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04 危険な魔物

 次の日も狩りに出ると、道中で黒い影に出くわした。


「まずい。魔王の影響を受けた魔物だ。」


 先日のイノシシ同様、黒い霧のようなものを纏った化け物だった。形は大きなサルみたいだ。


「花子は下がってて。」


 私を背に庇いながら、ウドさんが魔物と対峙する。


「う……、ぐ、このっ……!」


 敏捷性強化付与など魔法をかけてはみたが、ウドさんは敵の攻撃を避けきれず、逆に、ウドさんの攻撃は敵に当たらなかった。物理防御力強化付与でダメージ軽減するものの、やっぱり痛そうだ。

 私はヒノキの棒を構えて前に出た。


 カンッ!


 ウドさんを狙った攻撃をヒノキの棒で弾く。


 カッカッカッカッ……!


 サルの攻撃は素早いが、補助魔法をかけた私は余裕で全て防ぐことができた。


「そーれっと。」


 隙を見て、サルに足払いをかける。べしゃんと無様にサルか転んだ。


「ウドさん、今がチャンス!」

「うんっ!」


 攻撃さえ当たれば、ウドさんは一撃で魔物を仕留めることができた。


「ふう。助かった。花子はすごいね。」

「いや、私だけやったら勝てへんから。私の素早さとウドさんの攻撃力があって勝てるんやで。」

「そっか。僕たち、いいコンビだね。」

「そうやね。」


 ウドさんは嬉しそうに口元にふさふさの両手を近づけて、きゅーっとなってはる。可愛いなあ。


「んー。でも、今の戦闘の感じやと、ちょっと武器を変えたいかもしれん。」


 ヒノキの棒、太すぎて持ちにくいねん。もっと細長い、槍みたいなのが使いやすそうや。


「そっか。じゃあ、鍛冶職人さんに頼んでみるかなぁ。僕、嫌われてるから、作ってもらえるか心配だけど……。」

「いや、いいよ。そんなん、お金かかるやん。ウドさんの家に竹箒あったやろ。あれの古いのか、似たような長さの竹ってないかな?」

「うん。竹箒なら2本あるよ。」

「じゃあ、それで。」


 補助魔法に『頑丈状態付与』ってのがあったから、素材は何でも誤魔化せるはずや。



 それから何日か狩りを続けると、頻繁に邪悪な魔物に出くわすようになった。私たちが森の奥まで狩りに出ていることもあるけど、それだけ、魔王の勢いがすごいということらしい。


 魔物退治に竹箒を振り続けていると、ステータスに変化があった。


 山田花子 17歳 人間

 HP:元気 MP:余裕

 ステータス:キモすばしっこい

       無駄に器用

 スキル  :ツッコミぐだぐだ

       補助魔法

       武器術(槍)


 武器術(槍)を覚えた。竹箒って槍だったのか……。

 スキルは後天的にも覚えられるものなのかとウドさんに尋ねてみたが、普通は十年以上の修行をしてやっと覚えられるものらしい。この辺も私はチートくさい。

 ただ、使える技は1つだった。


『武器術(槍)』――パラライズランス


『パラライズランス』――敵を痺れさせる技。敵の状態異常耐性によって成功率は変動。


 ウドさんが攻撃できる隙を作るのに徹していたため、それに必要な技だけ覚えたらしい。

 これで戦いの効率はかなり上がった。


 意図的に村の周辺をパトロールして、発見した魔物を片っ端から駆除していったが、皆余裕で勝てた。


「すごい! 花子がいると無敵だね。こんなに強いの、村では母さんくらいかもしれないよ。」


 ウドさんは喜んでいるが、強そうな魔物を倒しても、それを村に帰って自慢するようなことは一切なかった。そのため、相変わらず村ではヒソヒソと悪口を言われていたけれど、じっと耐えている。ウドさん、いい子なんやけど、不器用なんがなぁ。



 そんなある日、村に巨大な魔物の屍骸が運び込まれた。


「すごいぞ、すごいぞ。村長のお子様がやっつけたらしい。」

「すごいぞ、すごいぞ。さすが、村長の子!」


 おぉ、誰にも言っていないはずやけど、ついにウドさんの活躍が知られたかと喜んで見に行ったら、村の広場では、違うウサギがふんぞり返っていた。

 隣のウドさんが、父親と弟達だと教えてくれた。ふむ。異母弟たちか。


「流石は、イケズ様の息子たちだ。ナマイキ様もワルガキ様もお強い!」


 ちょ……、名前っ!


 皆、関心したふうに、2人が持ち帰った獲物を見ている。……けどなぁ。


「ウドさん、あれ……」

「同じ種類の魔物、僕達も倒したことあったね。」


 お人よしのウドさんは同じ種類とか言ってるけど、多分、まさに同じ魔物だ。私たちが倒した魔物の屍骸を放置していたのを、さも自分たちの手柄のように持って帰ってきたんだ。

 けったくそ悪いけど、ウドさんは何も言わない。ウドさんが動かない以上、私が騒ぎを起こすわけにもいかない。私たちは黙って、得意げなウサギたちを眺めていた。

 ただ、白けた視線を送ってしまうのは抑えられなかった。それに、目ざとく相手の方が気付きやがった。


「何だ人間。妙な顔をして。」

「人間の癖に、村に置いてもらってるのに、生意気だぞ!」


 ナマイキ君に生意気と言われた。ってちゃう。あかん、絡まれた。


「そもそも、何で人間が村にいるんだ。」

「追い出すべきだ。」

「そうだ!」

「そうだ!」


 周りも同調して、私に対する出て行けコールが開始された。村に来て1週間。異種族が滞在するのは、もう限界かな。


「ちょっと待ってよ! 花子は君たちに何の迷惑もかけていないよ? 僕の狩りを手伝ってくれていたし。みんなにも、お裾分けしたでしょ?」


 ウドさんが私を庇って声をあげる。


「ふん。人間の狩ったものなど、いらんっ! 人間に頼らなければ狩りもできないウド、情けない。」

「情けない。」

「ウドの大木。」


 私を庇ったせいでウドさんまで槍玉に挙げられた。


「ウドさん、ええって。私、出て行くから。」


 幸い、私はチートだ。1人で森を移動しても、多分生きていける。


「ダメだよ! 花子は僕の相棒なんだもんっ。一緒にいるの!」


 ウドさんが私の腕にギュッとしがみついてきた。こんな状況やけど、くっそ可愛い!


「ほう。ならば、決闘すればいい。」


 今まで黙っていたウドさんの父親、イケズが提案してきた。決闘。そか、ウサギちゃんたち、意見が対立したら決闘するんか。


「決闘?」

「そうだ、決闘だ!」

「ワルガキ様とナマイキ様なら、ウドくらいコテンパンだ。」

「やっちまえ。」

「やっちまえ。」


「待って! そっちは2人やろ。こちらも私とウドさんの2人で戦う。それでええな?」


 咄嗟に私は確認した。ウドさん1人では勝ち目がない。でも、2人ならいける。


「構わん。2対2で勝負だ。」


 ウドさんパパの提案で、急遽決闘が行われることになった。

 ちょうど良い具合に場所は村の広場。周りを村のウサギたちに囲まれて、2対2で向き合い、武器を構えた。


「決闘の条件を確認する。ウドが勝てば、人間が村に滞在することを許可する。」


 父親の言葉に、ウドさんは頷いた。


「ナマイキとワルガキが勝てば、人間は村を出て行く。」

「ちょっと待って。人間だけじゃなく、ウドも出て行くことにしようよ。人間が出て行くのは当然だし、僕達が勝ったらウドも出て行く。それでいいでしょ?」


 ワルガキの言葉に、イケズは頷いた。


「そうだな。ウドたちは負ければ2人とも出て行く。いいな。」

「ちょ……」


 私は抗議しようとしたが、ウドさんに止められた。


「いいよ。花子がいなくなるんだったら、僕も村を出るし。」


 ウドさんは覚悟を決めた顔をしていた。そんな、会ってまだ1週間程度やのに、なんや私ら、運命の恋人同士みたいやん。あかん、これ、ロマンスや! ロマンスや!!! どうしよう、ウドさんが格好良すぎて、惚れてまうやろっ!!!!!

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