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03 戦ってみる

「補助魔法使いは、技能にもよるけど、生活に役立つ魔法が使えたら、どこの街でも食べるのに困らないと思うよ。」


 ウドさんの言う通り、これだけ魔法が使えたら仕事には困らなそうだ。魔法が使える=手に職があるに近い状態なんだろう。


「それじゃあ、私、この村で役に立てるんかな。」

「うーん、人間の街に行ったほうがいいと思う。人間って、獣人を捕まえて奴隷にしたりしているから、獣人全体に嫌われているんだ。」


 むむ。その辺もよくあるテンプレ設定なんね。


「この近くの人間の国は、ルルガルっていう王国だよ。近いうちに連れて行こうか?」

「あ、そこは、パスで。私を召喚した国やから、戻りたくない。」

 

 多分私、チートやし。何かの拍子に目立ちでもしたら、厄介なことになりそう。


「そっか。次に近いのはポエトって国だけど、長旅になるなあ。旅費が相当要るし、魔族が活発になっている中旅をするのは危険かも。」

「そうなんや。まいったな……。」


 ウサギ族の里に置いてもらうんは、ウドさんの好意やし、そう甘えてもられんなあ。諦めてルルガル王国で仕事を見つけるか。


「まあ、とりあえず、ここで数日生活して、魔法を色々試してみたらどうかな。戦闘に必要な魔法を試したいなら、狩りにも行くよ?」

「ありがとうございます。感謝しかできませんが、宜しくお願いします。」


 私はペコりと頭を下げた。本当、ウドさん、ええ人や。


「いいよ、いいよ。補助魔法を使える人が居たら、僕の狩りも楽になるだろうし、お互い様だよ。」


 ウドさんに感謝して、その日は彼の家に泊まらせてもらった。



 翌日、早速、狩りに連れて行ってもらうことにした。


「まずはお化けニンジンを狩ろう。」


 ウドさんの案内で森を進むと、2L入りのペットボトルくらいの大きさの、ニンジンに顔がついたような化け物がうようよおった。


「お化けニンジンはすばしっこいけど、こっちを攻撃してこないから危険は少ないんだ。じゃあ、狩るよ。」


 そう言って、ウドさんは持っていたヒノキの棒をニンジンに向けてたたきつけた。


「えいっ!」


 しかし、ニンジンはひらりとヒノキの棒を避けてしまう。


「えいっ! えいっ! このっ! このっ!」


 何度もウドさんはニンジンを狙うが、攻撃が当たることは一度もなかった。何だか、もぐら叩きがすごく苦手な人を見ているみたいだ。ウサギのウドさんが一生懸命もこもこの手で棒を地面に叩きつけている様子は、正直、めっちゃ可愛い。

 って、あかん、見とれてたらダメやった。補助魔法で手伝おう。


「移動速度強化付与、敏捷性強化付与、器用さ強化付与!」


 魔法を付与するとウドさんの動きは少し改善し、たまにニンジンにヒットするようになった。でも、たまにだ。あんまり効果はないらしい。私、やっぱチートじゃないのかな。


「ふう。流石は補助魔法だね。いつもだと、丸一日やって1匹獲れるかどうかなのに、今日はもう3匹もとれたよ。」


 それでも、ウドさんはとても嬉しそうだった。


「そうだ。花子もやってみる?」


 私も持っていたヒノキの棒(ウドさんに予備を貸してもらった)でニンジンを狙ってみた。


「はっ! はははははっ! とうっ!」


 目に付いたニンジンを片っ端から叩いてみた。結果、私の周りに、数十匹のニンジンの死体が出来上がった。


「あ、まず。獲りすぎた?」


 やってもたな。大事な狩場やろから、乱獲はあかんかも。


「ううん。お化けニンジンは生命力が強いから、すぐ増えるよ。これでたくさんニンジンが食べられるから、嬉しいよ。」


 嬉しいと言いつつ、ウドさんはどこかしょんぼりしていた。


「やっぱ、才能ってあるんだね。僕、小さなときからお化けニンジン狩りをしてるけど、全然獲れないのに、すごいなぁ。」


 ああ、ウドさんのプライドを傷つけてしまった。


「い……、いや、適材適所ってあるし。私、キモすばしっこいから。昨日の巨大な魔物、ウドさんは一撃で仕留めてたやん。すごいよ。」


 何とかフォローしようとするも、


「ううん。あの魔物、君を狙って後ろががら空きだったから、倒せたの。僕一人だったら、攻撃を当てられないよ。」


 どうやら、ウドさんのステータスの『うすのろい』ってのは、呪いみたいな状態らしい。力はあっても当てられないせいで、ウドさんはウサギ族の中で弱いと思われているらしい。


「まあ、折角ニンジンがたくさん獲れたんだし、袋に入れて家に戻ろうか。」


 ウドさんは大きな袋をポーチから取り出した。この世界にアイテムボックスの魔法はなく、代わりに魔道具の袋があるらしい。ウドさんのポーチは、狩りに必要な道具を亜空間収納してるけど、予め決められた物しか入らないそうだ。袋に入れたニンジンは自力で運ぶしかない。

 私たちはニンジンを持ち帰って焼いて食べた。

 お化けニンジンは地球のニンジンとは栄養価が異なるらしく、私もニンジンを食べるだけで満腹になった。


「ふあぁ。お化けニンジンをお腹いっぱいに食べられるなんて、幸せだなぁ。」


 ニンジンを20匹食べたウドさんは、とても満ち足りた顔で自分のお腹を擦っている。可愛い。


「午後もまだ時間はありそうやけど、何するん?」

「そうだなぁ。また狩りに行くかなあ。折角、ばくだんキャベツの旬だし、食べたいなぁ。」

「ばくだんキャベツ?」

「攻撃を仕掛けてから10秒以内に倒さないと爆発するキャベツだよ。とっても美味しいんだ。」


 ウドさんの目がキラキラしている。ばくだんキャベツは某クエストのアレやな。



 お化けニンジンとは逆方向に森を進むと、地球のキャベツより一回りくらい大きなキャベツに、かまぼこを逆さまにしたような目がついた化け物がいた。

 ウドさんによると、ばくだんキャベツは彼の攻撃2回で倒せるらしい。1回目は動かないので確実に当てられるけれど、2回目は逃げ回るのでよく外して爆発を食らうそうだ。爆発はウドさんのHPを半分以上持っていくらしく、1度失敗したら家に帰って寝ているそうだ。

 攻撃力は私よりもウドさんの方が確実に高いだろう。1撃目の後、私が叩くようにしてもいいけど、それで10秒以内に倒せるかは分からない。ここは、


「物理攻撃力強化付与、物理防御力強化付与、魔法防御力強化付与」


 って感じかな。


 早速、ウドさんがキャベツを叩いた。


 バコォォォオンッ!!!!


 キャベツは粉々に粉砕された。


「……あ、あれ?」


 物理攻撃強化魔法は、効きすぎるんかいっ!

 敏捷性とかは微妙にしか上がってなかったけど。いや、対象の特性によって上がり方が違うって可能性もあるか。


「ごめん。補助魔法が効きすぎたみたい。ちょっと弱めにかけてみる。」


 微調整はイメージでできそうだ。


 次に攻撃してもらうと、まだ強すぎたようで、キャベツは潰れてしまった。それから何度か調整して、綺麗な状態で倒せるようになった。


「うわあああ。これで、キャベツがいっぱい狩れるよ。うわああああ。」


 ウドさんは嬉しそうに大興奮していた。私たちはまた袋いっぱいのキャベツを抱えて家に帰った。



 晩御飯はキャベツのソテーだが、その前に、たくさんあるキャベツは近所におすそ分けするそうだ。


「ニンジンは、僕が獲れないだけで皆簡単に狩ってくんだけど、ばくだんキャベツは獲りにくいから喜ばれると思う。」


 村のウサギ達はウドさんに冷たいのだが、ウドさん、本当、ええ子やなぁ。


 獲ったキャベツの半分を近所に配って、残りは2人でたらふく食べた。

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