お化け屋敷
草と砂利を踏む音がする。それが自分の足音だと気付くのにそう時間はかからなかったが、辺りが不気味なため、違う何かの音なのではと思いたくなってくる。
ここは丘。私の家の窓から見える、それほど高くはない丘。大した丘では無いのだけれど、ここには大した洋館はある。
丘のてっぺんに立つこの洋館はお化け屋敷と呼ばれ、みんなから避けられているが、時々興味本位でここにくる者もいる。
……その内の一人が、私だった。
夜中ベッドからこっそり抜け出し、今は洋館の目の前に立っている。立っている。が、途中で怖くなってしまい、入れないのだ。
着いてから一時間が経とうとした頃、雷が鳴り始めた。
真夜中の雷と洋館とは、よく見るホラー漫画のようだ。なんて思っていられない。雨も降り出してきた。まるでホラー漫画の主人公になった気分だ。洋館はより怖さを増して、私を見つめている。
雨が本格的に降り出してきた。風邪をひかない為には雨宿りをするしかなかった。
扉に寄りかかっていたら扉が少し動き、最悪な事に私は中に入ってしまった。
無理な体勢から立て直すことは難しく、余計な動きをしたため、勢いよく後頭部を打ちつけた。……おかげで意識は飛んで行ったとさ。
み……み!君、大丈夫かい???
ぼんやりとそんな言葉が聞こえる。
うっすらと目を開けると、視界いっぱいにきらきらと輝く金色が飛び込んできた。
驚いて飛び起きると、 「うわあ」 という少し高い声と、ごちんという音で再び床に寝転んだ。
「いってて……っ君、大丈夫かい? 怪我は!? 」
ぶつけた後頭部をそっと手で支えられる。私は、目の前で起こっていることを早く確かめる為、寝ぼけ眼を擦った。
次第にはっきりとしていく輪郭で、あの金色がなんだったのかを知った。金髪で紫色の瞳をした、色白で美形な子が顔を極限まで近づけていたのだ。
「近いわ!!! 」
反射的にビンタをしてしまった。
片方を真っ赤に染めた、男の子なのか女の子なのかわからない子は立ち上がって数歩下がった。
「それは……ごめんね。僕、人との距離感がよくわからないんだ」
その子は困ったように微笑んだ。
支えていた手が急になくなって、私は再三後頭部をぶつけたのだが、その子の悲しそうな表情に目を奪われてしまった。
私は無意識にその子の手を掴んでいた。ずんずんと奥に進んでいく。
「えっと……どこへ? 」
「決まってるでしょ! 机といすがあるところ!! 」
「あー……あの」
「どこにあるのよ!? 」
「さっきの隣の部屋にあったよ? 」
おずおずと後ろを指差され、先の暗くなった廊下を見た。
私は全速力で来た廊下を戻り、隣の部屋へ無言で入った。
入って私が立ち止まったところで、私はその子に手を思い切り振り払われた。
「君は、誰なんだ!? 」
それはこっちのセリフだ。と言いたいのをのどに留め、私は言った。
「凛。茜凛よ」
こんにちは、桜騎です! 今回もまたファンタジーを書いてみました! 今回は珍しくラストも決まっているので、進むのも早くなりそうです。
来年の四月まで、更新は遅くなりそうです。すみません!