死により社交界のデビュー年齢である16歳になるまで屋敷の中で引きこもりの生活をしていた。
「ありがとう、ルハ!私も生きてるって感じがしてとても嬉しい!」
「それと……シュネお嬢様は明るくなられましたね。」
確かシュネは滅多に笑う事も無かったんだっけ……
シュネは苦笑いをうかべ、荒れる息を落ち着かせるとルハの用意したティーカップに手をつけた。
「元気になられたのでしたら魔法の発現テストを行いませんか?」
救国のセイブは魔法を扱える世界だ。
大抵は5歳前後で魔法は発現し、何属性なのかの診断をしていく。
母親を亡くしたショックによる精神的苦痛から魔法が発現せず、そのまま発現テストを受けないまま、魔法の発現を確認するのは学園に通う直前なのだ。
土、水、草、風、炎、雷、光、闇……7種類に魔法は別れ、後ろに行くにつれ魔法の強度は高くなる。
大抵の貴族は土魔法の者はおらず、最低が水魔法。
光は聖女の力と言われ、このゲームの主人公であるリナが持っている魔法なのだが、問題は闇魔法だ。
闇魔法は大昔、禁忌魔法である、精神的魔法攻撃(外面を傷つける以外の攻撃をし、昏睡状態にする……など)をしたという言い伝えのせいで、闇魔法の者は不吉だと嫌われる。
大昔にもあった双子は不吉!というものと同じようなものだ。
でも幸いなことに、このゲームにはそんな魔法を使う人はいな……いや、いる。
私が死ぬ3日前位にお父さんが買ってきた攻略本に、隠しキャラがいたはず……まだ読みこんで無かったけど、確か最後の攻略キャラにそんな人が居たはず。
あれは誰だったっけ?
「シュネお嬢様!」
ボケっとしていたようで、ルハの声で意識を戻るとルハはあからさまに心配げに眉を下げていた。
「やはり急に外へ出たのが行けなかったのです……早く室内へ行きましょう。」
「ちょっと無理しすぎちゃったかな……うん、行こうか。」
隠しキャラを思い出していたなんて口が裂けても言えないわね……
「あ!やっと見つけました!」
あといっぱいの紅茶を飲んでから戻ろうか……そんな有意義な時間は無いらしく、メイドは息を切らしながらシュネたちの前に現れた。
「め、面会の……時間が早まりまし……たので知らせに来ました……」
面会?
まだまだ続きますので暫しお付き合い下さい。
有難いコメント待ってます。