第12話 濡れ衣
拙い文章ですが、よろしくお願いします!
それでは、お楽しみ下さいませ!
「……早く良くなれよ」
ベッドに横になるメリルの包帯を取り替えながら、俺は呟く。クエストを失敗してかれこれもう4日。新たなクエストの受注はできていない。その理由は、ギルドがクエストを発注してくれないこと。そしてうちの自慢の魔法師ーーメリルが目を覚さないからである。
「……戻ったぞ」
重騎士ーーハーヴィが紙袋を両脇に抱えて姿を現す。その表情は曇っている。
「メリルはまだ寝てるよ。今は熱も出てない」
メリルの体調は回復していっている。しかし、精神的疲労が大きいのか、中々ベッドから起き上がることができていない。彼女は昔から一度体調崩すと長引くタイプなのだ。その度に俺とメリルが看病していた。
「そうか、なら良かった。一応ポーションは買ってきたのだが…」
紙袋からは食料やポーションが取り出される。ハーヴィは大きなため息をついた。
「どうした?」
「ポーションを買う時に、いつもの店員に言われたのだ。あんたらに渡すなんてごめんだって」
どうやら噂は一般市民にまで広まっているらしい。そのせいで俺たちは今や腫れ物扱い。この前まで俺達を英雄だとか言ってたくせに。急に手のひらを返してきやがった。
「……俺らが何したっていうのかね〜。ごめんな、ハーヴィ」
「リーダーが謝ることじゃないだろ。全ては三人で決めて、三人でしたことだ。それに我々は何も間違ったことはしていない」
栄光を築き上げるのは一生。崩れるのは一瞬。冒険者の格言の一つだ。高ランクの冒険者ほど一度の失敗に足を引っ張られる。そもそも冒険者稼業は足の引っ張り合いだしな。
「……すまん。一度外の空気を吸ってくる」
「あぁ、メリルは任せておけ」
宿屋を出て、大きく息を吸う。疲れが溜まっているみたいだ。前回のクエスト。あれは異常だった。なんとか勝てたが、まさかメリルがやられてしまうとは。
「……そこのお兄さん!助けて!」
突然、路地裏から悲鳴が聞こえる。女性の声だ。俺を呼んでいる。
路地裏に入ると、そこには地面に倒れる女性が。服はビリビリに破られている。
「大丈夫か!今助けるから──」
女性は一瞬、ニヤリと笑う。
「誰か!この人に犯される!助けてっ!!!」
俺が彼女に近づいた途端、彼女は意味不明なことを叫び出す。一体どういうことだ。彼女は誰かに襲われていたのでは?
彼女が叫ぶと、鎧を着た兵士たちが数十人がかりで俺を囲いこむ。あの銀の鎧は、王国騎士団のもの。一体どういうことだ。
「これはこれはいけませんなぁ。まさかSランク冒険者が強姦を働くなんて」
ニヤニヤと騎士の一人が近づいてくる。俺はようやく気づいた。
「……ハメられたか」
こいつらは俺を犯罪者に仕立て上げるつもりだ。当然強姦され捕まれば、俺の冒険者資格は剥奪される。パーティも解散。こいつらの狙いはきっと俺の冒険者資格を奪うことだろう。
完全な濡れ衣だ。しかし、被害者もグルである場合冤罪を立証するのは難しい。
まさか騎士団まで俺達の敵になっているのは。相当俺達のことが嫌いらしい。
なんて汚いやり口だろうか。騎士団は犯罪者を取り締まる権力を持っている。俺を牢屋にぶち込むことは簡単だろう。証言者もいない。完全にやられた。女性が叫んでからすぐに騎士団が現れたということは俺をずっと待ち伏せしていたということだ。こいつら、どうしても俺を犯罪者に仕立て上げたいのだろう。
捕まれば俺達はもうSランク冒険者じゃいられなくなるだろう。
「……どうするか」
捕まれば、終わり。かといって抵抗するのも罪名が増えるだけ。ならば──逃げる一択!
俺は両足に魔力を込める。前と後ろは塞がれている。強引に突破すれば兵士に危害を加えてしまう。ならば、上へ!
「ちっ!逃すな!」
抜刀した兵士が俺に向かって走ってくる。だが、遅い。俺は真上に飛び上がり、建物の上へ。
「追え!絶対逃すな!」
どうやら空を飛ぶことができる魔法師はいないみたいだ。だが、いずれ追い付かれるだろう。きっと俺の行き先はバレている。
「宿屋に向かうつもりだ!いそげ!」
「絶対逃すな!」
俺は魔力を放出して、一瞬で宿屋まで向かう。この事態を一刻も早くハーヴィとメリルに伝えなくては。
屋根伝いに高速で移動する。追手が俺に追いつくよりも早く俺は宿屋にたどり着く。
窓を蹴り破り、自分の部屋に転がり込む。
「アモン!?いきなりどうしたんだ!なんでお前が窓から──」
「騎士団にハメられた!説明は後だ!すぐに逃げるぞ!」
ハーヴィは状況をすぐに察して素早く持てるだけの荷物を持つ。こういう時の状況判断の素早さは流石Sランク冒険者だ。
俺は自分の武器だけを背中に担ぐと同時にベッドの上のメリルを抱き上げる。
「少し我慢してくれよ、メリル」
「行くぞ!アモン!」
「分かってる!西門を目指すぞ!騎士団を巻くには街を出るしかない!」
街を出るためには騎士団が門番をしている門を潜るしかない。東西南北の門のうち一番警備が薄いのが西門なのだ。
その理由は西門を出てすぐに【精霊の森】があるからだ。精霊は魔物と真逆の存在。人間に協力し、恩恵をもたらす存在。この森には人間を襲う魔物が一切棲みついておらず、澄み切った空気と豊かな自然だけがそこにあるのだ。
「分かった!」
俺達は騎士団の手から逃れるために宿屋から飛び出した。
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