もう一度
ピィィィ、という鳴き声で思考は現実に引き戻される。
通常狩りをするときヒズミは種族上、蜘蛛の糸を張り、獲物を待ち構えている。
本人は気配を殺し、待つだけ。
かかったら殺すだけ。
それだけ。
今回かかったのは、鳥だった。肉も美味しい鳥で、いいのがかかったな、とヒズミも少し喜ぶくらいだった。
鳥は、一つの方向を見上げながら、一心に逃げようとする。ふとそこを見る。何もない。反対。雛の鳴く、巣があった。
雛は、危険を感じ取ったのかシンとしている。
親鳥は相変わらず敵を巣から遠ざけようと必死だ。
ヒズミは、スッと罠に近づく。
そして、糸を解きはじめた。
ピィィィ、と相変わらず鳴く鳥。それは、歓びにも聞こえた。
「お前には、家族がいるんだね・・・。」
白い肌を、雫が伝った。
「私には、誰もいないよ・・・。」
包帯にどんどん涙が染み込んでいき、染み込み切れなかった涙が包帯から溢れ出る。
糸を解き終えると、鳥は羽ばたき、我が子の元へ飛んで行った。
ピルルル、と騒ぐ雛に頬擦りをする親は、ヒズミに孤独を味わわせるには充分だった。
既に狩った獲物を持ち、その場を去った。
走る気にもなれず、懐から取り出した巾着袋に手を入れる。
取り出したのは、チョーカーだった。
それを、首に巻く。
レギウスのくれた物で、あの時は素直にありがとう、と言ったものだ。
あの時は笑顔はつくりものだった。
今なら、本当に笑える。
他人の感情だとしても、本当の笑顔を彼に向けたかった。その時も、彼は頭を撫でてくれた。
ぼんやり歩いていたからか、ゴン、と崖にぶつかってしまった。
「痛・・・?」
疑問系になったのは、彼女のカードに痛みはないから。
痛みばかりの人間など表にはあまりいないため、カードに出来ないのだ。
うぅ、と唸って、自分の進むべき森に目を向ける。
今日は満月か、と思いつつ進む。
神月の夜は魔物も少ない。
その中にいるヒズミは異例なのだろう。
来月は、血月のはず。
魔物が一番多い月の日だ。
当然ヒズミの力も増す。その時、ヒズミの目に銀が映った気がした。
ヒズミが驚いて辺りを見渡し、その方向に駆け出す。
「三枚目、shadowsnake!」
黒い蛇に聖浄師たちへの伝言を伝える。内容は、
『探し人を見つけた。離脱する。ヒズミ』
である。
その先に、走り出る。
「レギウス!」
銀色が煌めいた。
「あ、逃げられた・・・。」
ギルスも、レギウスを何度か見かけたが、こちらを見つけた瞬間に逃げられたそうだ。
だが、その先には、街がある。
そこで、情報収集だ、と駆け出した。