時空流離
私が幼少の頃だが、近所に子供が少なかった。
なので庭先、ひとりで遊ぶことがあったが、とある日気まぐれに敷地から出た。
冒険だと思ってわくわくしていたが、急に不安になってうろうろ。
「危ないっ」
その大声にびっくりして立ち止まった私は、車にひかれずにすんだ。
ブレーキの故障だったらしいが、誰も巻き込まれずにすんだ。
そして「危ない」と叫んで助けてくれた青年の姿は、どこにもなかった。
そして成長した私は久しぶりに里に戻って、実家に泊まる予定を作った。
敷地から幼児が走り出し、そしてその姿に驚く。
それからその服装と近所の街並みから、なぜか事故の予感がした。
ブレーキの故障した車がクラクションを鳴らしている。
そして幼児はその音の意味に気づいていない。
私は思わず、「危ないっ」と叫んだ。
その声に驚いた幼児は足を止め、そして暴走する車と衝突をまぬがれた。
夢から覚めた自分に気づいて、昼寝をしていたのを思い出す。
叫んだ私に気づいて心配そうにしている、お腹の大きな妻。
うららかな天気の、平穏な日常の中、可愛い妻と愛しいお腹の子供。
なぜか不思議と、この夢を見ていなかったら、この幸せはなかった気がした。




