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水の乙女

春頃、池には花がいくつも咲いている。



百合の花冠をした美しい女が裸体で池につかり、胸上が見える。



その両手で水をすくいあげ、わずか雫が水面にこぼれた。



女が両手を天に向かって広げると、水飛沫と共に、澄んだ水でできた魚が生まれ空に泳いでいく。



なるほど、空魚はこんな風に生まれるのか、と思った。



巫女として仕事を終えたその女は姫になり、やがて運命の相手のもとへ嫁いでいくのだろう。



天啓があった、と姫が言った。



姫が言った場所に、視察に行く。



どうやら姫の運命の相手は、マジシャンらしい。ゴシック調のスーツに身をつつみ、シルクハットの中から、白い鳩とウサギと蝶々を出した。



トランプカードを全部同じ柄に変え、土の入った鉢を示すと種をまき、胸ポケットから出した栓をした試験管の中の水をやると、あれよあれよと言う間に、種は芽吹いた。



マッチを擦って、ふっと息を吹きかけたその美男は、鳩やウサギと蝶々と共に、姿を消した。



同時刻、水の乙女と呼ばれた姫の姿も消えた。その姫がいた場所に、アカンサスバの豪奢なふちがらの紙が残されていた。



「コングラッチレイション ミイ」



書き置きには、アルファベットの筆記体、金色文字でそう記してあった。



マジシャンを名乗っていた姫の運命の男が魔法使いであることは、表沙汰今でも秘密だ。





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