ボス、組長
ボスはジェスチャーするように手を動かしながら答えた
「かなり狂人じみたこといいますね、まあしかし娘とも連絡がつかない所を考えるとあながち嘘ではなさそうですな」
「まあ信じるか信じないかは自由だ」
「信じましょう」
四郎は黙ってまた座り込んだ、するとボスは不思議そうに質問した
「あれ?弔い合戦しないの?」
そうボスが質問すると、今度は四郎が不思議そうに
「弔い合戦?なんでわざわざ?」
「いや、だって小脇に日本刀置いている訳だし、てっきり準備してたのかと」
そうボスが言うと、四郎はまたくっくっくっと笑い出した
「あのね、私も結構年取ってるんですよ、ヤクザだって最近は勉強ですからね、まあここだけの話、銃やら刀やらなんてものはね、私使ったことないですよ」
「え?」
「だって組長ですよ?組長自ら働くっておかしくないですか?」
まあ確かに言われてみればそうだ、しかしそれなら何故華はあんなに強かったんだ?
「なんかあんたさっきから普通に話してるけど、あんたの娘さん殺した張本人が目の前にいるんだぞ?おこんないのか?」
ボスがそう質問すると、四郎はなんとでもないような顔で
「別に怒りゃしませんよ、恨みもしませんしね」
「娘さんを愛してなかったのか?」
「愛してはいましたが…………………何分ちょっと特殊な性格だったもので」
「特殊?」
「ええ、まあ娘がああなったのは随分昔で、使用人を木刀で撲殺したのが始まりでした」
「撲殺?」
「ええ、本人いわく弱い者は強いものより早く死ぬ、だから強者である私が殺した、と」
「ある意味不偏愛だな」
「ええ、だから私は聞きました、もし自分より強いものが現れたらどうするんだと、そうしたら娘は」
「なんか、どうでもいいな」
ボスが言った
「日本まで来てこれじゃあくたびれ儲けの骨折り損だ、副ボス帰るぞ」
「え?ち、ちょっと!」
本当に帰ろうとするボスを追いかけて、副ボスはボスにはなしかける
「ちょっとボス!いくらなんでも酷すぎじゃないですか?」
「何がだ?」
「だって話し聞いてる最中に立ち去るなんて…………」
「…………なあ副ボス、なんであの組長は一度立ち上がったと思う?」
「え?さ、さあ…………?」
「お前は気づかなかったかもしれんが、あの部屋バレないようにしてあるが、凄く油臭かったんだ、恐らくあの畳一面に灯油が撒かれてる、そんで組長は立ち上がったと同時に煙管を吸うのをやめて火のついた灰を畳に落としやがったんだ、そのうち出火する、恐らく俺達と一緒に無理心中しようとしたんだ」
「しかしそんなことしなくても、部下に殺させればいいでしょう?」
「メンツでもあるんじゃないか?とにかくはなれるぞ」




