ボス、私の昔話をしよう7
「仕事を辞めたい?」
大統領は驚いた表情で会議の資料から目を離し、副ボスを見上げた。
「はい」
きっぱりと副ボスは清々しい顔で答えた、だが大統領はかなり険しい顔になっていた。
「しかしなぁ……そんなボンスカボンスカ辞めることなんて出来ないぞ?第一そういうのはボスに言うもんじゃないのか?」
「いえ、なんか言いづらくて……」
「あと、なんで辞めるか理由がまともじゃないと辞められないからな」
「………家内に辞めろと言われたってのは理由としてはまともですかね?」
「うーん、役職が役職だからな〜難しい所だな」
そう言って大統領は腕を組み、唸りながら考え、あ、そうだ、と手を叩いた。
「副ボス、そういえば特務機関管理部門ってのがあるはずだ、そこの奴らと話して辞職願出してもらえ、まあそれでも辞職出来るか疑問だがな」
そう言って大統領は副ボスに特務機関管理部門のあるビルまでの道しるべがのっている地図を渡し、また資料に目を移した、これ以上は大統領も仕事があるので副ボスはホワイトハウスを後にした。
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ビルの最上階、この特務機関管理部門のトップの部屋に副ボスはいた。
「………えー、副ボス?」
そう頭を掻きながらトップは質問をした。
「辞職したいんですっけ?」
「ええ、家内で言われたので」
「まあ、正直に言いますとその理由では辞職できませんね、退職するまで頑張りましょう」
「………どうしても辞められないでしょうか?」
副ボスが食い下がる、しかしトップは顔色変えずに言った。
「無理です、というか仕事舐めてます?」
「………」
「いいですか、あなたは重役です、しかも機関で二番目に偉い役職です、そんな重役がいきなり辞めるなんて非常識にもほどがあります」
「わかっています、しかし……」
「わかっているならこの話は終わりです、大統領に辞職の許可を受け取ったならいざ知らず、個人的な理由で辞めたいなんて通りません、どうかお帰り下さい」
「………ならこちらにも考えがあります」
副ボスがそう言って、管理部門のトップも少し眉間にシワを寄せた。
「職務をボイコットします、そして特務機関の機密情報をばら撒きます」
「………後悔しますよ?」
「後悔しないように辞めるんです」
そう言って副ボスは後ろを向き、歩き出した、するとトップは最後に捨てセリフを吐いた。
「あなたは決して副ボスという職務からも特務機関からも逃げられない!我々はあなたが定年退職する時まで執拗にあらゆる手段を取る!」
………さて、その頃副ボスは自分の車に乗り、帰路についていた。これでまた家族団欒に過ごすことができる、そう信じながら副ボスは家に向かった、しかし所詮は妄想に過ぎなかった。
「…………なんだあの車は?」
家の近くに差し掛かり、車を止めようとしたら黒いワゴンが二台家の前に止まっていた、凄く嫌な予感がした副ボスは車を路上駐車し、急いで家の中に入った、そこには手足を縛られているシャネットとサナがいた。
「シャネット!サナ!」
すぐさま副ボスは近づこうとした、するとシャネットが
「来ないで!」
と大声で叫んだ。
「足元!クレイモアが仕掛けてある!」
そう言われて副ボスは足元を見た、すると無数のピアノ線が張り巡らされいるのに気付き、後ずさった。すると足に何かに当たった、見覚えのない携帯電話が落ちていた。
「帰ってきたかね」
急にその携帯電話から声が聞こえた、すると副ボスはその携帯電話にむけて叫んだ。
「なぜ家内まで巻き込む!!それに僕の代わりはいくらでもいるだろ!?」
「まず最初の質問を答えると、我々にとって家族が邪魔だから、次に代わりはすぐには見つけられないからだ」
「見つからない間は代理でも立てればいいじゃないか!」
「………君は何も知らないようだね」
そう言って向こうはため息をついた。
「君は知らないようだがね、君の機関の重役になりたい奴は確かに山ほどいる、しかもその大半は政治家だ、理由は簡単、君の機関の重役にはいろいろ特権があるからさ」
「特権?」
「ああ、まず不逮捕特許権、次に個人軍隊の設営、次に武器開発の許可、又は販売などおいしい権利がある、故に重役を選んでいいのは大統領だけになる、それほど重要なんだよ特務機関の重役ってのは」




