原因を問う
何かあったら電話かけてと言われて、通話を切られた。何かあったから電話かけたんじゃないですか。助けて、ヘルプ、お人形怖いです。
あんまり何度もしつこくかけるのはうざいよな、携帯を名残惜しく見つめて、諦める。心細いけど、一人で何とかしなくちゃ。
もう一度玄関に出て、扉を押してみる。ガタンと音が鳴り、やっぱり開かない。引く、開かない。だめもとで横へ……うん、開きませんよね。
「もうやだよ、お腹減った。辛い」
サンダルを脱いで、靴箱の上をちらりと見れば、そこにお人形は居なかった。うん、もう驚き疲れて悲鳴を上げる元気もないよ。でも内心びっくりさね。
テレビを点けて、冷蔵庫から麦茶を、流しの横のかごからコップを取り出して、机に置く、と、そこにはお人形とオムライスが先客として座っていた。
「うぁっ」
驚いた拍子に、離れかけていた手がコップに当たって倒れかける。すると、なんてことだ、すかざずお人形がコップを捕まえ転倒を防いだではないか。驚く事が多すぎて、私が転倒しそうだよ、くそう。
「君、動けるんだ、ね?」
そう聞いてみたら、お人形は私に顔を向けこくこくと頷いた。コップにべったりと抱きつきながら、整った顔でじっと見られると、どきどきしちゃうなぁ、うん。
でもさ、あれだよね、誰もさわっていないはずなのに、立ったりいなくなったりしたら、動けない方が怖いものね、だから、動けて良かった…のかな?
まだお人形は私をじっと見てくる。正直すごぶる居心地が悪く、次は何て言えばいいのかと、視線を彷徨わせる。迷わせ、ぐるぐるしていると、ふと玄関の方で視線が止まった。
「このオムライスを用意したのは、君?」
お人形は頷く
「玄関扉を閉じちゃったのも、君?」
お人形は頷く
「扉が開かなくなったのも、君のせい?」
お人形は、頷いた。