▼24.平和な勉強会
転生傍観とEXのほうも更新してきました。二話同時更新予定でしたが時間が足りず。次回のこちら更新にあわせて向こうも更新しますね!
バタリ
冬休みに入り、学校はおやすみ、とくれば子供がすることなんて大概遊び呆けることなのだけれど、僕達に関してはそれに当てはまらない。
12月21日。終業式翌日になり、それなりに雪は降っているもののお父さんが朝から除雪機で雪を綺麗にしてくれたため雪かきの手間もなく、そのお父さんはご飯を食べてからすぐお仕事に出たので家にはいないのを良いことに、僕の家に集まっての勉強会中なのである。
メンバーは僕、嗣深、虎次郎くん、宇迦之さん、ガイアさんに、何故かガイアさんに連れてこられた津軽さんだ。本当は早苗さんも呼ぶ予定だったのだけれど、神世会の会合みたいなのがあるとかで来れないとのことらしい。津軽さんは早苗さんの代わりとしてガイアさんが拉致してきた。
まぁ、昨日の今日なので早苗さんと顔合わせた場合どう対応すべきなのかいまいちわからないので丁度よかったといえば丁度良かったのだけれど。
「ヨッシー、ウノしようで、ウノ」
「落ち着いて虎次郎くん。まだ勉強始めて10分だよ」
「そうだよ、せめて冬休みの友が半分終わるくらいまでは粘ろうよ。虎次郎」
「ウノ! ウノやりたい!」
「やろうぜウノ! 俺もやりてえ!」
そして勉強会しようってお題目で集まった筈なのだけれど、始まってすぐに遊ぼうとするあたり本当お子様である。
「ねえ、私は確か、勉強会やるから来いって連れてこられたはずなんだけど、なんなのアンタ達のそのやる気のなさは……」
津軽さんが呆れたように虎次郎くんたちを見てそんなことを言うけれど、全く持って同意である。
それにしても津軽さんって僕と挨拶くらいしか普段しない程度の仲なのに、まったく躊躇せずに(ガイアさんに引っ張ってこられたとはいえ)普通に僕の家にあがりこんで馴染んでいるのは何故なんだろうか。結構あつかましい人なのだろうか。
いや、別に嫌なわけではないのだけれど、ちょっと思った。
「待って虎次郎、今どこからそのウノ取り出したの」
「手品や! ほれ、口からダバー」
「キャー、虎にゃんかっこいー!」
「いやむしろキモイだろ! アハハ! いいぞもっとやれ虎次郎!」
「どやぁ」
「楽しそうだなぁ虎次郎くん達は……」
そして、今日は勉強会しようって言い出したのは虎次郎くんだったはずなのに、どんだけフリーダムなのだろうか。
「ねえ、普通に遊ぶだけなら私帰るわよ……。そもそも勉強もアンタ達から何か学べるとも思えないし……」
津軽さんが疲れたようにそんなことを言い出したけれど、まぁ気持ちは分かる。津軽さん成績良いもんね……。早苗さん繋がりでガイアさんとも一応交友はあるからついてきたけど、実際は面倒くさいとかだよね? うん、あつかましいとか思ってごめんなさい。
しかしそんな疲れた顔の津軽さんに、虎次郎くんが何故かドヤ顔で歯をキラリと輝かせて言った。
「人生の楽しみ方教えるで!」
「帰るわ」
気持ちは凄いわかるよ、津軽さん。本当ごめんなさい、うちの親友がバカで……。
「あ、じゃあじゃあわたしはお料理教えるよ!」
「んじゃ俺は実技体育な!」
「え、あ、じゃあボクは薀蓄でも」
「え、なにこの流れ、自分の得意なこと披露大会なの?」
料理枠が取られたら僕がアピールできるポイント無いんだけど。
「ねえ、本気で帰るけどいいわよね。あ、佐藤くんお茶ご馳走さま」
「え、あ、うん。お粗末様でした」
「待ってえりにゃん! 帰らないでー!?」
「せやせや! 一緒に遊ぼうで!」
「そうだぞ! なんのために呼んだと思ってんだ!」
「ねえ、私キレても良いかしらね? なんのためにって勉強会じゃないのかしらね、そこのキラキラネームのバカ」
「キラキラネームをバカにすんな! かっこいいだろ!」
「摩周と書いてマッシュと、織瑠手賀と書いてオルテガとかも欲しいところやな」
ジェットストリームアタックでもかますの? ねえ。
僕のツッコミは無視で、ガイアさんが「それ良いな。いねえかな、マッシュとオルテガ」とか言い出した。本当この人達は自由すぎる。津軽さん真面目にちょっとイライラしてるみたいだから、フォローすべきじゃないのかな君たちは、ねえ。特にガイアさんは呼んだ本人なんだから。
「これだからガキの相手は面倒なのよ……」
「なんか本当ごめんなさい津軽さん。うちのバカたちが……」
「あぁうん、別に良いわよ……アンタに怒ってるわけじゃないから安心しなさい佐藤くん」
「あ、嗣深ちゃんここの答え間違ってるよ」
「えー? うそうそ。えーと、これをこうして……ありゃ、本当だ。これだから数学さんは苦手だよー」
「あ、刹那、ここ、解答欄一個ずれて、これ以降の全部不正解やで」
「え、嘘!? ……あ、本当だ。ありがとう虎次郎」
「おい虎次郎、俺全部わからねえから代わりにやってくれ!」
「ガイアっちはもうちょい努力しようや? な?」
「なんだかんだでちゃんと勉強してるし! ウノはどうしたの!?」
「何言っとるんやヨッシー。今は勉強会中なんやからウノは後やで。楽しみなんは分かるけど、ちゃんと勉強はしよな?」
「そうだよつぐにゃん!」
「そうだぞ義嗣! あ、お前でいいや、ちょっとこれやってくれよ」
「納得いかなーい!」
なんなの!? なんで僕が責められてるの!?
叫ぶ僕に騒いでいた三人組が生暖かい視線を投げてきた。いつか殴る。対照的に津軽さんは冷めた目でこっちを見ていた。ごめんなさい騒がしくて。
「佐藤くん、慣れよう? ボクはもう慣れたから」
「うぅ……宇迦之さん、どうして僕等のまわりは変なのばっかりなんだろうね……」
「類友という言葉を送るよつぐにゃん!」
「ええい黙れそこなちびすけ!」
「数センチしか違わないじゃない!」
「胸やったら数センチの違いはでかいで」
「ハッ、それは確かに――ねえ、なんでここにいる人たちはつぐにゃん以外は皆おっぱい大きいの……?」
「待て、なんで僕を比べる対象に入れた」
女性陣全員と僕の胸元を何度も見てから絶望したかのように言ってぐったりした嗣深にツッコミを入れる。
いい加減そのネタは飽きたよ。
「食生活じゃねえの? 俺は鶏肉と牛乳好きだぜ!」
「あぁ、そういえば鶏肉は胸大きくなるなんて俗説があるけど、あれは鶏の育成時に女性ホルモンを与えている場合があるからその影響で人体にも女性ホルモンが、とかいう話があるけど、正直眉唾というか科学的根拠は無いらしいよ。まぁ体脂肪を増やせば胸にもまわるから、お肉を食べればバストアップに効果があるとも言えるけど、結局それは太るってことだからお肉ばっかり食べるのはやめておいたほうが良いと思う」
「……私はそんなに無いわよ。まだ……そこのアレな二人と比べないでちょうだい」
「ふっくらしてるもん! えりにゃんおっぱいふっくらしてるもん!」
「待って、アレって何かな、アレって、ボクもその、アレというものに含まれてるのかな」
「せやな。大きくはあらへんけど、あるから勝ち組やな。つぐみんはアレや、賓乳はステータスや、希少価値や」
「ねえ、頼むからさ、男の子いるのにそういうこと連呼するのやめようよ、本当……あと虎次郎くん、胸で思い出したけどあとで一発ひっぱたくから」
「あ、忘れてた! そうだね、ひっぱたかないとね!」
「なんでや!?」
「ねえアレってなんなのかな!?」
我が家は今日も平和です。
僕はなんだかもう疲れたので、お茶を啜りながら冬休みの友の解答欄を埋める作業へと戻るのであった。




