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第1話 自由の剣

新連載始めました!

元々投稿した作品をリメイクしました!

拙い文章ですが、よろしくお願いします!

それでは、お楽しみ下さいませ!


「うわぁぁぁっっ!!!」


 若い少年の情けない叫び声がダンジョン内にこだまする。白髪の少年は青ざめた表情で尻もちをついているだけで、その場から動こうとしない。いや、できないのだろう。


 先程のフロアボスの『咆哮(ハウル)』。これは一定時間強制的に敵を『待機(スタン)』状態にする。


 待機状態を解除するには仲間の魔法士に専用の回復魔法をかけてもらうか、専用のアイテムで解除するしかない。しかし、少年の装備は貧弱そのもの。アイテムどころかろくな装備をしていない。ボロボロな杖一本が彼の右手に握られているだけである。


 口をあんぐりと開けたまま指一本すら動かせず、少年はただ目の前の怪物に屈している。


『グラァァァァァァ!!!!!』


 ダンジョン第54階層フロアボス『邪竜ゴラス』は悲鳴に近い雄叫びを挙げる。身体は傷だらけであり、三本あった尻尾は既に一本にまで減っている。黒い血をどくどくと流しながらもしぶとく雄々しい翼を羽ばたかせている。


 先行している三人の冒険者は『咆哮』を受けた直後も変わらず攻撃を続けている。一人は両手剣で既に与えた傷をしぶとく追撃し、一人は魔法の詠唱を開始し、もう一人は盾をかざしている。


 一度目を合わせただけで三人は連携を取る。お互いの邪魔にならないように各々がやるべきことを最短最速でこなす。


 一糸乱れぬ連携は敵に反撃の余地を与えない。絶え間ない波状攻撃はまるで数百人の兵士による一斉攻撃のよう。しかし、実際攻撃しているのはたった二人の男女ペア。


 多彩な攻撃は無限に続く。


 身体の表面を覆う岩よりも鉄よりも硬い竜の鱗が毎秒鋭い剣によって大きく削られる。露出した皮膚にはピンポイントですぐさま魔法がつき刺さる。火の玉であったり氷の矢であったり雷であったり。


 やられてばかりではダメだとその巨体を動かして目の前の青年を攻撃しようとするも、攻撃モーションに入った瞬間に、いつの間にか現れたもう一人の冒険者が持つ大きな盾に弾かれてバランスを崩してしまう。


 身動きが取れないまま一方的な蹂躙を受ける『邪竜ゴラス』は怒りの咆哮をあげる。


 地面が揺れ、天井の一部が崩れ落ちる。ダンジョン全体が震えているのではないかと思うほどだ。


 次の瞬間。命の危険を察したのか邪竜は相対する敵を避け、天井近くまで飛び上がる。全身の鱗を逆上がらせ、四方八方に飛び散らせる。漆黒の鱗は硬い地面や天井に深く突き刺さる。


 先行している三人の冒険者はほぼ同時に異変に気づくと、両手剣を右手に持つ青年がとっさに号令をかける。


「メリル!詠唱急げ!ハーヴィー!間に入れ!」


 相対する三人の攻撃を振り解き、後方へと素早く移動した邪竜はいまだ『咆哮』で動けない状態にいる少年を狙ったのだ。


 ギロリと赤い瞳が獲物を補足する。血で赤く染まった鋭い牙が今仲間の一人の身体を貫こうとしている。


「分かってる!『鉄壁(シールド)』!」


 少年と邪竜の牙の間に間一髪盾が入った。スキルを使用して重たい一撃を弾き返す。盾に弾かれた牙はその衝撃で、折れてどこかに飛んでいく。


 全身を重たそうな鎧で包んだ栗色の髪の女性は少年を背で庇うように大きな盾をがっしりと前へと突き出す。


「大丈夫か!?」

「は!はい!ありがとうございます!」


『グラァァァッッッ!』


 再度少年を狙う邪竜だが、何度やってもその牙も爪も届かない。全て目の前の鉄壁の盾に阻まれている。


 盾はびくりともせず一歩も引かないどころか、逆に邪竜がノックバックするほどの防御力だ。


「ーーそして、地獄の炎さえ凍てつかせよ。『氷露監獄(コキュートス)!!」


 とんがり帽子から流れ落ちた赤髪を揺らしながら魔導士が超広範囲魔法を発動する。冷気がダンジョン内に広がり、一瞬にして邪竜ごと辺り一帯は完全に凍ってしまった。しかし、それでも邪竜は仕留めきてれいない。まだしぶとく息をしている。ピキピキと邪竜の全身を覆う分厚い氷が割れ始めている。


「……はぁはぁ、流石にもう無理!これで仕留めて!」


 赤髪の魔法士は地面にふらふらと倒れこむと、最後の一人に願いを託した。黒髪の青年はにやりと笑うと高く飛び上がる。そしてその白銀の両手剣をしかと握り、振りかぶる。


「任せろ!うぉぉぉぉ!!!」


 凍りついた邪竜は一時的に動けないに過ぎない。暫くすれば無理やり氷を砕き割り、また動き出すだろう。だが、ほんの数秒あれば彼には十分だった。


「「いけっ!!アモン!!」」


 白銀の雄々しい両手剣は動けずにいる邪竜の首を捉えた。アモンと呼ばれた青年は全体重をかけて一気に切り裂く。


 スパッと一瞬にして首が飛んだ。


 断面から噴水のように血が噴き出すと同時に頭の無い身体は冷たい地面に倒れ込んだ。


「……ふぅ、やっと終わったか」


 ダンジョンの人類未到達階層『第54階層』のフロアボス『邪竜ゴラス』との決戦はSランクパーティ『自由の剣』の勝利で終わった。


 後にこの戦いは大きく世間に広まり、Sランクパーティ『自由の剣』の知名度が飛躍的に広まるきっかけにもなったのだった。

ここまでご覧頂き本当にありがとうございます!

お楽しみ頂けていたら幸いです!

もし「次も見たい!」「この作品面白い!」と感じて下さったなら[高評価]と[ブックマーク]よろしくお願いします。いいねとコメントもじゃんじゃんお待ちしております!

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