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「君たちはどう生きるか」と「ワタモテ」

作者: 神代祐介

「君たちは~」の広告を昨日また見た。漫画版が190万部だそうだ。

その重要なテーマに「自分の生き方は自分で決める」

というのがある。


漫画版作者がネットニュースのインタビューに

「なにかに違和感を覚えながらも、

大きな流れに乗ってしまうということはいつの時代でもありますよね」

と答えている。時代に流されるな、とでも読まれかねない。

おそらく作者の意図するところは微妙に異なるのだろうが、

編集やメディアが意図的に「権力に歯向かえ」という

彼らに都合のいいメッセージをこめているように見える。

自分の生き方を自分で決めるというのはもっと泥臭く

生々しい痛みを伴う。友達がいなくなるとか。


「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」をその例に挙げたい。

単行本12巻の喪122から。

前提として、主人公の黒木智子もこっちは高校1年、2年のクラス替えの自己紹介で

面白いことをやろうとして盛大にスベっている。

3年生で三度自己紹介を迎え、無難にこなそうとしたときに隣の根元陽菜(ネモ)の表情に気付く。

以下吹き出しを引用する。


「なんだそのつまんなそうな顔!!」

「ふざけんな! いつだってつまらないのはリア充(おまえら)だろ!

 いつだって空気読んで

 空気読んだ発言と

 ウケしか狙わんくせに!!」

「お前らと違ってこっちはほぼ2年間

 ぼっち(ひとり)でお前らを見下しながら生きてんだ

 

 なめんな!!」


そしてもこっちは無難な自己紹介をやめ、

自らスベりにいく道を選ぶわけだが、

ぼっちとしての誇りを貫き、リア充を見下し続けるその独白は

気高くすらある。いや無理してんだけど。


ネモはもこっちのそんな態度を見て

必死に隠し続けてきた「声優を目指している」という夢を

自己紹介でカミングアウトする。

今日3月1日の更新分では田村ゆりに対し

「本音で話すのが流行りだから聞いちゃうけど」

「田村さん

 私のこと嫌い?」

とずばり聞き、

「別に嫌いじゃない 好きでもないけど……」

との返答を引き出し、怒るでもなく受け入れている。

最近の「ワタモテ」では

もこっちの態度が周囲の関係性を変容させる方向に

働くように描かれているのだ。


「君たちはどう生きるか」では

自分で生き方を決めさえすれば人生は上手くいく、とでも言いたげだ。

「ワタモテ」のもこっちは

自分らしい生き方というのがわからず、もがき、模索し、恥をかきながら

年を重ねて、高校3年目にしてようやく居場所を見つけつつある。


私はともすれば人の顔色をうかがい、

誰に好かれ誰に嫌われているか一喜一憂しがちだ。

「僕はこう生きるけど、君たちはどうするの?」と

優等生的に迫ってくる「君たちは~」よりも、

どう生きていいかわからずにもがいていた昔の傷をえぐってくる

「ワタモテ」のほうが私にはリアルで、ずっと教訓になる。


「ワタモテ」、もっと売れてほしいなあ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 二年間ぼっちの高校生活を戦ってきたもこっちのように、自分なりにイケる!と思ったやり方でも、盛大に間違え失敗する事もある。 それでも、足掻きつづけたからこそ辿り着けた今のもこっちの鮮烈な在…
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