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ハンドルネーム「MOUSE」


 鏡に映ったのはすっぴんにヘアバンドをしている焦げ茶色の髪の女。


 顔を洗って首に巻いたタオルで顔を拭いてる時に、仕掛け鏡を開ける。


 化粧を終えて唇をはんでいる頃、閉じた鏡に映っているのは外用の「私」。


 私の名前はミク。


 今日は親友のサムと約束があるの。


 

「ミーク、ミッキー!」


 待ち合わせ場所に少し早めに到着しようとしていた私に声をかけたのは、


 道路の向こう側にいる親友、サム。


 サムはモデル級に美人で可愛いものが大好き。


 今日も素敵なワンピースを着こなして、陽気に手をふって近づいて来る。


 モダンな車が彼女をよけて少しぶつかりあったりしてるけど、


 彼女の可愛い成分が、それを気づかせてないみたい。


 そんな状態にもういい加減、慣れてきた。


 コテで巻いた金髪ロングな髪の毛に、まぶしい笑顔。


 運転手たちも、その笑顔のまぶしさに目をくらませたんだと思って、会話する。


「ちょーど~」


「時間余ったね、コーヒーでも飲みに行く?」


「近くにあったっけ?」


「そう言えば改装するとか言ってたなぁ」


「ねぇねぇ。質問」


「ん?」


「異常、って何?」


「普通じゃないこと」


「なんだ、まぁいいや」


 スマホで確認を取っている私に、サムが空が綺麗だよ、と空に両手を広げた。






 ハンドルネームは「MOUSE」・・・ニックネームがミッキーだから。


 最近気になっているハンドルネームがネット内にいるけど、


 マイナーな私がからんでいいのか閲覧中。


 そんな中届いた、一通の宛名間違いメッセージ。


 曲が入っているから、仕事関係かも、って思った。


 相手を間違えたことを報せてあげると、お礼をしたいと言われた。


 少し怖いのでサムに相談したら、三人で食事をしよう、ということになった。


 きっとサムに夢中になるんでしょうね、と思いながら化粧をする。


 何かお礼をしたいとのこと、花束が欲しい、と言ってみた。



 待ち合わせ場所で、事故が起きたと騒ぎがにぎわっている。


 真紅の薔薇の花束は少し散っていて、そこに美青年が倒れている。


 まさかと思って人波をかきわけ、現場に行ってみる。


 道路だし車は側で止まっているいるし、衝突事故なのかと思った。


 だが傷跡なども特に見当たらない。


「君、大丈夫?」


「猫・・・」


「猫?」


「ネズミへの花束が・・・」


「ん?」


「ひかれなくてよかった・・・」


 周りのひとから聞いてみると、ひかれそうになった猫を彼が抱き上げた。


 そして道路上、正当に走っている車が止まってくれたが、うしろと少し衝突した。


 ただその情景にびっくりして、発作を起こしたとのことだった。


 咄嗟に花束を投げ出して助けに入ったので、花びらが散っていたようだ。


 救急車が来て、道の端で処置が行われているのに付き添った。






「知り合いなの?」


「もしかしたら、待ち合わせの相手かも・・・違ったら、どうしよう?」


「どういう意味?」


「花束持っていたしなぁ」


「マウス?」と彼。


「幻覚でも見えているのか?」と救急隊。


「そうよ、私、マウス」


「話を合わせてくれてるんだね、ありがとう」と、もうひとりの救急隊。


「マウス・・・」


「人工呼吸のことじゃないのか?」


「かもしれない・・・」


「だったら、彼女の唇がいい・・・」


「マウス・トゥ・マウス??嫌よっ。プールでおぼれた時からキスが苦手なのっ」


「どうせなら、君がいい・・・」


「人工呼吸器、あるから」と救急隊員。





 こうして私と彼の、恋愛は始まった。


 ちなみにあの有名なネズミ御殿で、結婚式をあげることになったわ。


 サムが、アイスクリームブーケを思いついたけど、ダメなんだって。



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