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ここが乙女ゲームの世界!?〜壱〜

開いて下さりありがとうございます!

最後までお付き合い下さい

機械越しでは無い空気はどれ程に美味しいのだろうか。


息が切れるまで走れるというのはどれ程に気持ちいいのだろうか。


お腹いっぱいまで食べれる幸せはどれ程なのだろうか。


そう考えない日は無かった。


5歳で肺の病気にかかり12年……私の生活はずっとベットの上。


微かに聞こえる子供のはしゃぐ声が羨ましかった。


唯一の楽しみはお父さんが間違えて買ってきた乙女ゲーム”救国のセイブ”


本当はRPGが欲しかったけど、1回遊んで終わりのゲームは何回もやるには飽きてしまう。


その点からしたら、4人もの攻略キャラに何個もあるエンディングは最適だった。


しかしそれも10年の月日があればセリフとまではいかずとも、ルートは完全に覚えてしまうまでで。


「ケホ……ケホ……」


その日はやけに咳こみ、胸が苦しかった。


あと何年続くのだろう……そう考えた刹那ーーー。


今までにない程に咳が止まらず、胸が握りつぶされているかのように痛く苦しくたまらなかった。


看護婦さんが慌てた顔で先生を呼びに行く。


しかし急に意識が遠のき、病気になる以前のように体は軽く楽だ。


このまま回復するのかな?……そう思いながら、私は眠るかのように瞳を閉じた。




「……ネ……さ……シュ……さま……」


なにようるさいな。


「シュネお嬢様!」


外国人の人でも入院してきたのかな?


それにしても病人が居るのに声を張るなんて、お母さんか誰か?


「シュネお嬢様……前日に申されました時間になりました。」


体が揺らされる……って人違いでもしているのかしら。


起き上がることは出来ないし、目を開ければ気が付くでしょ。


「人違いでは……」


あれ?話しても苦しくない……体も重たくないし、機械音だってしない。


もしかしてあの咳き込みで手術して、体調が良くなったとか!?


恐る恐る起き上がると、やけに体は軽く、視界は鮮明だった。


その事にテンションを上げるが、目の前に広がっていた世界に私は目を丸くするのだった。


見慣れない豪華な置物にクローゼットまでも、よくよく考えてみればこの寝ている布団ですら触り心地のいい見るからに高価なものだ。


そして極み付けは下を見たと同時に降りてきた、長く柔らかい金色の髪。


元々は純日本人らしい真っ黒な髪だったはず……まさか三途の川を渡りかけたから髪色まで変わったとか?


「シュネお嬢様?朝でございます。」


「シュネ……?」


この人だってメイド服を着てるし、名前だって……この名前って気に入ってた乙女ゲームのキャラみたい。


……なんて、まさか……ね?


「ねぇ、私の名前なんて言うの?」


メイドらしき人は首を傾げ、何を今更とでも言いたげな目で口を開いた。


「シュネ・ラミトネス公爵令嬢様です。」


シュネ・ラミトネス!?


「鏡を貰える?」


「は、はぁ……?」


メイドらしき人から鏡を受け取ると、まじまじと自分の顔を見つめた。


金髪のふわふわとした髪はお人形みたいで、尚且つ瞳は海のように綺麗で青く透き通っている。


まるでプレイしていた乙女ゲーム「救国のセイブ」のライバルキャラ……というよりもゲームきってのいじめ役である悪役令嬢みたい。


まさか……ね?


調べなくちゃ!




メイドから持ってこさせた本を手当たり次第に読んでみて、ようやく理解した……させられた。


ここは生前にプレイしていた乙女ゲーム「救国のセイブ」の中なのだ。


救国のセイブ(きゅうこくのせいぶ)


この世界は魔法の使える世界で、伯爵の隠し子だった平民上がりの少女リナを主人公に物語は進んでいく。


リナは16歳で貴族となり、王都魔法学校へ入学させられる。


そこで4人の攻略対象と恋愛していくわけだが、物語の壁はいつも存在するもので……4人の攻略キャラの全てに何かと縁のあるシュネ・ラミトネスがそのライバルキャラだ。


ライバルキャラと言えば聞こえはいいが、リナをいじめ抜くその姿は容姿端麗な悪魔の悪役令嬢。


そんなシュネの末路は死or死……犯罪まがいな事をした悪魔の清々しい終わり方だ。


そして困難を共に乗り越えたリナと攻略キャラ達は永遠に結ばれる。


あぁなんていい物語なのかしら!


……そう大声で言えるのは、私がその悪魔な悪役令嬢シュネ・ラミトネスに転生していなければの話なわけで。


「私……あの時に死んじゃったんだ……」


でもめげてなんていられない!


幸いなことにシュネはまだ12歳!


リナを虐めず、そして関わらなければ何ともないわ!


「……と意気込んでいたのはいいのだけれど。」


なんせ前世では寝たきりだったせいで、正直起き上がるのが怖い。


それにシュネの過去なだけにこの部屋から出るのは中々のストレスだ。


シュネの生みの親であるキミットはシュネが3つの時に亡くなり、父親であるベルク公爵はキミットの間に出来た別れを埋めるかのように色々な女の人と婚約を結んだ。


そして血の繋がらないシュネに対しては親という愛情を与えない義母達。


シュネは幼い頃からずっと腫れ物に触れるかのように育てられることとなる。


それはベルク公爵にも及び、内心はずっと泣いていたことだろう。


新しくくる母親達は長くは持たず、転機となるのはベルク公爵が4度目に婚約を結んだマリーとの出会い。


もう既に心は閉じきっているシュネは、マリーの子供であるカエルムに陰ながら虐め続ける。


そしてカエルムは人を信用しない、冷徹な勉学馬鹿へと成長することとなる。


そんな彼は言わずもがな、救国のセイブの攻略キャラの1人だ。


「カエルムには自殺に追い込むようにしてシュネは死ぬことになるんだっけ……」


さすがは公式も認める勉強馬鹿とでも言うところだろう。


あれーー?カエルムがラミトラス家に来るのって……


「シュネお嬢様。失礼致します。」


考えがまとまらないうちにメイドであるルハが戸を叩いた。


ルハはシュネに1番近いメイドの1人で、ルハだけは何かとシュネに親しくしてくれている。


「流石に歩かないと歩き方を忘れてしまいますよ?」


「私……1人でも歩いていいの?」


ルハは首を傾げながら、それでないと困りますと、口を開いた。


シュネは大きく唾を飲み、恐る恐るベットから床へ足を出す。


そして両足を床へつけると、ドクンドクンと波立つ心臓を抑えながら、勢いよく体重を足に乗せた。


大丈夫かな?苦しくならないかな?


そんな心配とは裏腹に、おもむろに開けるシュネの目の先には座っている時とは違う高い世界が広がっていた。

まだまだ続く予定ですので暫しお付き合い下さい!


有難いコメント待ってます。

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まだまだ続きますので暫しお付き合い下さい! 有難いコメントや評価お待ちしております。
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