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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

タイムマシン~another story~

作者: シャンプーinリンス

あらすじでも、書きましたが、2作目に投稿した、「タイムマシン」の結末が違うバージョンです。

大まかな設定は同じですが、全体的に修正を加え全く別のエンディングとさせていただきました。

続きというわけではないので、新しいものとして気軽にお読みください。

作者的には、こちらの方が気に入っているので是非お読みいただけたらと思っています。

少々の残酷な描写がありますので、苦手な方はご注意願います。



ああ、なんでこんなことになってしまったんだろう。

僕はあれからずっと、後悔をしている。


それは、5年前の出来事だった。

僕はその時20歳の大学生だった。

僕は彼女と付き合っていて、その日は付き合って2年目の記念日だった。

僕は彼女と付き合って2年目のお祝いをしようと、駅前で午後7時に待ち合わせる約束をしていた。

けれど僕はその日バイトが長引いてしまい、待ち合わせに間に合うことができなかった。

僕が待ち合わせの時間に間に合っていれば、あんなことにはならなかった。

彼女が死ぬことなんてなかったんだ…。


あの日、駅前に通り魔が現れた。

通り魔は駅前の彼女を含め多くの人々がいた待ち合わせスポットに現れ、無差別に人々を刺していった。

彼女は不運にも、突然現れた通り魔に刺され帰らぬ人となってしまった。

僕がたどり着いたときにはもう遅く、通り魔がパトカーにのせられているところだった。

40歳くらいのみすぼらしい男だった。僕は車に乗せられる彼と一瞬目が合い、睨み返してやった。


僕は、通り魔を恨んだ。あいつさえいなければ、あいつさえ現れなければ…。

でも、それと同じか…それ以上にあの時待ち合わせに遅れた自分を恨んだ。

僕がもし時間に間に合って、彼女と会えていれば、こんなことにはならなかったと。

その日からずっと、僕は後悔し続けている。


その後通り魔は捕まった。

通り魔は精神がおかしくなっており、犯行動機などもわからないらしかった。

しかし起こした事件が起こした事件なので、その男は裁判で死刑になり昨日執行された。

僕は、ついにこの怒りの矛先を自分に向けることしかできなくなった。

そして今日は彼女の命日。

僕はいてもたってもいられず、外へ飛び出し走り出した。

そんな時だった、僕がタイムマシンに出会ったのは…。


それは、僕が怒りに任せて走って走って今まで来たことがない住宅街に入り込んで、ふと休もうと入った公園のベンチの下に落ちていたチラシを拾い上げたときだった。

それは、ある広告みたいで、白い紙に黒いペンで

「あなたは過去に戻ってやり直したいと思ったことはありませんか。

そんなあなたにタイムマシンを貸しだし〼

住所 □□□町 △△△番地 ○○○」

と書いてあった。

最初は嘘だと思った、わけのわからない宗教団体の広告だと思った。

でも、なんだか気になって、広告の下にあった住所の場所に行ってみようと思った。

その時僕はもうどうにでもなれっていう気持ちだった。

別に嘘でもいいじゃないか、そんな気持ちで目的地を目指した。

書かれた住所の場所は、あるマンションの一室だった。

チャイムを押してみると、白衣を着たいわゆる博士みたいな人が出てきた。

博士は僕が持っていた紙を見ると、

「どうぞ、入ってください。」

と部屋に入れてくれた。

そして、応接室のような場所に通された。

そこは机が一つに、椅子が二つ置いてあるだけの簡素な部屋だった。

ただ、床や机の上には書類や本がたくさん積まれていて少し触れただけで崩してしまいそうだった。

僕が座ると、博士も座った。

僕は

「ここに書いてある、タイムマシンってのはなんなんですか。」

そう、チラシを指さしながらきいていた。

「その名のとおりタイムマシンです。過去に戻ることができるキカイです。」

博士は答えた。

「そんなものが、実在するんですか。そもそもそんなことが可能なんですか。」

僕は訊いた。

「まだまだ、技術としては未熟ですが可能です。私はタイムマシンを試してくれる被験者を探していたのです。ご覧になりますか。」

そういうと、博士は僕を隣の部屋につれていった。

僕はそこでタイムマシンを見た。でもそれはアニメや映画に出てくるタイムマシンのイメージとは大きく異なっていた。なぜなら、それは自転車のような形だったからである。

博士は言った。

「これが、タイムマシンです。このペダルをこげばこぐほど過去に戻ることができます。」

僕は、馬鹿らしくなって

「うそだろ、そんなことがあるわけがない。何がタイムマシンだ馬鹿らしい。」

と言った。

「わかりました。では、今の時刻はちょうど」

そう博士が言いかけたとき、僕のケータイのアラームが鳴りだした。それは彼女が死んだ時刻18:30を告げるものだった。

「そうですね。では、この部屋で自転車に乗って、少しの間こいでから出てきてください。」

そういうと、博士は何やらアラームのようなものをセットし部屋の扉を閉め、出て行ってしまった。

僕はその部屋の中で、一人になった。

馬鹿らしいと思いながらも、まあやるだけやってみるかと思い。

サドルにまたがり、ペダルをこぎ出した。

何分もそうやっていると、アラーム音が鳴りだした。

ケータイを開くと時間は18:40。騙されたと思った。

僕は部屋を出ると、一瞬視界が真っ白くなり、気が付くとそこは彼女と待ち合わせをしていた駅前だった。

僕は突然何が起こったのかわからず、歩いている人にぶつかりそうになり、道の端に避けた。

何気なく駅前にある大型ディスプレイを見ると、時刻が18:29を指していた。

そして、表示が18:30を指した時、聞き覚えのあるアラーム音が鳴った。

それは、自分のケータイからだった。


僕は、その後いそいで博士の家に向かった。

チャイムを押すと、わかっていたかのように博士が扉をあけ、僕を部屋の中に入れた。

そして

「わかっていただけましたか。」

と一言言った。

「5年前に、5年前に戻りたいんだ。」

気付くと僕はそんなことを口に出していた。

「そうですか、どうやら信じていただけたようですね。」

「あの自転車は、こげばこぐほど過去をさかのぼることができます。」

「ただし…」

そう博士が言っているのを僕は遮り、

「被験者をやる。だから、早く乗らせてくれ。」

そう言った。

博士は

「わかりました。では契約書にサインしてください。」

と膨大な束の紙を机の上に置いた。

一番上には名前を書く欄があり、そこにサインをすればよいことはすぐにわかった。

焦っていた僕は、中身を読もうともせずそこにサインした。

博士はそれを見ると満面の笑みで

「では、こちらにお入りください。」

と言い、僕は先ほどと同じ部屋に入った。

「はやく、はやくしてくれ。」

僕がせかすと

「では、ひとつだけ忠告を。あなたが目的の時間になるまでこの扉は開きません。」

そういうと、博士は先ほどと同じくアラームをセットし、先ほど受け取った契約書を置いて

扉を閉め、出ていった。


僕は、サドルにまたがり、ペダルをこぎ始めた。

何時間こいだだろうか、僕は少し疲れて休憩しようと思った。幸い部屋には膨大な携帯食料や水が置いてあった。

僕はそれを食べながら、ふと先ほどの契約書を見てみた。

パラパラとみていくと、タイムマシンの原理や説明がずらっと書いてあった。

どうやら原理としては時間を距離に変換し、それをこぎ進めるようだ。

そして、最後の方に注意書きの項目があった。

僕はそれを見て驚愕した。

・時間遡行は戻る時間の4倍の時間がかかります。

・この部屋の中で過ごす時間はあなたの体に刻み込まれていきます。

・時間遡行は未知のことが多いです、何が起こっても責任はおえません。

そこまで読んで僕は目を通すのをやめた。

そして前に自転車をこいだとき、この部屋でケータイを見たときは時間がたっていたのを思い出した。

そして、僕は博士の言葉と笑みを思いだした。

「あなたが目的の時間になるまでこの扉は開きません。」




うそだろ、僕は少なくとも20年もの間自転車をこぎ続けなきゃいけないっていうのか。

僕は絶望した。でもこがなきゃいけなかった。こがないと自転車も僕の人生も前にすすまないから。

それから僕は自転車をこぎ続けた。

最初は何日たっただろうかと考えることもあったが、次第にそんなことを考えるのもやめた。

僕は何回後悔をしたかわからない。でもそのたびに彼女を思い出して、自分を奮い立たせた。

唯一の救いは食べ物と水はかなりの量あることだった。

それでも、20年も持つかなんてわからないと思い節約をしながら食べた。

他にはと思い、探してみると自殺用なのかナイフとロープが見つかった。

僕はそれを見て、絶対死んでやるもんかと思った。

僕は自分を戒めるため、それをズボンのポケットにしまった。

それから、僕はここから、この部屋から出るためだけにペダルを踏み続けた。

こいでは休みこいでは休みを繰り返した。



そして、膨大な時間がたった。

20年という時間は、僕の心を大きく変えた。

彼女との思い出は次第に薄れていき、自分を奮い立たせることも難しくなった。

膨大にあった食料もなくなりはじめ、もうだめかと思い始めたときだった。

ピピー、ピピーとどこかで聞き覚えのあるアラーム音がした。

それは、時間遡行終了の知らせだった。

僕ははっと気づいて、扉を開き外に出た。僕の視界に一瞬とてつもない光が襲い、目を閉じる。しばらくするとそれはおさまり、目を開けるとそこは、久々に見る駅前だった。

そして、目の前には…






彼女がいた。彼女を見た瞬間、忘れかけていた思いがせりあがってきた。

僕は走った。人々は奇怪なものを見るかのような目を僕に向けた。

それはそうだろう、20年間で僕の外見はだいぶ変わった。

でもそんなことはどうでもよかった。

やっと、やっと戻れたんだ。

僕は伝えなきゃいけない。彼女にここは危険だから逃げろって。


僕が近づいて彼女に話しかけようとすると、彼女は逃げ出そうとした。

僕のこの姿がよっぽど不快だったのだろう。

僕の中で何かが壊れた。

次の瞬間には僕は彼女の腕を強引につかんでいた。

「ふざけるな、僕は君のために20年、20年こぎ続けたんだぞ。」

「気が狂いそうなくらい長い間、君のことを考えてペダルを回した。」

僕はさけんでいた。

「助けて、助けてください。誰か、助けてください。」

彼女が周りの人に向かって、助けをこう。

「これじゃあまるで僕が悪者じゃないか。」

「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな。僕の20年を返してくれ。」

そう思った瞬間、ポケットに固いものが入っていることに気が付いた。

取り出してみると、それは自殺用にひもとともにおいてあったナイフだった。

僕はそれを握りしめ、次の瞬間…





彼女に突き刺していた。

「死ぬのは僕じゃない。お前の方だ。」

僕は彼女の体からナイフを抜いた。生暖かい鮮血が僕に向かって飛び散った。

彼女は、倒れた。

その瞬間、とても時間がゆっくりと流れてまるで止まっているかのように感じた。

僕は、呆然と立っていた。

誰かが悲鳴を上げた。それによって気が付いたのか周りの人たちが悲鳴を上げた。

僕はそれによって、現実に引き戻された。

彼女を、殺してしまった…。僕が…。

僕は彼女を助けようと思っていたのに…。

後悔してももう遅かった。もうどうにでもなれ、そう思った。

「死んじゃえ、死んじゃえ、みんな死んじゃえ。」

叫び逃げ惑う人々を捕まえ、ひたすらナイフを刺す。

「僕は悪くない。あいつが、お前らが悪い。」

しばらくすると、僕は警察にとらえられた。手錠をかけられ、

「犯人、確保。」

僕は引きずられながらパトカーに強引に乗せられる。

「あああああああ、僕はこんなことをするつもりじゃなかったんだ。」

「こんなことになるはずじゃ…。違う、違うんだ…。」

「僕は、通り魔なんかじゃないんだ。」

僕は車に乗せられる最後まで叫んでいた。

僕が最後に見たのは、僕のことをにらむ僕自身だった。

それから、僕は何も考えられなかった。

何も考えられぬまま、留置所に行き、裁判に出て、刑務所に入った。

そして、ただただ刑務所で、自分の行いを悔やみながらその時を待った。

僕にはわかっていた。自分の刑が執行される日が。


そして、死刑執行一日前に僕は思いついたように僕自身に手紙を書いた。

そこにはもう遅い、僕の後悔の念と彼女への謝罪の意をつづった。


そして、彼女を殺してから4年と364日目の朝、

「囚人番号045番、死刑執行だ。」

僕は、看守に連れられ死刑台に上った。

僕はひもを首にかけた。

「最後に言い残すことはないか?」

看守が僕に言う。

「………」

言いたいこと…、それは手紙に書いた。

でもその時僕は気が付いた。僕は明日タイムマシンに乗るのだから、あの手紙が読まれることはないってことに。

僕はまた、ここでも後悔するのか。最後の希望の芽も自分でつんでしまった。


ああ、なんでこんなことになってしまったんだろう。

僕はあれからずっと、後悔をしていた。

そして、これが最後の後悔になるのだろう。



そして、死刑が執行された。


翌日…。

彼は20年たってかわってしまった。彼女への強い思いが、彼に刃を持たせた。

「長い時がたっても変わらない…」

「いつまでも変わらぬ愛などあるのだろうか。」

「さあ、準備をしなければ。何も知らない彼がやってくる。」

次の日の新聞を見ながら、博士はつぶやいた。


ご読了ありがとうございました。

みなさん、いかがでしたでしょうか?

個人的には、結末はこっちの方がしっくりきています。

前作「入れ替わり」同様、少しの後味の悪さや、気味悪さを感じていただけたのならうれしいです。


過去作と同じく、一言でもよいので感想や評価等いただけると、今後の励みになったり参考になったりしますので、ぜひよろしくお願いします。

そして、もしよろしければ過去作の方も目を通していただけたらなと思います。


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