3枚目…私の中の真実
「やっほ!勇樹、元気~?」
「…まぁな」
2月13日、今日も1日は進んでいた。…あれから数ヶ月経ち、葵は再び記憶のほぼ全てを失った。…それでも俺の時は無情にも動き続けていた
「…あおっち…葵の様子はどう?」
「…相変わらずだ。全く話ができない。…見知らぬ人間、とは思われてないみたいだけどな。それでも…な」
「…そんなときでも元気出さなきゃ!葵も警戒しちゃうじゃん?」
「…頭ではわかってるつもりだけど…」
真実が俺を必死に励まそうとしてくれている。…だけど、俺の記憶からはあの日の出来事は消えなかった
「…そいやさ、勇樹。この前まで…葵と付き合ってた?」
「…あぁ。まぁ…それも忘れているだろうけどな。もう終わったことだ」
「…」
真実が聞きたいことが何なのかは分からない。だけど何かを思案しているようだった。…俺と葵の関係は、再び白紙に戻っている。正直…それも堪えていた。そのようなことを考えながら、今日1日も過ぎていく…
「…こんにちは、そしてお久しぶりです、おばさん!」
「…あらぁ、真実ちゃん?しばらくねー?元気だったぁ?」
「はい、元気してましたよ?」
その日の放課後、真実は葵が入院している病院に来ていた。待合室では葵のお母さんが迎えてくれた。…葵が記憶を無くしてからは実は一度も会っていなかったりする
「初めてかしら、真実ちゃんが来てくれたのって~」
「そうですね。あれから、思うところがありましたから」
「別に真実ちゃんのせいじゃないわよー?それは葵だって分かってるわぁ」
「…じゃあ、失礼します」
「はぁい。たくさんお話してあげてねー」
真実は一礼すると病室の方へ向かった。…そして葵の病室の前に立つ。名前のところには「川原 葵」と書かれていて、それで真実は再び胸を痛めた。…親友を、何故二度も救えなかったのか、と
「…あおっち~?入っていい?」
ドアをノックし聞いてみる。すると一拍おいて
「…どうぞ?」
と返ってきたのでドアを開け、中に入る。なかは個室で、白を基調とした形になっていた。そして病室の奥にあるベッドに葵は座っていた。…パジャマを来たその姿はとても記憶を失っているようには見えなかった
「お母さんからきいてるかな?私、前はあおっちと一緒に勉強してたんだよ?」
「…さがみ…まみ…ちゃん、でいいの…かな?」
「そうだよー!…お母さんの話、信じてくれるかな?」
自分の話は前もって葵の母に伝えてもらっていた。だが葵は記憶がない以上、信じられない可能性もあった。だが葵は笑顔で首を縦に振った
「…何にも覚えてないけど、その感じ…知っていたような、気がするから」
「…さすが、あおっちは心が広いね!嬉しいよ~」
「…それで…どうしたの、かな?…真実ちゃん」
それから、真美と葵は長い間話し込んだ。学校のこと、日常のこと、友達のこと…とにかくたくさん、葵に話した。…彼女は、とても嬉しそうに、そして、少し寂しそうに聞いていた
「…はー、もうこんな時間かー」
「…ふふっ、大分、お話した…もんね?」
外はもう夕日がかなり沈み、大分暗くなっていた。…さすがにもう帰ろうと、腰をあげた真実が、最後に一つ、葵に話を持ち出した
「…ねぇ、あおっち。…勇樹、の事は本当に覚えてないの?」
「…うん。でも…彼が来ると、安心する、かな…?」
…真実はそこで諦めがついた。…やはり葵は、記憶を失っても勇樹が好きなのだ、と。だからこそ真実は止まらなかった。それが私の「真実」だから
「…私、今度勇樹とぶつかってみる。あの腑抜けにはこんなに思っている乙女がいるんだぞ!って教えてやらなきゃ」
「…喧嘩はダメだよ?」
「あぁ、喧嘩じゃないよ?むしろ告白…かな?」
「…?」
葵は言葉の意味が分からないと言うように首をかしげる。…そう、私、相模真実はいずれ…、浅井勇樹に告白をする。…決して勝ち目のない、報われない恋なのはわかってる。それでも、私は…真実だけを、追いかけ続ける




