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▼35.さぁ、作戦会議を始めよう

 よくよく考えてみたら妖怪とか戦う巫女さんとかが居て、死んだ人が生き返るとかいう世界なんだもの。世界が閉じてるとか言われても全然おかしくないよね!

 驚きのあまり少々混乱してしまったが、まぁやることは変わらない。というわけで、改めて近所の駅に到着したところで降りた僕達は、家に着くとメモ帖を用意して、分かったことを早速いくつか書き込んでいく。


 1.僕は主観的にも第三者的にも、昨日の時点で一度この世界において死亡した。復活はしたが記憶障害が一部起きている。

 2.この世界は町の外が存在しない。正確には、最寄の村あたりまではカバーされているようだけれど、少なくとも市と、温泉の観光名所があるはずである隣県は存在しない。要するに、現実の世界ではない。

 3.津軽さん曰く、死の存在しない世界。望んだ誰かだけがいる世界らしい。

 4.この世界には妖怪や魔法みたいな物が存在するし、人外じみた人も存在する。

 5.嗣深は“外の世界”から来た。

 6.混乱して忘れそうだったけれど、この町と近隣の村だけしか存在しない世界ということは、つまり神生会は、この世界の殆どを牛耳っている状態と言っても良い。

 7.正義の味方は、宇迦之さんとおにゃんこ仮面とやら。あと虎次郎くんもやっているらしい。虎次郎くんの戦闘シーンは見たことが無いけれど。

 8.治癒魔法みたいなものは、宇迦之さんとおにゃんこ仮面が使える。虎次郎くんは使えない。

 9.この世界では誘拐事件が頻発している? 誘拐された人たちのことが表沙汰にされていない。

 10.妖怪みたいなナニカは誰彼構わず襲っている?(昨日事故った後に僕が食べられた)

 11.多分、神生会は嗣深、或いは僕達を狙ってる?


 大体こんなところだろうか。

 ただ、3については嗣深が大好きだったらしいお母さんがこの世界に居ない時点で、ちょっと怪しいと思っている。とはいえそれは書き込まないでおく。嗣深に今はあまりその話題を振るべきでは無いだろうと思うからだ。

 そんなわけで、メモ帖に書いた内容を嗣深にも確認すると、大体そんなものだと思うとのことなので、ひとまず良しとする。

「さて、それで嗣深がこの世界に来た理由と方法みたいなのと、この世界について他に知っていること、あとは取り込まれるって部分について教えて」

「うん。オッケー、って言っても、この世界についてはわたしも聴いた話だからそんなに詳しく無いんだけど」

 そこのところよろしくね? と小首を傾げて言ってきた嗣深に頷くと、嗣深は語りだした。

「まず、わたしがここに来た理由からだけど、これはわたしのお母さんが死んじゃったことから端を発してて、児童養護施設? とかいうところに入れられるかもしれないってなった時に、わたしの能力について教えてくれた人がこの世界と行きかたについて教えてくれたの。

 その人曰く、この世界は理想郷なんだって。皆が幸せに暮らすための世界で、ここでなら誰にも迷惑をかけずにわたしでも存在が許される、ってことだったんだけど……まぁ迷惑かけずに済むっていうのは嘘だったみたいだけど」

「自虐は良いから続けて」

「あ、うん。えーっと、で、この理想郷っていうのがいまいちわたしもわかってなかったんだけど、分かりやすくその人が例えてくれた話だと、その人のために用意されたゲームみたいなものなんだって」

「ふむ? ゲーム?」

「うん。自分の好きな家族や友人を用意された世界。そこで自由に生きるっていうゲーム。あのね、えっと、言い辛いんだけど、こっちに来た時のわたし、割と最初から馴れ馴れしかったでしょ?」

「うん、そこは大いに思った」

 というか自覚はあったのだね、と頷くと、嗣深は溜め息を吐いて項垂れた。

「うぅ……これでも半信半疑ではあったから、多少は気を使ってたつもりなんだけどなぁ……でも、まぁあの、その最初から馴れ馴れしかったのは、つぐにゃんがわたしのために用意された家族……ゲームでいうNPCみたいなものだと思ってたの。ううん。つぐにゃんだけじゃない。この世界の人全員が」

 なにそれ自意識過剰。

 一瞬、そうツッコミ入れようかと思ったけれど、真面目に言っているみたいなので無言で頷いておく。

「まぁ、勿論そんなわけがないっていうのは、つぐにゃんがわたしの抱いてたつぐにゃん像とちょっと違ったから少ししたら分かってきたんだけど」

「え、嗣深が望んでた僕ってどんなのだったの」

「身長160くらいいってて、スラリとしたイケメンなんだけど笑顔が可愛らしい王子様で、スポーツも勉強も家事も出来て気さくでお人よしで人気者で、特にわたしに優しいの!」

 ふんす、と意気込んで言う嗣深に「うわー」という声が思わず出たけれど、仕方ないよね。

 なんだその、少女マンガに出てきそうなヒーロー。

 っていうか、そんなイメージなら初対面の時に既に破れていたことだろう。僕の身長130にも達していないんだぞ。

「あ、アレだよ? 初対面の時に小さかったから、あれ? ってちょっと不思議にも思ったんだけど、可愛かったし、有りかなーって思ったよ!」

「いつかその理想像に追いついてみせるから覚悟しろ!」

 嗣深のフォローなのかなんなのかよく分からない言葉に、僕は若干自棄になりながら返すのであった。

 しかし自分の好きな家族を用意してもらえるということなら、お母さんを望んだりしなかったのだろうか。もしそうなら初日からおかしいと気付くだろうし、そもそも僕側がお父さんから聴いていたこちらに来た理由が“嗣深の母親が亡くなったので引き取る”ということだった以上、本当に望んだ家族が得られるというのなら、嗣深が最初から望まなかったことになるのだけれど。

 少し迷ったけれど、そのあたりにはツッコミを入れないことにした。また暗くなられても困るので。

「ところで話が逸れてきたので戻して。その理想郷っていうの以外は、他に何か聴いてるの?」

「あ、そうだね。ごめん。えーっと、この世界について事前に教えてもらえたのはそのくらいなの。で、こっちに来た時のことなんだけど、荷物をまとめて、その世界に送って欲しいものと、自分で持って行きたいものを好きに選べば送ってあげるって言われて、準備が終わったら寝たの。それで気付いたら、つぐにゃんに会いに行く電車の中にいた感じだから、どうやって来たのかはわたしもわからないの」

「ふむ……」

 明らかにその嗣深に教えてくれて送ってくれた人というのが怪しいのだけれど、覚えていないとのことだしそこに関して今は気にしないようにしよう。全ての元凶がその人の可能性もあるから、宇迦之さん達にも後で確認はとるけれど。

「で、最後に取り込まれる、の意味だけど。教えてくれた人の言葉だと、徐々に世界に馴染んでいって、元の世界の辛いこととかを忘れる、或いは辛かったこと自体が無くなって、記憶の矛盾が無くなって、その世界のちゃんとした住人になれる、だったっけ。確かそんな感じ」

「って、言うと?」

「んーと、ほら、あの世界が閉じてることを知ってたりした時点で大体分かると思うんだけど、わたしって外から来たでしょ? なんか本来の入り方じゃないと、少し記憶の整理とか世界からの恩恵とかが薄いんだって。

 本来の入り方っていうのがよく分からないけど。だからつぐにゃんがちっこいのもそのせいだと思ってたし、ちゃんと世界に馴染んでお母さんが死んだことが記憶から消えた時には、こっちの世界にお母さんが生き返って、元から居たように世界が改変されるんだって。誰にも気付かれないまま」

「……そっか」

 つまり、いきなりうちのお父さんにお嫁さんが出来て、それが嗣深のお母さんだった人だった、ということになるところだったのか。そして昔からそうだったという風に記憶が書き換えられて。

 それはそれで、悪くないのかもしれないけれど、だけどそれは。


 それは、結局作り物にしか過ぎないんじゃないのかな。


「なんとなく言いたいことはわかるよつぐにゃん。冷静になって考えれば、お母さんが生き返るって言っても、言われた通りゲームみたいな世界でってことは、本当のお母さんじゃなくて、わたしの妄想した、勝手なお母さん像が出てくるだけだからね。その上本当のお母さんのことを忘れちゃうんだもん。最低だと思うよ。

 でもね、この世界に来る前はね、お母さんが生き返るって聴いたら、それだけで信じたくなっちゃうじゃない? わたしのせいで死んだのに、それが無かったことになって、元気な姿で生き返って、わたしの変な能力がもう通じなくなるから、皆で幸せになるって言われたら、信じたくなっちゃうじゃない?

 まぁ、結局、わたしの能力がそのまま大事な人に迷惑かけるって分かった以上は、また同じ目に会わせるくらいなら、本当のお母さんだったとしても、傍に出てきて欲しくないけど」

 本当にバカな話だよね、と笑う嗣深にかけられる言葉は無い。

 それは多分、僕でも同じ判断をするだろうし、同じことを考えるだろう。

「辛いことは忘れられるし、もし中で辛いことがあってもすぐに忘れることが出来るって言われたのに、つぐにゃんは覚えてるし、わたしも覚えてるし、本当騙されたー、って感じだよねー」

 今度会ったら文句言ってやるんだから、と嗣深が言う。そうだね、さっさと会って文句をつけて、この世界から皆を出してもらおう。

「さて、まぁとりあえず大体のことは分かったよ。あとの問題は、この世界がどういう原理の元存在するのか、だね」

「っていうと?」

「あんな物騒な物がいる世界からは、皆と一緒にさっさと脱出しようねって話。ここが現実世界で、あんなのが大暴れしてるなら問題だけど、ここが現実世界じゃなくて、作られた世界だっていうなら、この世界を作った人にお願いして出してもらうか、虎次郎くんと宇迦之さんにでも頼んで絞めあげてもらって、出してもらうとか」

「他人頼みだね!」

「だってこちとら一般人だし」

 確かにそうだねー、と嗣深が笑う。どうやら反対する気は無いらしい。まぁあんな化物が居る上、新興宗教団体が世界を牛耳ってるところでのんびり暮らしたいなどとは誰も思わないだろうしね。

「あ、でもそれだと虎にゃんの力借りるのは難しいんじゃない?」

「え? なんで?」

「だってこの世界作ったのって、多分、神生会の神様でしょ?」

「……え、マジで?」

「うん。だって状況考えてみたらそれしか考えられないじゃない」

 言われてみれば、そもそも世界作った本人ならばこの世界では最高権力者であって然るべきなのだから、この世界を神生会が牛耳ってるのであれば、必然的にそのトップが創造者であってもおかしくはない。

 っていうか、だからこそ神様を名乗ってるのか、あそこのトップ。

 僕は思わず頭を抱えた。

 待て、落ち着け、まだなんとかなるはず。諦めない心が大事。死ぬことは無いって分かったんだしちょっとくらい大胆な作戦でもいけるはず。

 その作戦が全く思いつかないけど、とりあえず前提条件というか、この世界のことと、現状の整理は終わったのだ。こう、なんとかなるだろう。っていうかなんとかしないといけない。

 アレだ。直訴するか。いや、そう簡単には会えない……いや待てよ。虎次郎くんがセミナー行ったって言ってた時に確か、あそこの会長、自称神様なんやで、とか笑って言ってたはず。

 ということは、割とあそこの会長は頻繁に顔は出してるのかもしれない。意外といけるかも。

 もしくは、宇迦之さんに話して、虎次郎くんの説得に協力してもらって、一度嗣深が見せてくれたように、外の世界が存在しないことを見せて、脱出に協力してくれるように頼むとか。

 うん、まずは協力者集めだな。ひとまず現段階で一番手を貸してくれそうなのは宇迦之さんだ。そちらから頼んでみるとしよう。こちらの知らない情報とかも知ってるかもしれないし。

「よし、頑張ろう」

「がんばろー!」

 ※転生傍観のほうの更新は、次回更新時予定です。

 昔執筆に使っていたネットブックさんがデータごとオダブツしていましたが、この度、執筆用のネットブックを注文したので、これで電車通勤によって生じる携帯いじるしかできない時間を執筆で潰せるように。

 暫くしたら更新速度が少しは回復すると思います。

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