表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/74

アリムの星配り




 楽樹:らくぎ/愛と夢と希望が星型として成る不思議な樹のこと。


        その樹は番人によって管理され、上層階級が牛耳っている。



 * * *



 アリムは現在十二歳の元気な美少女、天に選ばれた怪盗だ。


 アリムは愛と夢と希望を摘んで星袋に入れると、夜の間にくばることが使命。


 人々はその星のおかげで、なんとか生きていた。



 ある日のこと、アリムが星をつんでいると、そこに少年が現れた。


 ハネハーネブーツをはいていて空中を魔法で飛んでいるアリム。


 その様子に驚いてしばらく動けない彼の視線を感じて、振り向くアリム。


 驚いて思わず重くなった星袋を落としてしまったアリム。


 中身が散らばって、そして意外にも少年は「降りておいでよ」と言って


 星を拾い始めた。



 おそるおそる近づくと、そこにいた少年は昨日転校してきた男子。


 聞くに、ここに引き取られた後継ぎらしい。


 人々に愛と夢と希望を届けたいの、と言うと、分かった、と少年は言った。


 少年の名前は「楽樹詞久:らくぎしく」と言うらしい。


 近くでまじまじと見ると、美少年だ。



 シクは「手伝いたい」と言って、星袋とアリムを無事に帰してくれた。


 日は昇り学校に行くと、そこにはシクがいて目が合うとほほえまれた。


 中等部の女子達が、私にほほえんだのよ、ときゃーきゃー言っている。



 帰宅時間になると、シクが一緒に帰ろう?と声をかけてくれた。


 偶然にも、同じ方向だと言うのでアリムははじめて男の子と帰った。


 アリムは可愛い姿をしているので、むしろ男子に送ってもらうのは遠慮していた。


 近くの公園のベンチに座るふたり。


 シクは「聞きたいことがある」と言った。


「なんだろう?」とアリムが固い声で知らんふりをしようとした。


「知らんふりするなっ。お前やっぱり、自分の視力か命を代価にして星をつんでるなっ」


「お前って、なによっ?」


「今、そんな話じゃないっ」


「みんなには愛と夢と希望が必要なのよっ」


「お前にも必要だろうがっ」


「知らないっ」


 走って帰ったアリムに唖然とするシク。



 ―――・・・その日の晩も怪盗としてやってきたアリムに、シクが言った。


「僕は楽樹を司る家に生まれた者として、


 星を盗んだものが正義であるなら、その呪いを消せる・・・


 君はまだ生きるべきだ・・・」


「なんで君、泣きそうなの・・・私のこと「君」って言ってるし・・・」


「俺・・・お前のことが好きになったから、転校して来たんだよっ」


「え?」


「楽樹の星は、低層階から搾取した愛と夢と希望でできてる。


 先祖が盗んで魔法使いに頼んで星にして


 少しづ摘んでムゲにするのを楽しんでいたらしいが、今は当主だけだ。


 俺もその一族、楽樹の家に後継ぎになったら運命の相手とは結婚できない・・・」


「じゃあ、なんのために楽樹はあるの?」


「分からない・・・一族の歴史、俺そんなに詳しくない。


 愛と夢と希望が実る寿の樹の番人は、毎日お祈りしなきゃいけないんだ。


 それを先祖はめんどうくさがったとか血で知っている。


 それから、呪いの解き方を生まれた時から知っていて、


 一族に託されたんだ・・・


 もう天に事情を教えてもらえないから、事情を知らない者たちに」


「どうやって呪いは解けるの?」


「運命の相手と、命を代価に井の字型を腕で組んで、楽樹にあやまる。


 冠婚葬祭がなくなってきてる原因だから、天の機嫌は悪い・・・肌で分かる・・・」


「君の運命の相手って、誰なの?」


「きっと、君だ」


「え?」


「きっと、だ」


「分かった。やってみよう」



「いいのか?」


「うん」



 井の字型を組んだふたりが、淡い光に包まれだした。


 そしてふたりが、「愛と夢と希望を人々に戻して下さい」と言うと、光柱が立った。



 命をとるまではしないが、ふたりの記憶はなくなる。


 それが代価だ。



 その物質の声なのか分からない声は、街中の皆が鐘の音のように聞こえたという。



 抱きしめあって倒れているふたりが発見されたのは翌日の朝。


 そしてふたりは、今までの記憶を失くしていた。


 医者や警察は演技を疑ったが、どうも検査しても尋問しても本当に記憶がない。


 病院内で再会したふたりは、その瞬間はっとして立ち止まった。


 ぱちくりとしているアリムに近づいて来るシク。


 シクはアリムの手をにぎって言った。


「僕、ずっと前から君が好きだ。きっと生まれて来る前から」


「私も、君のことが前から好きな気がする」



 なにがあったのかは思い出せないふたりだが、やがてふたりは成長し結婚した。


 可愛い子供らもさずかり、呪いが解けた楽樹の番人をつぐことになりそうだ。


 楽樹の家はそう至るふたりの善行に、


『幸福の家』と言う屋号で呼ばれ人々に守られたという。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ