【】
「白色が好きなの!」
まるで君のようだ、と歯の浮くような台詞を言ったら顔を真っ赤にしていたね
「私が眠るまで手を放さないでいてね……」
不安そうに彼女は言った。
「クスッ、───の手冷たくて気持ちいい」
手が冷たい人は心が温かいんだと、楽しそうに言っていた。
「───!───!───!───!お願い返事をして!」
…………
「あはは、じゃあ私が───のお嫁さんになってあげる」
もっと早く出会えていれば、あるいは始めから出会わなければ……
「もう声も聞こえないの……ねぇまだそこに居る?」
居るぞ、ここに居る……彼女の手を握りしめながら奇跡を願う。
「───さん。また無駄遣いしてー、もーしょうがないんだから」
呆れたように言う彼女はそれでも優しく笑いかけてくれた。
「お願い………あなたの手で殺してほしいの」
泣きながら彼女を抱きしめた、それでも最後の時は……
「花言葉なんてよく覚えていたわねぇ」
優しさ、信頼、純情、信仰、甘美、清純な心、君が好きだと言ったから。
「どう……して………どうして!こんなッ!」
嗚咽をこらえながら泣き叫ぶ彼女に、どうすることも出来ない自分を呪った。
「大丈夫だよ───」
彼女が吐血した、後になって私より真っ青な顔だったと笑いながら言われた。
「はめまして、私は────」
腰まで伸ばした綺麗な黒髪だった、手入れが大変なんだと苦笑しながら言っていた。
なぁ────、君は怒るだろうか、それとも呆れるだろうか、喜んでは………くれないのだろうな
なぁ────、神に祈っても奇跡は起こらない、だったら縋るしかないじゃないか
なぁ────、君が好きだと言っていた花の名前はなんだったかな
なぁ────、思えば出会った時から僕は君に惚れていたんだ
なぁ────、僕が人を辞めても君はそばに居てくれるか?
なぁ────、もう一度僕の名を呼んでくれないか
なぁ────、僕は君だけでよかった
なぁ────、愛しているよ
なぁ────、愛してる
なぁ…………、
愛している………
愛して………
………
世界は斯くも残酷で理不尽で、それでもなお足掻こうとする
我はそんな人間を愛しく思う、故にこそ救い故にこそ喰らう
嗚呼甘美なる憎悪の叫び、愛を語りながら殺戮を振りまく醜い獣と化し
それは世界を呪い、神を呪い、愛した者すら殺し、世界を殺す
代償は記憶、死は救い、存在意義すら忘れ、世界に殺される哀れな獣
さぁ、次の願いを叶えようか
お前はなにを願い、なにを差し出すのか
【惡魔は騙る】
スイレンには滅亡という花言葉があるそうな