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▼18.ホームnotアローン大作戦

 どうもここ最近疲れが抜けず体調不良が続き、早寝の癖がついてしまったせいで中々時間がとれず、昨日は投稿、できませんでしたー!(土下寝

 ところで何か凄い鬱展開入るんじゃないかとご心配している方も多いようなので言っておきます。

 義嗣だけなら確かにその可能性凄い高いですけど、パーフェクトラッキーガール嗣深がいるので比較的そんなことは無いと思わなくもないこともないですよ!


 ……ごめんなさい断言は出来ないですけど、た、多分そこまでひどいのは入らないと思います。とりあえず虚淵さんレベルの鬱は無いはずなのでそこはご安心ください。

「というわけで、ホームアローン大作戦を開始しようと思います!」

「二人な時点でアローンじゃないけどね」

「細かいこと気にしたら負けだよつぐにゃん!!」

「はいはい……」

 玄関に鍵をかけて、居間でテレビを眺めながら僕達は緊張感の欠片も無い会議を始めていた。

 先ほどの電話だけれど、嗣深の髪を乾かしてから嗣深の提案によりお父さんの携帯に電話したらあっさりと本人が出て、「お父さん元気?」と訊いたら「あぁ、元気だぞ? なんだ、寂しくなったのか?」とか笑いながら返されたのであの電話は嘘であったと判明したため、篭城戦の準備を僕達は始めたのである。

 正直に言おう。嗣深が居てよかった。僕だけだったら完全に気付かないでそのまま迎えの人の車に乗って連れ去られてたと思う。この子、なんでこんな冷静なんだと思ったけれど、すぐに自分のお母さんで既に一度こういうこと経験してるんだな、と思いなおして訊くような野暮な真似だけはせずに済んだ。

 それにしても、篭城戦って何をやらかそうと言うのか、という話である。居てくれて良かったけど、頭のネジはどこか外れかけてるのではないだろうか。警察、は流石にご近所さんだと思うと電話する勇気が無いけれど、普通に居留守でもすれば良いのではなかろうか。或いは、来た人に直接問いただすとか。

 と、発言したらどこからか取り出したホイッスルを鳴らした上で怒られた。うるさい。

「甘いよつぐにゃん! わあためにいちごジャムとはちみつかけたくらい甘いよ!」

「そんなの食べたら虫歯が無くても歯が痛くなりそうだね」

「もう! 茶化さないの! 真面目な話なんだよ!」

 真面目な話ならそういう言い回しはどうかと思うの僕。

 お茶を啜りながらそんなことを思う。

「のーう! もう、なんでつぐにゃんはそんなに呑気なの!? 今日のお昼過ぎに誘拐されかけたんだよ!? 流石にもうちょっと危機感持とうよ!?」

「いや、確かにそうだけど。慌てても仕方ないじゃない?」

 正直、お父さんが無事だったと分かった時点で僕の気力とかは一気に抜けていますので。脱力しまくっています。

「仕方なくても慌てるのー! もう、どうするの!? もし迎えに来たって人が大人何人かで無理矢理連れ去ろうとしてたら! 子供二人じゃどうしようも無いんだよ!?」

「来るまであとどれだけの猶予があるかも分からないのに、家にトラップしかけようとか言い出すほどに慌てるのもどうかと思うの」

「だってつぐにゃん、考えても見てよ! クリスマス前に、強盗とか泥棒とか悪い人が家を狙ってて、こっちがお留守番している子供と来たら、もう篭城戦しかないじゃない! かの有名な映画のように!」

「アレはね、準備期間がちゃんとある上でのお話だし、あとあそこまで殺傷力のある罠を家に仕掛けるのは明らかに問題あるし、後片付けとか大変だよ間違いなく」

「つぐにゃんがノリ悪ーい!!」

「ノリの問題じゃないと思うの、僕」

「大体ね、こんな、あからさまに続けておかしいことが起きてる以上、絶対何かあるよ! つぐにゃん、この家って何か恨み買うようなことしてたりする?」

「いや、特に覚えはないけど……せいぜいこの地区ではうちだけ神生会に入会してないとか、その程度くらいしか思いつかないかな」

 お父さんが仕事で恨み買ってたとしても、流石に僕達に危害がくわえられるようなレベルの恨みを買うようなことはないだろう。実はお父さんの仕事って何やってるのか知らないけど、少なくとも普通の会社員だろうし。

「じゃあソレだ! きっと神生会がらみ、間違いないね! きっと私達を誘拐して、洗脳するつもりなんだよ! 怖い! 怖いね! コレは事件の匂いだよ!」

「嗣深はゲームのやりすぎだと思うの」

 洗脳とかそんなお手軽に出来るものでは無いと思うし、なんでもかんでも陰謀論というのは問題あると思うよ、僕。

 そんな不毛なやりとりをしていると、インターホンが鳴らされて僕と嗣深は顔を見合わせた。

『来たね』

 異口同音、同時にそう言うと二人で玄関へと目を向ける。

 どうする、とお互いに視線を交わす。

 万が一嗣深が心配していたことが的中していたとしても、提案のホームアローンごっこなんてことをする余裕は当然無い。

 玄関を開けるべきか、それとも居留守をするべきか。台所に行けば、一応インターホン前にいる人の顔を確認しながら会話できる電話があるので、まずはそちらから一度話をしてみるべきか。

 幾つか案を考えた結果、それが無難かな、と台所へ向おうとしたら嗣深の携帯電話から水戸黄門の曲が流れた。

「あ、せっちゃんからだ」

「ねえ、流行ってるの? 水戸黄門の曲を着信音にするの。ねえ」

 そして嗣深の中で宇迦之さんのイメージってなんなんだ。

「え、今来たのってせっちゃん? うん。わかったー。あけるねー」

「え? なに、宇迦之さんきたの? この吹雪の中?」

 なんでまたこのタイミングで、と思ったが、まぁ来たというのなら開けないわけにもいかないだろう。

 というか、電車ってこの時間にあったっけ。田舎なので終電が九時前のが最後だった気がするのだけれど。

 などと考えている間に、嗣深が素早く玄関まで行って鍵を開けていた。人のことを無用心とか警戒心が足りないとか言うけど、嗣深も充分警戒心足りないと思う。普通に考えたら宇迦之さんがこんな時間に来るというのも余りにも怪しいと思うのだけれど。まぁ、宇迦之さんなら悪いことにはならないだろうから良いけども。

「やぁ、お邪魔するよ、嗣深ちゃん」

「お邪魔されます!」

「あー、いらっしゃい宇迦之さん。寒かったでしょ。とりあえずコタツどうぞ。嗣深、ちゃんと鍵かけてね」

「もちのろんだよ!」

「うん、夜分に失礼するよ、佐藤くん」

「いえいえ、大したお構いも出来ませんが。あ、お茶は玄米茶で良い?」

「うん、何でも良いよ」

 本当に宇迦之さんだった。しかしなんでまたこんな時間に宇迦之さんが。

 お茶を淹れるついでに訊いてみたら、嗣深に呼ばれたとのこと。嗣深ェ……いつのまにそんな電話いれたんだ。

「ふふふ……最高の助っ人を、最高のタイミングで呼び出す。これがつぐみんの人脈ぱうわーです!」

「意味が分からない。というかこのタイミングで宇迦之さん呼んでどうするのさ本当に。宇迦之さん、現状どうなってるのか聴いてる?」

 電話が来てからもう三十分近く経ってるし、流石にそろそろ来てしまうのではないかという状態で宇迦之さん呼ぶのが最善策とは思えないというか、宇迦之さんに何が出来るというのか。

 胡乱気な様子の僕に気付いて、宇迦之さんが苦笑して「一応は聴いてるよ」と答え、少し考えてから出来ることの例をあげた。

「まぁ、そうだね……とりあえず、忠嗣さんの声真似、とか?」

「いや無理でしょう」

 確かに宇迦之さんはどこぞのヅカの男性役のようにハスキーボイスを出せるけど、お父さんの声なんて出せないだろう。

「まぁ、疑うよね……とりあえず、論より証拠ということで嗣深ちゃん。忠嗣さんのサンプルボイスはあるかい?」

「ほいきた!」

《あぁ、元気だぞ? なんだ、寂しくなったのか?》

「さっきの電話、録音してたんだ!?」

 やたら準備の良い嗣深に驚愕を覚える。しかしそんな、一度声を聴いたくらいでそんな声真似なんて簡単に出来る訳が

「何を驚いてるんだ? 義嗣」

「お父さんの声だー!?」

 すげー! 宇迦之さんすげー!

 本当にお父さんの声っぽい声を出した宇迦之さんを思わずガン見すると、なにやらドヤ顔で返された。いや、これは確かにドヤ顔しても仕方ないね。凄いや。

「まぁ、強いて言うなら電話越しの声であって、生身の声とはちょっと違うかなー、って思うけど」

「ははは、そう言われてしまうと参ったな。あ、あー、あー。こんな感じかな?」

「あ、凄い。そうそう、かなり近い近い」

「流石はせっちゃんだよ! よし、例の人が来たらインターホンで応対お願いするね!」

「任せてくれ、嗣深ちゃん」

「うわー……知られざる宇迦之さんの特技……」

 アレかな。前に小説で読んだことがあるよ。声帯模写って奴かな。本当に出来る人いるんだね。

 これなら確かに、お父さんが帰ってきたということにして、お父さんのフリをしたまま応対してもらえば相手は黙って帰る他無いだろう。

 一時的な解決にしかならない気がするけど、流石にコレで駄目だったらすぐ別の手で、とはいかないだろう。向こうも。

 後はお父さんが本当に帰ってくれば、早々変なことは無いだろうし。うん。

 良かった良かったと頷いていると、またインターホンが鳴らされたので、多分、今度こそ先ほど電話してきたご近所の人だろう。

 僕達三人は顔を見合わせて頷き合うと、三人で台所へと向かい、宇迦之さんに応対をお願いするのであった。





「滅茶苦茶慌ててたね。あのおじさん!」

「まぁ、お父さんが事故にあったって嘘吐いたら、向こうからすればご本人登場なわけだし、それは驚いただろうね。本当、ありがとうね、宇迦之さん」

「ははは、お役に立てて何よりだよ」

 何が起こるかと心配していた電話の件も割とあっさり片付いたことで、僕たちは再び居間に戻ってお茶をしている。

 この吹雪の中、バンを鈍足で走らせてきたご近所のおじさんは、インターホンにそれはもう狼狽した顔を晒して暫く「あー」とか「えー、そのー」とか視線を宙に彷徨わせながら考えた末、「そ、そうか! 忠嗣さんじゃなくて、事故に会ったのはタダヨシさんだったのかな! いやーお騒がせしましたね!」となんとも無茶な言葉を捨て台詞に言うと、去っていった。

 さらばご近所のおじさん。しかし随分来るのに時間かかったな。冷静に考えたらあの人の家って確か、徒歩でも3分くらいの距離だったと思うのだけれど。なんで遅れたのかもついでに訊いてもらえばよかった。いや、一応こっちとしては助かったのだけどもね。

 そんなふとした疑問を言って見たら、嗣深に「出ようとしたら屋根の雪が車庫の前にでも落ちてきて出れなかったとかじゃない?」と言われて納得した。確かにそれはどんなに急いでも5分や10分は遅れる。

 この吹雪だし、除雪したのが昼頃だった場合は既に他の場所もそれなりの深さにはなっていたことだろう。ちなみに僕の家近辺の雪も昼過ぎに帰ってきた時にはある程度除雪機で綺麗にされた跡があったけれど、それでも僕のくるぶしより少し上あたりまで雪が貯まっていたあたりでお察しいただきたい。多分、今頃膝下か膝上あたりまで積もっているだろう。

「そうだね。確かに玄関口まで入ろうとしたら、かなり雪が深くなってたよ。歩道とかもかなり深くなってたし、明日の朝にはコレ相当積もってると思うよ。心底、今年は長靴を長めの物にしておいて良かったと思ったね」

 それはまた、そんな悪路の中起こし頂いて本当ご苦労をおかけしました。

 改めて御礼を言って頭を下げると、笑って手を振って「構わないよ。ボク達の仲じゃないか」と笑って返された。イケメンすぎる。僕が女の子なら惚れていたかもしれない。宇迦之さん女の子だけど。

 若干失礼なことを考えていたら、嗣深が宇迦之さんに抱きついて目を輝かせた。

「よしせっちゃん! 今日はお泊りだね! お泊り会だね! 女子会だね!」

「え? あ、うん。そちらが良いなら別に、泊まっても良いけれど……しまった。着替えとか持ってきてないね」

「あー、明日も普通に学校だものね。制服無いと駄目か。まぁ、学校は雪が止んだら、だけど……多分、朝には大丈夫だよね?」

「いや、どうも明日もこのくらい吹雪くみたいだよ? 歴史的大寒波が来ているらしくて、東北はどこもこんな感じで交通網もストップかかってるところが多いらしいからね」

「あれま……」

 それはまた大変だ。っていうかお父さん帰ってこれるだろうか、そんな状態で。

 訊けば、運休だった鉄道会社も電車をなんとか二時間に一本程度だけは走らせていたらしいけれど、それが限界みたいで終電も七時が最終となってしまったらしい。明日も一応、数本は走らせる予定ではあるようだ。宇迦之さんも明日はそれで帰るつもりらしい。

 ……しかし、聴けば聴くほど思うのだけれど。

「宇迦之さん、何に乗って来たの?」

 何やら嗣深提案の女子会とやらを開始し始めた二人にそう告げると、嗣深は首をかしげ、宇迦之さんはそのまま固まった。

 ところで、男子もいるのに女子会ってどうかと思うの。僕だけ除け者はひどいと思うの。

「えー? つぐにゃんも入れて女子会だよー?」

「待って、僕は君の姉ではなく兄であることをここに明言させてもらおうか。というか僕はどこからどう見ても男の子でしょう」

「つぐにゃんって中性的な顔立ちだし、身体の線も細いし、声も声変わりしてないし、男の子らしさは皆無だと思うの」

「ですよねー! 知ってたかなー! でも女の子だと思われるほどの美形でも無いと思うなー!?」

 女の子にしか見えない男の子というのは、まず美形が条件だと思うの僕!

 なにやら嗣深が菩薩のような笑みを浮かべた。なにその何かを語りかける笑みは。言っておくけど僕も嗣深も決して美形じゃないからね。確かに我が事ながら、容姿だけで言えば並よりは多少上程度ではあると思うけど。

「あれだよ。タクシーで来たんだよ、佐藤くん」

「あー、タクシーか。そっか……って、タクシーって高かったでしょ? 大丈夫? あの、こっちで出すよ? 呼びつけたのはうちなんだし」

「あぁいや、えーっと……そこは気にしなくて良いよ。知り合いなものでね、初乗りの代金だけで送ってもらえたから」

「おぉ、それは凄い。でもでも、じゃあその分だけでも払うよ? 少しのお金でも、お金はお金なんだし。それに初乗りでも300円か500円くらいするでしょ?」

「いや、本当に大丈夫だから。そうだね。じゃあこうしよう。まだ夕食食べてなかったから、ご馳走させてくれればそれで良いよ」

 おぉ……女神や。女神様がおるでえ。

 なんとなく虎次郎くん風に心の中で呟いて拝みつつ、僕は快く承って立ち上がり、台所へと向おうとしてふと思い、仲良くじゃれあう二人に言った。

「そういえば、二人とも携帯電話持ってるんだし、わざわざ来てもらわなくても、インターホンの応対を電話でしてもらえばよかったんじゃないかな」

 二人は「!」と頭上にエクスクラメーションマークを浮かべんばかりの勢いでこっちに振り向き、その発想は無かったとでも言いたげな顔をしていた。

 なんていうか、嗣深はともかく、宇迦之さんって本当、そういうところ残念だよね。いや、流石に助けてもらったのはこっちだし口に出しはしないけれど。

 僕は何やら頭を抱えた二人に苦笑し、改めて台所へと向うのであった。

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