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管理人

「あかね りん か……いい名前だね」


「あなたの名前は? 」


その子はふっと笑って椅子に腰かけた。私にも勧めてくれる。

 まただ……また、あの悲しそうな顔。本人は自覚していないように思える、無意識のメッセージのようで。私が座ったところで、その子は口を開く。


「僕に、名前は無いんだ」


「え? 」


なんて?


「僕に名前はないんだよ。だから、名乗れはしない」


しんとした、しんみりとした空気に、私の声が振動する。


「ふっざけんじゃないわよ! 私は名乗ったのにあなたはないですって!? 平等じゃないわ! 誤魔化さないで」


「えぇ……」


その子は明らかに困っていた。


「それに、あなたを呼ぶときに あなた じゃ困るでしょ? 」


「べつに僕はこまらな「あ! の! ね! 私がよくないのよ」


言葉をさえぎって怒った。

 その子はしばらく黙ってから、教えてくれた。


「ゆうき。僕の名前は、ゆうきだ」


「なんだ。あるじゃない、名前。ゆうきね……って」


 その発言に私は驚きを隠せなかった。


「男の子だったの!? 」


ゆうきはびくりと肩を震わせ、こくりとうなずいた。


「こんなにきれいで可愛らしい顔をしているからつい女の子かと……ごめんなさい」


髪もおかっぱのようだし、とは言わなかった。


 「わざとだろう!? 」


ゆうきは少し高い声で怒鳴った。


「本当は、面白いものを見たくてここに来たんだろう!? 」


「え……」


ゆうきの言っている意味がわからず、何も言えない。


「僕が神の子と言われているから、君は来たんだろう……? 」


ゆうきは前髪をくしゃりと掴み、顔を伏せた。


 「ごめんなさい。私、あなたの言っている意味がよくわからないわ。神の子って何? 」


ゆうきは傷のついた笑みを返してきた。


「本当に、わからない? 」


「ええ」


「……君は、かなりの世間知らずのようだな」


その言い方にはむっとしたけど、ゆうきはため息を吐いて話し始めた。


 「この洋館は、昔に来た外国人が使っていたものだったんだ。その外国人が亡くなってからこの洋館には誰もいなくなり、不気味は物音がするからとみんなが避けていた。そうした日々を過ごしていたらある時、たくさんいろいろなことが起こったんだ。大勢の子供がいなくなったり、雷が洋館に落ちたりと。何も知らない子供たちは洋館でかくれんぼをしていただけのようだったが、大人たちは聞く耳を持たない。洋館には外国人の幽霊がいると噂され、その洋館を管理……掃除などをするものを決めようと言う話になったんだ。でも、幽霊がいるとされるところになんて誰も行きたがらないだろう? だから、人々はあることを思いついたんだ。顔のきれいな子に行かせればいいと」


「まるで、自分の顔がきれいだと言いたいみたいね。確かにきれいだわ。羨ましいくらいに」


 「……君も、きれいだ。選ばれなかったのが不思議なくらいに。……綺麗な子は完ぺきな子とされ、神の子と言われていた。神の子なら、幽霊がいても大丈夫だろうと思われたんだ」


「何それ。同じ人間なのに」


ゆうきは驚いたように目を見開いた。


「君は少し変わってるんだな。そして、世間知らずだ」


 「でもまあ、確かにそうだな」とゆうきは笑って言った。出会って初めて、今までと違う笑顔だった。なぜだか嬉しかった。しかし次の一言で、その喜びは打ち消された。


「それから二百年経って、管理人という言葉は生贄に変わったんだ」

こんにちは、桜騎です! 今回は洋館と少年の説明でした。自分で続きが楽しみです! 次回もよろしくおねがいします!

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