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ボス、別れは無言で

ミヤの機嫌取りは成功し、ミヤはその日以来(いつものことだが)遠慮なくボスに噛みついてくるようになった。しかし最近変化があった。それは甘噛みになってきた。この調子で完全に噛みグセをなくして欲しいものだ、とボスは切に願いながら日々を過ごしていた。


そしてこの日、ミヤはボスの執務室にいた。


「なあ…………ミヤ?」


「ん?」


「ミヤはこの建物の外の世界に行ってみたいと思ったことはないかい?」


「ん〜、ない」


「え!?ないの?」


「うん、だってボスといっしょならたのしいし」


「じ、じゃあもし俺がいなくなったらどうする?」


なんとなく問いかけた質問だったが、ミヤは何故か物凄く不安な表情でボスを見た。


「………………なんでそんなこというの?」


「ん?あ、いや、なんとなくさ、ハハハ…………」


「ぼす、もうすぐいなくなっちゃうの?」


「え、いや、そんなことは………」


しばらくボスは沈黙した、そう、何故こんな質問したかと言うと実はなんとなくというあやふやな理由ではないのである。それはつい昨日の夜に突然大統領にホワイトハウスに呼び出されたことから始まる。


「失礼します大統領」


「うむ、夜分遅くにすまないなボス」


「で、何の用でしょうか?」


「ああ、お前が作っている人工生命のことなんだがな」


「ああ、ミヤのことですか?」


「ミヤ?なんだそれ?人工生命の名前か?俺は001って聞いたぞ?」


「ええ、まあ本来の名前だったら製造ナンバー001ですかね」


「まあいい、そのミヤって奴を軍部の奴らに話したんだ、そしたら軍部の奴らすげえ欲しい欲しいって聞かなくてな、まああの薬に適応したのはお前だけだしな、欲しがる気持ちもわからんではないがな」


「で?ミヤをどうしたいんですか?」


「ああ、そうそう、話ズレちまったな、まああれだ、その人工生命を軍部の奴らに提出してほしい」


「提出、ですか?」


「そう、提出」


「しかしミヤはまだ軍隊的集団行動には向いてません、なのでもう少し時間が必要かと……………」


「その必要はない、現地の教官に教育させる」


「しかしミヤがその教官に不満をもって暴力を振ったら教官ひとたまりもないと思いますよ?私と同じで力半端ないし」


「そこも心配御無用、ミヤに対する訓練は元デルダフォースの教官十人でやる、さらにもしミヤって奴がお痛したらシールズ二十人による狙撃ライフルで応戦だ、体の大きさがお前くらいだったら鎮圧も難しいが、少女くらいなら問題ないだろ」


「そう、ですね…………」


「だろ?じゃ、よろしく」


………これがミヤに質問した理由である。今日軍部の人間がミヤを回収しにくる、しかしボスにはその事をミヤに言うことができなかった、それはミヤと離れることが辛いからではなくもしかしたらミヤが悲しい顔をするかもしれない、そう思ったからである。


「ボス!」


突如声を掛けられ、掛けられた方を向くと一人の警備員がいた


「………なんだ?」


「アメリカ軍の将校が来客室にお見えです、なんでもボスにようがあるようです」


「わかった、ミヤ、お前もくるんだ」


「え?なんで?」


「いいからくるんだ」


ミヤはなぜ呼ばれたのか分からなそうな顔をしていたが、とりあえずボスの手を握って


「うん、わかった!」


といった


こうしてボスとミヤは来客室に向かった。


「おお!来てくれたか!」


そこには胸の辺りに大量の勲章を着けた将校がソファーにすわっていた


「…………?ねえぼす、この人だれ?」


「………嫌でもわかるさ」


「話してもいいかね?」


将校が遠慮がちに質問した。


「ああ、どうぞ」


「まあ話す事なんて少しだが、君の手を握っているのがミヤちゃんかね?」


「ああ、そうだ」


「じゃあその子を渡してくれるかね?」


「………ええ、勿論」


そういってボスはミヤとの手を話そうとした、が、ミヤは離さなかった。


「ミヤ、放してくれないか?」


「いや」


これまた即答だった




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