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ファミーユの副店長戦線  作者: 天 乱丸
【第三話】
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【プロローグ】 早起きはおっぱいを呼ぶ


 大きなあくびを最後に、朝の仕込みが終わる。

 場所は言わずもがなファミリー喫茶と称した中身はメイド喫茶兼居酒屋と化しているカフェ、その名も【chaleur de la famille】だ。

 秋月優、高校二年、現在経営者である叔母桜之宮耶枝の身勝手な計画に巻き込まれこの店で副店長をしている。自己紹介以上。

 いつしか日課と化した早朝の準備とこの家の家事をするため毎日六時に来ては、齷齪働いている俺は本当に頑張っていると思う。いやマジで。

 土日と定休日を除いて毎日だぜ?

 それでいて夜は学校が終わるなり直行して十一時の閉店まで働いているんだぜ? 当然ながら土日もさ。

 更に言えば定休日なんざ週に一日、それも平日なわけで、店が休みでも学校あんだぞ。

 無理ゲーだ。俺の人生十七年目にして早くも無理ゲーだ。

 いやいや、何をネガティブ思考を加速して諦めてんだっての。

 せっかく今まで頑張って来たんだ、途中で投げ出してどうする。

 それに耶枝さんの話では近々こうなっている原因が解消されるかもしれないということだ。

 というのも、そもそも俺が朝の仕込みを手伝ったり家事を代わりにやっているのは従業員の偏りが原因なのだ。

 端的に述べれば店長である耶枝さんを除く従業員は俺を含め全員が学生だったという、後先考えなさすぎだろと言いたいこと山の如しな失態によるものである。

 それすなわち平日の朝から夕方の時間帯を全て耶枝さん一人で回さなければいけないということ。

 基本的には混み合うことの少ない時間帯だし、平日の午前中なんて近所の顔見知り連中や常連で埋まるだけなのでそう大変ということもないのだが、かといって一人で全部というのは大変なのは当然過ぎる程に当然なので可及的速やかに人員募集に踏み出す予定でいたもののオープン以来予想外の繁盛具合で忙しかったこともあり後回し後回しになった結果つい先日になってようやく店頭で募集の告知をするまでに至った次第である。

 定員が一名のため求人誌等での掲載は見送り、手作りのポスターを内外の窓に貼っただけなのだが、『パート、アルバイト募集! 主婦さんフリーターさん大歓迎♪』みたいな文言はこれまた意外にも反響が多く、告知から三日で十人も希望者が出たため早々に打ち切るという耶枝さんにとって大助かりの展開になった。この調子なら俺の睡眠時間が戻ってくる日も近いはず……多分、きっと。

 そんな少しの希望に縋る思いで作業を進めること三十分ほど、ようやく仕込みも終わり続いて家事に取り掛かる。

 風呂掃除をササッと済ませ、洗濯を回すだけの簡単なお仕事です。

 俺がこの家で寝泊まりするのは週に二回ぐらいしかないのに、なぜ俺が……という愚痴は毎朝のように脳裏を過ぎるが、もう言っても仕方がないので黙ってやろう。

 タオルだの店で使う布巾だけではなく女性陣の私服や下着とかも普通に入ってることにもいい加減慣れてきて、今や手が止まったりドギマギするのは下着を手に取った時ぐらいだ。

 耶枝さん、りっちゃん、リリーさんに音川、誰を男として認識してないから気にならないのだろうか。

 唯一音川だけは私服を出さず自分で洗っているが、それは関係ないしな。

 下着だけは自分で洗うようにしている、ならともかく逆を行ってるからね。下着だけは人に洗わせたいってどんな変態思考だよ。

 俺とか関係なく耶枝さんが洗濯をしていた時かららしいし、相変わらず謎の多い奴である。

「べ、別に音川の私服が無いからって寂しくなんてないんだからねっ」

 馬鹿なことを言ってる間に取り敢えず洗濯機の中身を全部カゴに放り込んだ。

 あとはベランダに行ってこれを干せば朝の仕事は終わりだ。

「……ん?」

 いつもより遅くなってしまっているし、完了する頃には朝飯も出来ているだろう。

 そんなことを考えカゴを持ち上げた瞬間、洗面所の扉が開いた。

 耶枝さんが様子を見に来たのだろうかと思いきや、直後に現れたのはリリーさんだった。

 手にバスタオルと着替えを持った全裸の状態の、だ

「な……リ、リリーさん?」

「優っ、オハヨっ♪」

「おはようございます……じゃなくて、なんで全裸なんですかっ」

 慌てて目を逸らそうと思ったが、満面の笑みで挨拶をされては動くに動けず。

 俺の目はもうスタイルの良い肉体に釘付けだ。

 この人の毎朝シャワーから始まるのは勿論知っていたが、部屋から素っ裸で移動してんのかよ。

 褐色の肌は見るからにスベスベで、大きな胸やスラッとした腰も四肢もとても綺麗に映る。

 シチュエーションとしては主に俺側だけ大ピンチな気がしないでもないが、もうこの姿を目に焼き付けるのが最優先な気がして、それに加え感動のあまり無意識に目からは水滴が零れていた。

「優? 何泣いてるカ?」

 泣きながら親指を立てる俺に対し、リリーさんは不思議そうに首を傾げる。

 早起きもたまにはいいもんじゃねえか。


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