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本と幽霊と人

 いやあ! きゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!



 悲鳴が聞こえ、僕はソファから飛び起きた。その時掛布が掛けられていることに気付き、凛が起きたことを知る。

 悲鳴の聞こえた方へ向かうと、凛はかなり離れた部屋で泣き叫んでいた。


「どうしたの? 」


驚かせないようにゆっくり近づきながら訊く。凛は部屋の隅で縮こまって震えていた。来ていた服は涙でぐっしょりと濡れていた。

 どれだけ訊いても何も言わなかった。ただずっと泣いて、叫んでを繰り返していた。この近くに家は無いため近所迷惑にはならないが、ずっと泣かれたままでは僕が困る。小さいころ絵本で読んだ、母親が泣いている子供を抱きしめるシーンを思い出して真似をしてみた。

 叫び声はぴたりと止み、代わりに鼻をすする音が耳元で聞こえる。


「よしよし」


これからどうしていいのかわからず、こわごわ背を撫でる。

 だんだんとすすり泣く声も小さくなり、最後には消えた。

 落ち着いたようだから、何があったのか訊ねてみることにした。


「どうしてそんなに泣いていたんだい? 」


凛はまだ細かく震えている手を持ち上げ、この部屋の入り口の方を示した。指の指す先には、まるで塔のように詰まれた本があった。あちこちに積み重ねられているうちの一つが崩れ、山となっていた。

 どうやら凛はこの音に驚いたらしい。昨日の幽霊の話を信じたのだろうか。凛に幽霊はいないと言い聞かせ、服を着替えるように言った。もちろん、僕はその間後ろを向いていた。


 ちょうど凛が着替え終わったときに、玄関の戸が叩かれた。


「来客だ」


僕は短くそういうと、凛を残して玄関へと向かった。……はずなのだが、なぜか後ろでは凛がてくてくと軽やかな足音をたててついてきていた。


 「あー……。君は、さっきの部屋で待ってて。終わったら迎えに行くから」


「どうして? 私、一人であそこの部屋にいるのは怖いわ」


「大丈夫だよ。あそこは書斎の隣の部屋で、本棚に収まらない本を置いておくために使われている部屋なんだ。バランスが崩れて倒れることはあるかも知れないが、あそこに幽霊が出たことなんて一度もないよ」


「その言い方だと、幽霊は本当に居るみたいに思えるわ」


凛はそう言いながら、まだ僕についてきていた。昨日から見ていてわかってはいたが、この子は自分の考え等を曲げないタイプなのだろう。きっと、何を言ったってついてくると思われた。

 どうしようもなく、僕はそのままにしておくことにした。戸の前にいる人が誰なのか想像がついているから、本当は嫌なのだが。


「凛。この地域の人たちは、科学よりも不思議な事の方を信じているんだ。知っていたかい? 」


それは、この屋敷を知らず、生贄の事を酷いと思える凛がこの地域の者ではないと考えられるという事だ。


「いいえ、知らなかったわ。だったらその人たちの方が不思議じゃない! 」


「確かに、不思議かも知れないな」


だから……


 僕は玄関を開けた。その目の前には、大柄な男が立っていた。


「こんにちは」


その男はにこりともせずにそう言った。

こんにちは、桜騎です! 久しぶりの投稿です。すみません。

凛ちゃんはよく泣きますね。それほど心がやさしいという事なのでしょうか?

ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!

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