色々と見つける
ひんやりと冷たい床に転がり涼む。滝子には電話口から平謝りして、取り敢えず許してもらった。
貴代のやつ、起こしてって言ったじゃんと、始発で帰った自由人にぼやく。今日も貴代は仕事なんだろうか。てかなんの仕事してるんだろう。
貴代の仕事……なんでもいい、なんでもいいからミスってしまえばいいのに、些細なミスをおかして同僚に笑われてしまえ。
一通り貴代を呪ってから起き上がって、出しっぱなしだったコップを水洗いして、かごへ伏せて置いておく。 汗を吸ったパーカーは洗濯してしまおうと、洗濯機のふたを開けた。すると洗濯機の底に、人間そっくりな顔をした人形がお行儀よく座っていた。
「っひ……」
な、ななななにこれ!の、呪われたの、家が呪われたの? 誰か助けて、約束やぶってごめんってば滝子! そしてミスれって言ってごめん貴代!
腕を伸ばして人形の頭を恐る恐る小突くと、ごろんと横にこけたので、悲鳴を上げて飛びのいた。
「ああ、もう……私は一人で何やってんだ」
とりあえず冷静になって、現実と向き合おう。あの人形を何とかしないと洗濯できないので、そっと持ち上げる。これで頭がもげたりしたら……とか、いらない想像は黙殺して、そっと近くの棚の上に座らせる。うん、よくよく見れば美人さんじゃないか、それがまた怖いけど。
お人形の代わりにパーカーを洗濯機の底に投げて、お人形はそっと持ち上げ移動する。どこに置こうか、捨てたりなんかしたらガチで呪われそうだし。
そっと移動して、玄関の靴箱の上へ恐る恐る座らせ、ついでに洋服の乱れも整えておく。それから、玄関の戸も少しだけ開けておいた。
「はぁ、すずしい」
緩く吹き込む風が、いつの間にか熱を持っていた体に心地いい。少しばかり堪能して、室内へ振り返る。
あのお人形ならば、靴箱の上が気に入らなければ、自分で歩いて移動するだろう。
「……あれ?いやいや、なんでだよ。動いたら怖いよ」
頭も暑さのせいだろうか、だいぶ思考能力がおちているようだ。なんで動くとか思っちゃったかなぁと苦笑していると、傘立てが目に留まった。玩具の刀が刺さっていた。
「今度は刀かよ……」
なんだ、今日は厄日なのか。