第6話 新たな決意
拙い文章ですが、よろしくお願いします!
それでは、お楽しみ下さいませ!
俺が今使用している宿屋は冒険者専用の宿屋。冒険者ギルドから西に徒歩10分ほどの距離にあり、高ランク冒険者ほど良い部屋を借りることができるという特殊な仕組みを導入している宿屋だ。
ギルド推奨の宿屋でもあり、冒険者が過ごしやすいようにさまざまな工夫を凝らされているのがその理由だ。冒険者というだけで他の宿より安く泊まることができたり、武具の整備まで請け負ってくれたりする。
この宿屋を運営するのが元Aランク冒険者の豪傑でたまに目をつけた宿泊者に勝負を挑むのはこの宿屋の恒例行事となっている。
俺の部屋は三階にある。この宿屋の最上階。そして最奥の部屋だ。最も大きな部屋であり最も綺麗な部屋であるのは俺がこの都市のSランク冒険者だから、という理由に尽きる。
一人が使うにしては広い部屋も数人入れば幾分かマシに見える。と言っても本や酒瓶や武具やらで散らかっているせいもあるかもしれないが。
一人暮らしの男の俺にとってはあまり気にならない散らかり具合なのだが、高潔な【重騎士】様はひどく気になるようで、文句を垂れながらテキパキと片付ける。
「これだからズボラな男は好かん」
「……へいへい」
暫く使ってない直剣数本がそこそこの速さで飛んでくる。床に置きっぱなしにしてたのをハーヴィーが片付けろと言わんばかりに投げつけてきたのだ。一本2kg超えの剣を片手で数メール軽く投げれる辺り彼女の腕力の強さが伺える。
俺は飛んできた剣をそのまま異空間収納にしまう。
「……ごめん。迷惑かけて。お風呂ありがと」
そんな中、もう一人のパーティメンバーが申し訳なさそうな顔で風呂場から出てきた。
少しピンクがかった赤色の瞳はくりっと大きく、普段はクルクルと毛先がはねている赤い髪は濡れたことで一時的にストレートになっている。
お風呂からあがったばかりで、頬が紅色に染まっているせいで妙に色っぽくなっている。
貴重なお風呂を使えるのもSランク冒険者のこの宿屋における特権だ。風呂を使うのは大体上位貴族ぐらいなので、どれだけ俺が良い部屋に住んでいるかが分かる。
「……落ち着いたか?メリル」
「……う、うん。まあ?ね」
普段はとんがり帽子で隠れている赤い髪をクルクルと指で巻きながら恥ずかしそうな態度を見せる。
「そっか、じゃあ何があったか教えてくれ」
二人をわざわざ俺のプライベートルームに招待したのは、他でもない。今日冒険者ギルドで起きた一件を話し合うためだ。
「分かってるわよ、リーダー」
いつものツンとした態度で髪を風魔法で乾かしながら俺のベットに腰掛ける。
何気に出力調整が難しい風魔法をいとも容易く扱っているのは流石うちの魔導士だと感心してしまう。
「……二人が来る前。多分10分前くらい。二人を探しにギルドに行ったのよ。誰かが二人がいるのを見たって言ってたから」
水色のネグリジェから伸びる白い美脚を転がっている酒瓶の上に乗せる。
顔を下げたままメリルは話を続ける。
「いつもみたいにサヤに話しかけたの。最初は良かったんだけど、そう言えばカイスはどうしてるのか……って話になって」
受付嬢のサヤはメリル同様特にカイスを気にかけていた。俺達の冒険についていけるよう助言したり、相談に乗っていたりした。思い返せば一番カイスがサヤと仲が良かったかもしれない。そう、カイスが姿を見せなければどうしたのかと気にするほどに。
「それで本当のことを言って喧嘩になったのか」
「……うん」
カイスを応援していたサヤが怒るのも当然かもしれない。俺たちはどんな理由であれ、彼を一方的に追放したのだ。そこに間違いはない。カイスを罵倒し、傷つけたことは俺たちが失望される理由としては充分だ。
「メリルが落ち込むことは無いさ。みんなで決めたことだ」
ハーヴィーは淹れたての紅茶を落ち込むメリルに差し出す。メリルが大好きなハチミツ入りの甘い紅茶だ。
「ありがとう、ハーヴィー」
今日初めてメリルが笑う。無理やりな作り笑顔だが、落ち込んだ顔より何倍もマシだ。
「それに、最終的にカイスを追放することを決定したのは俺だ。責められるならリーダーである俺だ」
「そ!そんなことない!」
メリルは首をぶんぶんと横に振る。乾き切ってない髪の毛から水滴が飛び散る。
「私がもっと考えて行動するべきだったのよ。サヤなら分かってくれるって思って……」
「正直者はバカを見る……か」
俺たちの受付を長年担当してくれているサヤ。彼女なら事情を察してくれると思ってしまっても仕方がない。それにたとえ嘘をついたとしてもすぐに俺たちがカイスを追放したのはバレていただろう。早いか遅いかの違いだ。
俺は立ち上がって二人に向き直る。
「二人とも。聞いてくれ。これから何が起きようと全責任は俺が取る。だからまた俺と冒険を続けてくれないか」
俺は目の前に握り拳を突き出す。
俺たちの夢はこんなところで終われない。これまで何度も困難を乗り越えてきたんだ。逆境なんて超えてみせる。
「ふっ、何を言っている」
「そんなの決まってるでしょ」
メリルとハーヴィーも同様に拳を突き出す。
三つの固い拳が同時にぶつかる。
「「「自由の剣の名の元に」」」
俺たちの新たな冒険が始まる。
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