アーロ
夜空の満天の星、それに手を伸ばした少年がいた。
服はボロボロ、髪はぼさぼさ。
やせぎみの身体をしているけれど、なかなか有望な容姿。
煙突掃除をしている彼は、名前をアーロと言う。
アーロは毎日家族のために、せっせと煙突掃除。
煙突掃除は重労働です。
屋根から突き出た大きな筒に身体を入れて、ススをただただ磨いてく。
ロープがない日は、足の力だけで身体を支えて掃除です。
家族のためならきっと頑張れるさ、と、屋根の上で昼食をしていたアーロ。
昼食をすませて仕事に戻り料金をもらうと、気まぐれに屋根の上に板を渡して移動、
休んでいた猫とすれ違い、走るアーロにびっくりした鳩が空に飛びます。
遠目から見ていて、まさか、と思った煙突にでっぷりお腹をつっかえさせた男。
朱い服を着ていて、布服の荷物を抱えています。
近所でも有名な『自分のことをサンタクロースだと思い込んでいるひと』です。
彼を助けてあげると、いいこにはプレゼントをあげよう、と言われます。
そして差し出されたのは、りんご酒とひとかかえる箱にチキンナゲット。
アーロは大喜びして、家に帰りました。
その様子を見ていたサンタさんになりたい男は、携帯電話で電話をかけます。
「あ。ダディ?僕、環境を変えてみようと思ったけど、ここから抜け出してみるよ」
自転車発電を試みた元やるせない男達の闊歩が、アスファルトの熱を感じます。
サンタクロースになりたかった男は今まさに、空を飛ぼうとしています。
トナカイのソリで?いいえ。スペースシャトルで。
少し動力が足りないらしい現場へと、総勢四千人の自転車発電男達は向かうのでした。
ああ、そうそう。
この試みが認められて、
のちに、エアロバイクに発電機能がついたことは、有名ですよね。
アーロという少年が、大出世したことも。
まさか煙突掃除の少年が、成長して大統領になるなんてまるで夢みたいなお話。




