シトラスの宝石メロン
室内に続くポストに、一封の封筒が届いた。
その宛先は9歳になるシトラスと言う男児にだった。
差出人は仲介を経て、界隈で有名なお金持ちの当主からだった。
手紙の内容は「遺産相続権」について、そして「当選」したというものだった。
身寄りのいなかったその富豪は、メロン畑を持っている。
そしてシトラスを含め複数人が、遺産相続権に当選したらしい。
つまり、何か素敵なものがもらえるんだろう。
シトラスは一張羅を着て迎えの馬車で邸に向かい、
到着すると周りには大人しかいないので
つまらないな、と思いながらも豪華な邸に魅了されていました。
ピカピカな床に、自分が映っているなんて驚きです。
当選者たちがひとつの部屋に集まり、「くじ」を引く。
そしてその「くじ」の内容が相続する遺産だと言われ、
次々に「くじ」は引かれて、最後に残ったものがシトラスのものでした。
シトラスが引いた「紙くじ」の文字は、「宝石メロン」。
「ほうほう、新種なのかな?」
「美味しいだろうか?」
当選者たちの会話に、弁護士が「美味しい話です」とぼやく。
家の者に案内された金庫の中に、それはあると言う。
「金庫に入れるものなの?」と不思議がるシトラス。
そして出てきたのは、メロンほどの大きさのある丸いペリドットという宝石。
「なんだ、メロンみたいな宝石?宝石メロン?面白いっ」
シトラスは大金持ちになり、年をとりそして遺書を残そうと思いました。
いつか私もこんな遺産相続をしてみたかったんだ、と手紙の書き始めにはあったそうな。