情
「どうして? 」
「どうしてだろうね? 完ぺきに見える人の子がだんだんと恐ろしくなったんじゃないかな。幽霊に被害も加えられていないようだしね」
「あなたがその生贄なの? 」
声がふるえているのに気付かれたのだろうか? 声音が少し柔らかくなった。
「そうなるね。……でも、神の子だぞ! すごいんだぞ! 」
まるで小さい子を相手にしたようなしゃべり方に、少し笑いながら返した。
「神の子ってすごいね! 」
「ふーむ、おまえが人の子か。気に入ったぞ! ……なんてね」
「まあ、そういうわけなんだ。だから、顔のことを言われるのはあまりうれしくない。何も知らない君に、怒鳴ったりして悪かったね。……ん? 」
私に驚かれている気がする。机に伏せて、わずかに震えている肩に気付かれているかもしれない。
「泣いてるの? 」
指先で頭から背中を何度も撫でられた。つらいのはゆうきなのに、と思うと何故だかもっと涙が溢れてきて、最後にはもう留めることができなかった。
ふと目を開けると、私はふかふかしたベッドに寝ていた。泣き疲れて寝てしまったらしい。周りにゆうきを探すと、ゆうきはクリーム色のソファに寝ていた。
ベッドから出る。私は白地に花柄のパジャマを着ていた。ゆうきが着せてくれたのだろうか? 再びゆうきを見て、掛布がないことに気付く。起こさないように忍び足で掛布を取りに行き、そっとかけた。……つもりだったのだが、起こしてしまったらしい。名前を呼ばれた。
うっすらと開いた双眼が私を捉えている。
「えーっと……昨日は、ありがとうございました」
ゆうきはふっと笑ってから私の髪を指先で弄んだ。しゃがんであげようかとかがみかけたとき、手を引っ張られ、気が付いた時にはソファの上にいた。……いや、ゆうきを押しつぶしていた。
慌ててどいた時にはもう遅く、気を失ったかと思ったのだが、どうやらこの一瞬で寝てしまったらしい。
私は着替えるため、ベッドの傍らに置いてあった服を掴み別の部屋へ向かった。
こんにちは、桜騎です! 今回はいつもより200文字くらい少ないです。すみません! 次回は元に戻るかと。次回もよろしくおねがいします!