3.息子と公園デビュー①
お久しぶりです。
大変なことになった。
今までは家族と親類くらいしか龍一と結衣に接する人はいなかった。
が、しかし、
恵美に届いた一報がその状況を一変させた。
お義母さんの「そろそろ公園デビューの時期ねぇ~」の一言が変革をもたらしたのだ。
◆
僕はこれまで龍一の外出を避けていた。
もっと言えば、他人の目に触れる機会を避けていた。
世間に僕と龍一の状態が露見するのと、恵美を含めた家族・親類に見つかるのとではリスクの度合いが違う。
大事なことだから二回言おう。
リスク(恥ずかしさ)が違う。
ばれる可能性としては、僕のことをよく知る家族の方が圧倒的に高いだろう。
ばれたとしても、土下座をする勢いでお願いすればきっと黙っといてくれるはずだ。
会うたびに「嫁と赤ちゃんプレイをしてたやつ」として見られることになるが、知っている人数は少なく済むだろう。
身内の笑い話で済むかもしれない。
楽観的観測でしかないが……。
世間にばれた場合、心配なのは恵美と結衣が好奇の目に晒される。
もちろん、世間に対して僕が「赤ちゃんの演技を公衆の面前でし続けた成人男性」として見られることも問題ではあるが、大事なのは恵美と結衣と親族たちだ。
それは絶対に避けなければならない。
ぼろを出しても、運が良ければ天才児で済む。
腹をくくろう。
全力で一歳児を演じるのだ。
いざ、公園へ……!
◆
着いた。
着いてしまった。
公園だ。
「マコちゃんは仕事しててね」と恵美に言われてしまったから誠としては付いて行くことができなかった。
ここは龍一のみで乗り切らねばならない。
それだけじゃない。
結衣に近づく悪い虫を排除するのも龍一だけでやらねばならない。
全力を尽くさねば……。
ベンチの近くでは、数人のママさんたちが談笑している。
恵美は挨拶するためにベンチに行くみたいだ。
結衣が砂場で遊んでいる子たちを見ている。一緒に遊びたそうだ。
砂場には野郎はいないようだ。
とりあえず一安心。
砂場の方を見たまま結衣が動かない。結衣はシャイなのかもしれない。
きっと大和撫子なのだ(親バカ)!
ここは僕(龍一)のカッコいいとこを見せるのだ。
結衣の手を握り、二人で砂場へと向かった。