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「あの、ヒズミさん。」

「・・・何?」

「な、なんでもないです。」

「そう。」

ギルスが居た時とは違い、急にムスッとしだしたヒズミ。ギルスが居た時はなんだかんだで楽しそうだったものの、門でギルスに見送られ、草原に出てからはただひたすらに無言。

声をかければ返事くらいはするが、やはり壁があるような気がしてならない。

うーん、と悩むフェインは、他の三人を集めることにした。


「壁があるような気がしてならないのは私だけなの?」

人間の女性、ミルテが首を傾げる。

「気のせいじゃないと思うよ。僕だってそうだ。」

メルテザもため息をつく。

「今はヒズミさんが狩りに出ていらっしゃるのでこんな話もできますが・・・。」

「ギルス王も言ってたとは言え、俺たちだけにこんな態度だとね・・・。ギルス王にはあれだけ懐いてたから逆にへこむよ。」

続いてメイラ、フェインとため息をつく。

「なんとか方法はないのかな?」

とは言ったものの、ほとんど考えは出なかった。


その頃、狩りに出かけたヒズミは。


(信用は難しい)

自分のトランプにあるとはいえ、所詮は紛い物の感情か、と疲れたように息を吐くヒズミ。

ヒズミ自体は嫌っているわけではないのだ。

ただ、信用の基準がわからないだけ。ギルスや、もう一人の友人、レギウスと出会ってから、信用はいつの間にかトランプになっていた。

でも、それはあの二人だからこそ。他人といるとき、ふとあのカードを見ると、それは色褪せて、『使えない』ことを意味していた。

レギウスは、復讐と、約束のために。

ギルスは、レギウスがチームを離脱したのをきっかけに、民の声に応えるため、国に戻った。

ヒズミといえば特に何もないまま、山奥で見つけた屋敷に住み、ただ何もせず、考えることもしなかった。

一応二人には連絡した。

手紙をつけた蛇は帰ってきて、ギルスの方は、返答の手紙を渡された。レギウスの方は、ヒズミの送った手紙をそのまま返してきた。開封の跡はあった。

そんな時だ、ギルスに呼び出されたのは。

元々二人と離れて正に抜け殻になってしまっていたヒズミにとって、それはまあまあな提案ではあった。

今のヒズミと、三人で旅をしていた時のヒズミでは格好も、性格も明らかに違っていた。

三人で旅をしていた時のヒズミは、小さなシルクハットの髪飾りをつけ、服はそのまま、黒と白のボーダーのハイソックス、黒い靴を履いていた。

奇術師として、様々な芸をし、人々を喜ばせていたヒズミは、言動も明るいものだった。

トランプもその頃には既に40枚ほど溜まっていた。

ヒズミだけが少女の姿だったが、少女とは言えど15歳程の見た目ではあった。

別れてから何もしていない、とは言ったが、蛇たちを遣い、各地でレギウスを捜していた。

(あの時は、急に孤独を感じてしまった・・・)

傍に誰も居ない。

それは、感情の不安定なヒズミには充分に不安を与える要素だった。

(今思えば私はレギウスのことが・・・いやいやないない。レギウスは、ただの仲間。それ以上でも、それ以下でもない。そうに決まってる。もしそうだとしても、向こうは違うだろうから。)

ヒズミが壁を作るのは、レギウスやギルス以外の誰かと共にいて傷つけない自信がなかったから、と言えた。

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