第10話 悪意の交差
拙い文章ですが、よろしくお願いします!
それでは、お楽しみ下さいませ!
Sランク冒険者とは全冒険者の目標であり、憧れの存在である。Sランク冒険者は冒険者にとっての最高の栄誉であり、都市に一つしか許されないSランク冒険者パーティはさまざまな場面で優遇される。それは、俗に『Sランク特権』と呼ばれる。
第一に『報酬の2割り増し』だ。常に命の危険と隣り合わせの冒険者はクエストを完遂することで報酬をもらう。クエストの内容にもよるが、例えばダンジョン攻略における魔石の採集クエストの場合、相場の魔石の値段の2割増しでギルドに買い取ってもらえるのだ。
第二に『装備や道具の優先調達』だ。当たり前だが、冒険者には戦う武器や守る防具。体力や魔力を回復させるポーションが必要だ。それらを充足させてクエストに挑むのとそうでないとではクエストの成功率は天と地ほどの差が生まれる。しかし、市場に必ずしも十分な量の装備や道具が流通しているのは限らない。特にポーションは貴重で、最近では価格が昨年の倍になるくらい高騰しているほどだ。ポーションの不足は冒険者にとって命取り。だが、Sランク冒険者はその不足している装備や道具を優先的に回してもらえるのだ。
第三に『名声』だ。これは実に単純。冒険者の頂点に立つSランク冒険者はその都市の顔といっていい。彼らが強ければ強いほど都市の格も上がる。依頼によっては国から報奨金が出ることもあり、まさに華々しい日々を送ることが可能なのだ。
以上のような『Sランク特権』であるが、必ずしも良い結果を生むとは限らない。これが争いの種を生むこともあるのだ。特にSランク冒険者パーティを敵対視するAランク冒険者パーティにとっては、面白くない話も多いのだ。特権は妬みや嫉妬を生むことにつながる。そして憎悪に変わり、なんとしても頂点から引き摺り下ろそうと考えるのだ。
──時は遡り、数時間前。ギルド本部で『自由の剣』のクエスト失敗が明るみになった時、黒いローブを被った一人の男がその様子を監視していた。
「……なんてことだ。これはチャンスだぞ」
男はニヤリと笑う。
『真朱の鷲』のメンバーが『自由の剣』のクエスト失敗を責め立てている。周りの冒険者も彼らを責め立てている。まさか天下のSランク冒険者パーティのこんな惨めな姿を見ることができるなんて。彼らの権威が失墜し始めている。始まりは仲間の追放。そしてクエストの失敗。『自由の剣』を蹴り落とすには十分な条件だ。ギルド側はどう対応するのか分からないが、それでも奴らは今不利な状況に置かれている。
聞いたところ、魔法師のメリルが負傷を負ったらしい。当分クエストの受注は止まるはず。
「これは我ら『黒旗の魔法団』がSランクにあがるチャンスだ!はやく団長に報告せねば!」
三つの重なり合うドクロのエンブレムがついた外套が揺れ動いた。
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「なんと!それは真か!」
ガチャンッ!と重たそうな銀の鎧が大きな音を立てる。初老の男は思わず雄叫びをあげた。
「これはいい!実にいいぞ!」
年甲斐もなく、その男は手を叩いてはしゃぐ。男は短剣を腰から抜き、テーブル上の似顔絵をまっすぐ貫く。
王国騎士団本部会議室。そこには異様な空気が流れていた。幹部総勢十数人がニヤニヤと嫌な笑顔を浮かべる。
「あの忌々しいSランクパーティがついにしくじった!すぐに王に報告するぞ!そして奴らを見限らせるのだ!」
冒険者と王国の騎士団。両者に接点は無さそうで、実は深い関係にある。冒険者は主に魔物を相手に戦う。いわば対魔物のエキスパートだ。隣国との戦いや内乱などは騎士団の領分。しかし、戦争が起きた際に騎士団だけでは対処不可能となった時に冒険者が駆り出されることがある。国が冒険者を雇うのだ。そして最も雇われる頻度が多いのがSランク冒険者パーティだ。彼らは非常に強力な力を有ししており、騎士団よりも迅速に適切に対処することができる。そのため現国王からの信頼が厚い。特に『自由の剣』は昨年5回も招集を受け、その度に任務を完璧にこなしている。騎士団に引き入れたいと国王が発言するほどの実力を持っているのだ。
しかし、それは騎士団にとっては嬉しくない。騎士団には騎士団の誇りがある。冒険者なんぞに、という単純な嫉妬心は冷静な判断力を鈍らせていた。
「もうあんな冒険者なんぞに頼る必要はない!」
「そうだ!戦いは我ら騎士団のみで十分!」
「平民ごときに戦争は務まらん!」
『自由の剣』の悪評はどんどん広まるだろう。たとえそれが多少の嘘を含んでいたとしても。
仲間を追い出す薄情な冒険者。クエストを失敗する実力の無さ。バカな平民達を扇動すれば、ヘイトを奴らに向けることも可能だ。ギルドにも圧力をかけてしばらくの間、クエストを受注できないようにすることも可能だ。そうなれば、実績を取り戻すこともできない。冒険者の信用を失わせ、今こそ騎士団の尊厳を取り戻すのだ。
「これから面白くなるぞ〜?」
『自由の剣』の包囲網は着々と進んでいるのであった。
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