6枚目…新生徒会長
「…え?生徒会に…ですか?」
「あぁ。浅井は忙しいから難しいだろうとは言ったんだが…会長は折れなくてな」
「…はぁ…」
新一年の入学式も終わり、俺たちも無事に(葵は病院で受けた追試を見事合格したらしい。…凄い才女だよな)進級した。だがそんな折に担任に呼び出され、何かと思い話を聞くと、どうやら新しく入った生徒会長に俺の入会を打診してきたらしい。…担任は俺の最近の事情をくんでくれていて一度は断ったらしいのだが、相手側は折れず。逆に担任が折れて俺に顔を出せといってきているのだった
「…断っても良いんですよね」
「それは自由だな。あくまで俺は浅井と汐見を引き合わせてほしいって頼まれただけだしな」
「…わかりました。今日の放課後、行ってみます」
「おう、頼んだ」
「ユウ?今日これから暇?」
「…悪い、これから少しいくところがある」
その日の放課後、俺は荷物をまとめていると真実に声をかけられた。こんなときはおそらく遊びにいく相手をさがしているのだろう。とりあえず断ると、少しむっとした顔をしていた
「今日もあおっちの所?最近熱心だねー?」
「いや、今日は違う。会長からなんか呼び出されてるみたいでな」
「あぁ、あの隠れ鬼さん?」
「隠れ鬼?」
「うん、あっちのクラスではそう呼ばれてるみたい。普段は温厚なんだけど、時々すごい怖いときがあるって話からそうなったみたい。…怒らせたらヤバイかもよ?」
「あ、あぁ…気を付ける」
真実の忠告を聞いて、俺は生徒会室にやってきた。…怒らせたらヤバイ、か
「…すいません、3年の浅井です。呼び出しを聞いたんできましたが…」
とりあえずドアをノックし、様子を伺う。…返答がない。あれ、今日って言ってたよなー…
「…飲み物でも買ってくるかな」
とりあえず俺は一度その場を離れ、下の階にある自動販売機へやってきた。…と、そこで何やらジュースの取り出し口で格闘してる女子がいた
「…やっぱり、2本まとめて取るってズルしちゃダメだったかな?引っ掛かっちゃって抜けないよ~」
「…どうしたんですかね」
とりあえず放置はなんとなく気分が進まないのでその女子に声をかける。女子は振り向くと苦笑いを浮かべた
「あ、えと…その、中で引っ掛かっちゃって、ジュースが取れないの…困っちゃって」
「…」
俺はとりあえず取り出し口を見る。…
「…せいっ!」
そして俺は手前に引っ掛かってる缶を無理やり引き抜いた。その拍子に奥のジュースも取れた。…女子の力じゃ確かにとれない感じだな。お陰でこっちのジュースの缶の飲み口が凹んでしまった
「…その、すいません、凹んでしまって…」
「いえいえ。取れてよかったです。これからお客様が来るのにこんなところでもたついて…では、私はこれで。いつか必ずお礼はさせていただきますので」
「…はぁ」
そして彼女は俺に一礼すると俺が来た道を歩いていった。…どこかの部長なのだろうか、お客様…って、いってたし
「…っと、俺も何か買うんだった」
とりあえず俺もジュースを買い、時間的にも大分空いたので戻ることにした
「…」
生徒会室前に再びやってきた俺。…さて、改めて…
「…すいません、誰かいませんか」
ドアをノックし、声をかけて待つこと数秒、ドアが開いた。そして出てきたのは…先ほどの子だった
「…あれ?君は…もしかして、君が浅井君…?」
「…てことは、俺を呼んだのは…」
「あ、はい。私です。…不思議ですね、まさかニアミスしていたなんて」
「…確かにそうですね」
「では中へどうぞ?立ち話もなんですから」
俺は彼女に促され、室内にはいる。そこはほぼ、十和田先輩がいたときと変わらない空間だった。違うところは…わずかに女の子っぽい、香水の匂いが鼻をくすぐることだろうか
「…はい、お粗末ですか、飲み物とお菓子です。気を楽にしてくださいね?」
「は、はぁ…?」
俺を座らせた席の向かいに彼女は座る。…こんな、大人しい子が会長、か…
「…もうおわかりだと思いますが、私の名前は汐見 幸と言います。ここ、十和田高校の生徒会長です」
「…前会長からは話は聞いてます。3年の浅井です。…今日は俺にどんな話が…」
俺は飲み物を一口含み、尋ねた。すると彼女…汐見も俺にならい飲み物を一口飲み、答えた
「興味本意、ですよ」
「…は?」
「浅井さんの働きはかねてより一般生徒の立場から拝見してましたし、あの前会長があそこまで認める人間、私は知りませんでしたから。一度あって話をしてみたいな、と」
「…えーと、俺を生徒会に引き入れようとしていたって話を…」
「まさか。…私にはそんなお力はありませんよ?確かにそちらのクラスの担任さんには一度生徒会室に呼んでほしいとはお話しましたけど…」
…どうやら、その話をした時点でややこしくなってしまったらしい。…正直、かなり緊張して損したな…
「…そんなことなら、クラスにでも来てくれたらよかったのに…」
「…私がそれをするのは、おそれ多いですよ。ただ興味があるってだけで…」
「…それを言ってしまえばここに呼んだ時点でそうなんじゃ…」
俺の言葉に汐見は苦笑する。…そして、他愛のない時間は過ぎ…
「もうそろそろ、帰る時間ですね?」
「…あぁ、そういえば…」
「一つだけ、お願い、良いですか?」
もう帰ろうと二人で話し、荷物をもって席を立とうとすると汐見に止められた。…
「無茶なお願いでなければ」
「…生徒会に入って、とは言わないから、時々お手伝いをお願いできないかな?私たち…未経験の人しかいないから、できれば経験のある人がいてくれると…」
「…ま、時間が空いたら考えますよ」
俺は曖昧な返事をして生徒会室を出た。…汐見幸、か