雪の華と白い月
真っ白な時の中で、雪はしんしんと降り積もる。
優しく。
「ここらへんだって?」
捜索隊が雪山に入ってから、三時間ほどが経過した。
運のいいことに雪の降り方は優しかった。
ただ三時間となると、森の中で迷ったその男が助かる見込みはむずかしかった。
捜索隊があきらめて引き返そうかと言った時、向こう側から声がした。
おーい、おーい、ここじゃ~
と、赤い長そでに手袋をした小太りな男が手を振った。
どうやら転んだ体勢のまま、動けなくなっているらしい。
「そちら、名前は~?」
「クロース、クロースじゃ~」
「今、そちらに向かうっ」
倒れたソリを数人がかりで元に戻して、クロース爺を助け起こす。
「ふぉ、ふっぉ、死ぬかと思ったわい」
「鹿はどうるすんです?逃げましたよ?」
「トナカイだろうに」
「大丈夫、トナカイやーい。助かったぞ~っ」
真っ赤な鼻のトナカイさんたちが、クロース爺の元に戻って来る。
「もうダメなのかと思って、さっき解雇したところだったんじゃ。戻って来てくれ」
うなずくトナカイたち。
「ちょっと、ちょっと、いいですか?質問いいですか?」
捜索隊のまだ若いのが、クロース爺にたずねる。
「サンタ・クロースさん?」
「そうじゃ、わしはサンタクロースじゃ。助けてくれてありがとう」
「サンタさん、って、本当にいたんだぁ」
サンタさんは嬉しそうに、ウインクをしました。
「このことは心配をかけるといけないから、秘密にしておいてくれ」




