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さくらおうぎ

「この扇の桜は、不思議な力を持っている絵師が描いたものだ。


 俺が死んだ時、この花は散る」


 そう言って扇を幼女に託して戦いに身を投じた男の葬式。


 扇を渡された許嫁はまだ子供であって、


 なぜに花が散らないのだろう、とぼやきますと、


 それを聞いた参列者にげんこつを見舞われ、


 すっかりそのことについて忘れてしまったのでした。



 そしてその女の子は成長し大人になって、


 恋愛をしてその相手と結婚をしました。



 それから年をさらに取り、おばあさんになった頃。



「あの時、愛していると言わなかったな、すまない・・・


 扇のことを忘れているようなので、言い出せなかったんだ・・・


 俺は戦いのさなか、死んだことになっていた・・・黙っていてすまない」



 そう言って天国へと旅立った旦那様の言葉に、


 久しぶりにしまっておいた扇を思い出し、扇を開いてみました。


 すると満開だったはずの扇の桜の花は散って、そこらに花筵になりました。



「あの時に扇を託したのは、おじいさんだったのねぇ。


 私の素敵な旦那様。


 天国は素敵な所だって聞くから、そこらで待っていてねぇ」



 おばあさんの名前は「さくら」と言って、


 それはおじいさんが付けてくれた、おじいさんからの最初の贈り物でした。


 さくらはもう死んでしまったおじいさんの手の甲に口づけを贈りましたとさ。




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