死~転生
俺の名前は徒蔵健。この名前は、産まれてすぐに親がつけた。
俺は3歳の頃から小さい孤児院に居た。孤児院に居た理由は簡単だ『親が死んだ』それだけの事。
職業・無職。現在の状況・警察から逃走中。何故逃げているか?理由は簡単それは俺が『泥棒』だから。ついさっきまで、ひったくり・スリ・空き巣と3連して、自宅に帰宅しているところ、空き巣が覗かれていて通報されたってわけだ。長年やってきたけど我ながらダサい見つかり方をしたもんだ。
「ったく、しつこい奴らだ。パトまで出して来やがった。こりゃ止まったら確実にアウトだな」(パト回されてる時点で終わってるかもだけどな)
さっきからサツの奴らが何か言ってるが知ったこっちゃねえ。
(ん?急に右が明るく………っ‼)
そう思った瞬間、俺の体は勢い良く宙を舞い、後頭部から地面に突っ込んでいた。
(な…んだ、何……が、起き…………)
俺の耳が最後に捉えた声は、病院らしき場所での会話だった。
「これは…………」
「先生!」
「無理だと決まった……では…い…」
そして、すべてが暗転し、俺は、死んだ……………………
……その筈だった。
気付けば俺は、良く分らない場所に居た。真っ白で周囲には何もない空間。一瞬雪原かと思ったが、それも違った。
「徒蔵健、23歳」
突如、後ろの方から声がする。その方を向くとそこには、中年男性の様な背格好のスーツを着た男が、本を読みながら立っていた。
「1993年東京世田谷区の産婦人科に産まれるも、3歳の頃に親と事故に遭い、その後、親の知り合いで孤児院の院長をしていた母方の従妹に引き取られ、孤児院生活。又、小学生4年生の夏頃、一人留守番中に孤児院に泥棒が侵入。その様子を見ている際に手際の良さに惚れ、あろうことか泥棒になる事を決意、中学を出て高校に行く際に孤児院を出てアパート暮らしを始める。高校卒業後は就職せず、スリ・空き巣・置き引き・詐欺等を繰り返し前科多数、か」
スーツ姿の男が読んでいた本を閉じ、こちらに話しかけてくる。
「本人だから知っていると思うが、これが今までの君だ、徒蔵健君」
「誰だ?あんた」
「誰、と聞かれても返答に困る。そうだな、君達風に言うならば『神』という存在になる。」
「神だぁ?」
「そうだ、その中でも私は、人の魂を選別する神。簡単に言えば、『選別の神』だろう。」
「ンで、その選別の神様が、俺に何の用だ?」
「うむ、本来ならば、ここに来る時は『霊魂』、つまり、人魂の姿で来て私が君達の生前の行い等を確認したうえで、天界か地の国行きかを決める。まあ、ここらも電子化が進んでいるから私がやらずともいいのだがね。」
「何が言いたいんだ」
「君は『例外』なのだよ。」
「例外?」
「そうだ。君の様に生前の姿をしてここに来るのは、生前に善行に善行を重ねる、又は、早くして死に其のうえで悔いが強く残っている者が成る事のできる『転生候補者』と」
そこで神は、一拍の間を開け、次の言葉を発した。
「君のように、生前に行った行動の結果、選別せず、天界・地の国のどちらにも送らず、異世界に送り今までの行いを悔い、更生させる『強制転生者』と言う2つに分かれる」
「ん?待てよ?大体解っったけどよ、今『君の様に』って言ったよな」
「あぁ、言ったが?」
「何だ?要するに俺は、その強制転生者って奴だから此処に来たって訳か?」
「そうだ。君のような罪人は異世界に行き更生しなければならない。」
「めんどくせぇ、何とか出来ねえのか?」
「これは君の生前からの決定事項だ。」
「で?異世界ってのには何時飛ばされるんだ?」
「やけにあっさりしているな。まあ、それの方が此方としても助かる。と、いうわけで、今から行ってもらう。」
「は?今から?なんも準備なしでか?」
「あぁ、此方からは何もできない。まあ、一言助言はしよう。いいか、異世界に行ったら『最初にギルドに行け』そして『冒険者』になるんだ。そうそう、異世界で言葉が通じないと何かと不便だろう。飛ばすときに一緒に言語を入れ替えておこう。」
「おい、金はどう済んだ?冒険者ってのに成るってことは、登録みたいな事するんだろ。そん時に金がかかんじゃねえのか?」
「そうだったな。では、此方に来い。」
呼ばれたというのもあって前へ進み、神の前に立つ。すると、神が俺の手に金貨の様な物を3枚持たせてきた。
「これが異世界の金だ。これで何とかなるだろう。」
「は?たった3枚って、おい、これじゃ何もできないだろ!」
しかし俺の訴えは、何やら機械を操作している神には聞こえていないようだ。
「空間転移座標固定。転移座標、最終補正、X+1.5・Y-1.8。座標軸固定、転移先に障害物認められず。転移用電磁エネルギー充填率100%,120%,転移用電磁波収縮率、予定値到達」
(え?何か転移方法が超近未来的じゃね?何かヤ〇トみたいなんだけど……)
「それでは、徒蔵君。しっかりと更生するんだよ?新たなる生活に祝福の有らんことを。転送開始!」
こうして俺は、異世界へと飛ばされた。
俺が目を開けた先に広がっていたのは、まるで中世ヨーロッパを思わせるような町だった。
(あの神は確か『着いたらまずは、ギルドに行って冒険者に成れ』って言ってたな。)
「よっしゃ、とりあえずギルドってとこに行くか!」
こうして、俺の異世界生活が始まった。
(ん?そういや俺、ギルドの場所知らねえじゃん‼)
週一を目標にして活動していきます。