花美園
さやか風は淡くなぎを思わせる。
その見渡す限りの花畑には生命があふれていて、瑞々しい。
その源たる水も透っていて、こんこんと湧き出ている。
草陰も花影も、楽しそうに揺れている。
陽だまりは薄陰を許し、木漏れ日は生まれその喜びに踊っているのだろう。
これ以上、何が必要であろうかと思うに、
これ以上の状態を望み、続けるための条件を満たしたではないかと気づいている。
惹かれあい、求めあう。
これ以上ではなく、それ以上なのかもしれない。
安穏としたその情景に、見合う歌を我は知っているのだろうか?
何者かが幼少の折り夢に見た、天使のような女たち。
その聞いたかもしれない可憐な歌声。
弓矢を選ぶわけがないその天使のような女たちが、
もしかしたら靴をはいていたら、
そんなはずはない、と思わず声を出すかもしれないその光景に、
そうでなければ完璧や完全ではないだろう、と言う意味合いで、
自分がいたような気がする。
その幻の女たちがもし靴をはいているのであるなら、
見えている通り服を着ていてよかったと
本気で思った私は、
まだ少しだけ、
世界を続けるために存続していいと
自分で自分に何故かそれを許した。